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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第2章、薬屋さんの雇われ錬金術師
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41 初めての錬金術

 家においてある食材でシーラが夕食を作ってくれた。 大変おいしゅうございました。 やっぱり俺が適当に作るものよりもよっぽどおいしいよね。

 お風呂にも入り、すぐに寝ても問題ない状態にして錬金術講座は始まった。 ちなみに俺が教えてる間にシーラがソフィーの部屋の準備をしてくれることになっている。 終わったらこっちに来てもらう事にしてある。 

 さすがに魔力切れに近い症状がでた時、俺が抱えていくのは問題があるだろうしね。


「それでは、第1回錬金術講座を始めたいと思います。 いいかな?」


「お師匠様! よろしくお願いします!」


 もうやりたくて仕方がないといった感じのソフィーだが、いったい何がここまで彼女を錬金術に惹きつけるのか……。 それに今までもイメージを壊してきたけど、ここからはさらにイメージ壊れるんだろうね。 

 地味だし……。 いや、死にギフトという扱いから見たら妥当かもしれないけどね。


「とは言え、ギフト錬金術なんてほとんど教える事なんてないから、自習が基本になるけどね。 どちらかと言えば、ソフィーと一緒に色々と試していくことになると思うけどよろしくね」


「ふ、不束者ですががんばらせていただきますです!」


 自習が基本と言った時は、しゅんとしてたけど、一緒に色々って言うとまた元の調子に戻ってきた。 

 本当に感情の振れ幅が大きいというか、コロコロ変わるなぁ。 それにしても、自分で言ってて思ったけどもしかしてソフィーを教えるというよりも、ソフィーで教える経験をつんでその成果がアレックさんの目的かもしれない。 

 とりあえずは目の前にいるソフィーと全力でやっていかないといけないけどね。


「まずはソフィーがどれくらいギフト錬金術の事を知ってるのか、教えてもらえる?」


「はいです! えっと……ギフト錬金術は死にギフトと呼ばれてて、理由は学問錬金術ですべてを再現できるからです。 それに、ここ最近はまともな使い手がいないのもその評判に拍車をかけているです……」


「普通はそんなものだよね。 それじゃ俺の経験でのギフト錬金術の話をするよ。 ギフト錬金術は魔力を多く消費することによって過程を飛ばして結果に至るものだね。 学問錬金術はその過程を調べる学問になるわけだ。 そして、ギフト錬金術は個人の感覚に頼るものがとても多い。 しかも、自分が作れそうだと思うものや、もう少しで作れそうなものにしか感覚が反応しない。 結果として、使うための取っ掛かりが掴めないでそのままっていうのが現状みたいだね」


「お師匠様はその取っ掛かりがあったから、使えるようになったのです?」


「まぁ、そうだね。 倒れながら魔力を使いながら増やした。 家が薬屋だったから薬草が身近にあった。 だからこそ、今の俺があるわけだね」


 ソフィーが何か驚いたような顔をしてるけど、変な事言ったかな?


「倒れながら魔力を使ったってそれは危険ではなかったのです? お師匠様は私よりも魔力判定が高いから最初から使えたんじゃないんです?」


「今なら危険だと思うけど、小さい時は目の前の事に夢中で、夢中になり過ぎて魔力切れで倒れてよく親から怒られたもんだよ。 ポーションだって最初から作れたわけじゃない。 最初はただ体力つけたり、魔力あげたり勉強したりしてるだけだった。 それが、薬草を見ると何か作れるような気がして来てからはいっそう魔力をあげるために魔力を使った。 ようやく作れそうだと思って作ったら、魔力切れで倒れた。 俺の錬金術はそんな風に積み重ねてきた結果だよ」


 それを聞いたソフィーが何やらうつむいてしまった。 うん、なにがなんだかさっぱりわからないよ。


「アレック様からお師匠様の事を聞いた時、私よりも魔力判定が高いから、才能があるから、最初から色々と作れると思っていたです。 アレック様がユリト君も色々努力したとは言ってたですけど、普通に勉強してるくらいだと思っていたです……。 それなのに本当はずっとずっと努力してて……。 レベルも上げて装備もあるので魔力も多くなってる。 だからお師匠様から教えてもらえばきっとすぐにでも上手になれると思っていたです。 ごめんなさいです……」


 ……えっと俺はどうすればいいのでしょうか? 勝手に誤解され、勝手に謝られる……。 妬まれてないだけマシだとは思うけど本当にどうすればいいんだ? こういう時にさっそうとシーラさんが現れて、問題解決! とかやってくれないだろうか? それはメイドの仕事じゃないですよね。

 俺は頭をフル回転させたあげく、あたりさわりのないと思われる言葉で声をかけることにした。


「あ~うん、こうして顔をあわせたのはついさっきな訳だし、これからお互いの事知っていけばいいんじゃないかな? 話に聞いてるだけじゃわからないこともあるだろうしね」


「お師匠様は、私の事許してくれるです?」


 そもそも、許す許さないとか俺にとってはどう反応していいのかわからない状態なわけだけど、許して置けば楽なのかな? 許さないからどうたらこうたらとか考え付かないもん!


「許すから、これから仲良くやっていこうか」


「はいです!」


 セーフ! セーフですよね? きっと回答は間違ってなかったはずだ。 ベストじゃなくてもベターであたりさわりのないものに落ち着いたはずだ。 内心の動揺を知られない為にもさっさと次の内容に移るべきですね。 ってさっきさらりとレベルがあがってるとか装備もあるって言ってたな……。 後で確認しようか。


「それで話を元に戻すけど、けっきょく錬金術って個人の感覚による所が大きいから、自分の魔力を高める事と、露店とかで色々なものを観察することが大事なんだよ。 錬金術で作れる物を増やす為には、魔力をあげて作れる土台を作り新しい素材を見つける。 錬金術を何度も使って錬金術自体を成長させる。 同じアイテムを何度も作り、そのアイテムの熟練度をあげる。 くらいが今の所わかってることだからね」


 俺が説明すると、なんかまたキラキラした目で見てきた。 この娘いったいなんなの!? 感情の上下激しくてついていけないんですけど!


「お師匠様はやっぱりすごいのです! ギフト錬金術の情報は教会でも錬金術ギルドでもほとんどなくてお父様も残念がってたです。 それなのにお師匠様は、その歳でそれだけの事がわかってるなんてやっぱりすごいのです!」


「あーいや、俺もわかったのはつい最近だし、自分で見つけたというよりも、元々ギフト錬金術を使えると読める説明書にようやく手が届いたというかそんな感じだからなぁ」


「どういうことです?」


「ギフト錬金術はとてつもなく不親切でね……。 ほとんど自分の感覚頼りだし、錬金術をそれなりに使わないとその説明書の知識まで届かないんだよね……。 俺の場合、ポーションばっかり作ってて他の物はあんまり作ってなかったから、そこにたどり着くのが遅かったけどもね。 ソフィーが、色々な物をまんべんなく作ればもっと早くその感覚がつかめると思うよ」


「が、がんばるです!」


 どうやら気合が入ったみたいだ。 やっぱり俺の経験をソフィーに伝えて、そこから色々と今後に繋がる事を情報として集めるんだろうなぁ。 将来のギフト錬金術所持者の為にか。 まぁがんばっていきましょうかね。 ソフィーも気合入った事だし実践いってみようかな。


「それじゃ、とりあえずこれをみてほしい」


 俺はそう言って空間収納から袋を出した。 中身はただの雑草だ。 ただの雑草ではあるけれど、これで紙が作れる。 俺の知ってる中では魔力消費が少ない製作物だ。 これから始めるのがベターだと思う。


「さっきレベルを上げたって言ってたし、装備もあるってことだから大丈夫だと思うんだけど、これをよく観察してみて」


「この草をですか?」


「この草を」


「わかりましたです」


 ジーと真剣に見る。 正直これを見て何も感じないと言われた場合、どうすればいいのかさっぱりわからなくなる。 

 薬草みせたり露店めぐりしてじっくり作れる物を探す所から始めるとかになるとものすごく大変そうだ。


「あ……、これで何か……作れそうです? ううん、作れるです……ですよね?」


 心配そうにこっちを見てくる。 意地悪してる訳ではないので作れる素材を置いてあるわけだけど、実際作れるかどうかは本人の感覚次第だ。 たぶん今のでその感覚もつかみ始めてることだと思う。


「作れるって感じたんだろ? なら作れるよ。 それでその感覚がギフト錬金術にとって大事なものになるから忘れないようにね」


「はいです!」


「それじゃ、作ってみようか。 やってみて」


「え?」


 何やら驚いてるけどどうしたんだろうか? ……あぁ、そっか。 作り方を教えてもらってないのにやれって言われて驚いたのかな? 感覚だけでやってきた弊害かな。 いや、気づいただけましかな?


「最初に言った通り、ギフト錬金術は教えることがほとんどない。 だってそれは自分の感覚でなんとなくわかるものだからだよ。 だから、作れると思えば後は作りたいと願えば自然と作れるよ。 まずは試してみようか。 ダメならそこから考えるから」


「は、はいです!」


 かなり出たとこ勝負な講座だけど仕方がない。 俺だって初めてやってることだし……。 でも、これでなんとかできないんじゃたぶんギフト錬金術なんて使えないと思うんだよね。 

 そんな事を思いながらソフィーの様子を見てると、一生懸命にやろうやろう! って気配が薄れて、ちょっとぼんやりした感じに見えた。 

 この状態はなんとなくわかる。 俺も初めての物を作ろうとした時は、なんとなく意識がぼんやりするのだ。 端から見るとこれ、ちょっと心配になるな。 俺も見られた時、周りはこんな気持ちだったのかな?


「錬金なのです」


 そう言うと、魔力が白い線を引き、雑草を囲い魔方陣が浮かぶ。 雑草が徐々に光となって消えていく。 その光は魔方陣の真ん中に集まり、光が弾けた。

 光が弾けた後には、見るからに品質の低そうな紙と、使われなかった雑草が残っていた。


「お! 成功だ! やったなソフィー!」


 そう声をかけたのだが反応がない。 まずい! 魔力切れ起こしてるのか!? と慌てたけど、ちゃんと見れば目をパチパチさせているし、魔力切れで倒れそうとかには見えなかった。


「えっと、ソフィー? 作れたんだけど……おーい」


 そう声をかけてやっとこっちを見てくれた。


「あのお師匠様……できましたですけど、途中がお師匠様と違いましたです……。 大丈夫なのですか? それとも最初はあぁなのですか?」


 ソフィーは戸惑ってるみたいだ。 言われた事を思い出してみる。 ……確かに俺のは木が生えて花が咲いて散るけど、ソフィーのはもっとシンプルに光が弾けただけだったな。


「ん~大丈夫じゃないかな? この通り紙はちゃんと出来てるし、俺が最初に作った時も確かこんなもんだったと思う。 途中経過は確かに違うけど俺は最初から、あの花の咲く木だったからなぁ。 今はなんとも言えないし、作っていけばわかると思うよ。 だから今は作れたことを喜んだらどうかな? 仮にもギフト錬金術初成功だろ?」


「あ……そうです。 私、使えたんですね。 ようやく一歩踏み出せたのです。 お父様……ぅぅ」


 こういう時どうしたらいいのでしょうか? ソフィーが泣き始めました。 胸を貸すのがいいのか? いや、今日会ったばっかりの男にそんな事されるのは嫌だろ! それにそもそもそんなことできる度量がない! どうする! どうする俺!


「お嬢様……」


 俺が慌ててる間に、シーラがそっとソフィーを抱きしめた。 ソフィーは思いっきり抱き付いて泣いている。 っていつの間に入って来た! 教える事とか泣かれたに集中してて入って来たことに気が付かなかったよ! 気配察知お仕事放棄ですか? いいえ、俺が別の事に集中したせいです。 


「そこの紙がお嬢様の初めての錬金術で作った物なのですね……」


「そうですけど……いつからいたんですか」


「メイドですので」


 答えになってない! 答えになってないよ! 答える気がないってことでしょうか? そしてしばらくの間、どうしていいのかさっぱりわからず途方に暮れる俺と、シーラに抱き付いて泣くソフィー、ソフィーの頭を撫でながら落ち着くのを待つシーラという図で時間は流れた。


「うぅ……落ち着いたです……」


 泣いて目を赤くさせ、ついでに恥ずかしくて顔を赤くさせたソフィーが呟いた。


「本当は聞きたいこともあったんだけど、今日はここまでにしようか」


「いえ! 大丈夫です! 何でも聞いてくださいです!」


 自分のせいで遅れたとでも思っているのかもしれない。 ソフィーは終わらせようとする俺に何でも聞いてほしいというけれど、


「いや、今の状態じゃ色々あったし、時間も経ってるからまた今度にしたい。 それに時間ももう遅いし、納品用のポーション作って寝たい……」


「はぅ……。 ごめんなさいです」


「謝る事はないよ。 聞きたい事は、聞けない可能性の方が高いと思ってたしね。 とりあえず今日は紙だけでも作れる事がわかって良かったよ。 今日はゆっくりお休み。 シーラ、寝る準備は出来てるんだろ?」


「はい、もちろんです」


「それじゃ、今日は解散。 ゆっくり休むように。 明日は俺が納品終わってからまたやろうか」


「はいです! また明日よろしくお願いしますです! おやすみなさいです!」


「はい、おやすみ。 シーラもお疲れさまね」


「私も休んでよろしいのですか?」


「後はポーション作って寝るだけだから気にしないで休んで」


「わかりました。 それではお先に失礼させてもらいます」


 そう言って、2人は出て行った。 ただ、ソフィーのテンションが高くなってるのでなんとなくソフィーがあれやこれやシーラに話してけっきょく遅くまで起きてる気がする。

 さて、俺はポーション作りますか!

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