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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第1章、薬屋さんの息子は錬金術師
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4 1人で町の外に出よう!

 ギルドを出た俺はまっすぐ南門へと向かう。 

 南門を出て西に向かい、南西にある森の近くにいつも父さんと一緒に行っていた採取場所がある。

 森から時々はぐれゴブリンが出てきたりするから危険な場所だけど、しっかり魔法の探知を使い警戒しながら採取すれば問題はない。

 むしろ、探知の魔法を使いながら警戒するのにちょうどいい場所だと思っている。警戒しなきゃいけない場所ってわかってるから油断しにくいしね。

 

 そんなこんなで南門に到着!


「ユリトじゃないか。革鎧に、剣なんかぶら下げていっちょまえなカッコしてどうした? 1人じゃ外に出られないだろ」


 門番をしているおじさんに声をかけられた。父さんとここを通る時によく見かけるし、父さんともよく話をしてるから俺のことも知ってる。 

 けど、実はこのおじさんの名前を知らない。自己紹介もしてもらった覚えもなければ父さんも名前で呼ばないんだもん。


「冒険者ギルドに登録したから、初クエストで薬草採取しに行くんだ! これカードだよ。通ってもいいよね?」


「ん? おぉ! 12歳になったのか。おめでとうだな! 通ってもいいが、いつもよりもはしゃいでるみたいだから気ぃつけろよ」


 いつもよりはしゃいでる……。イツモヨリハシャイデル……。イツ・モ・ヨリハ・シャイ・デルデルデル……。


「お? おぉ? ど、どうした? なんかものすごい落ち込んでないか? 大丈夫か?」


「大丈夫です……。これから外に出るのに、油断しちゃダメだってわかってるはずなのに、テンション上がっちゃって周りが見えなくなってたのを自覚してへこんでるだけです。

 俺はそれでなくても1人で外に出るんだから、もっともっと慎重に警戒して行動しなきゃいけなかったのに……」


「ユ・ユリト! 大丈夫だ! 始めは誰でもはしゃぐもんだし、お前よりもはしゃいでるバカも沢山いる。それにお前はもう落ち着いただろ? だったら、大丈夫だから普通になれ普通に」


 そう、落ち込むのも良くない。平常心平常心……深呼吸深呼吸……うん、落ち着いたかな? ……たぶん、きっと……。でも、だいぶマシになったと思う。


「おじさん、ありがとう。たぶん落ち着いたよ。十分に警戒して行ってくるね。行ってきます!」


「おぉ! いってらっしゃい! ……しっかし、あの切り替えの早さは子供なのかねぇ……いや、感情はよく動いてるみたいだから子供か? 

 それに警戒って言ってもあいつは過剰だと思うんだよなぁ。ウサギも近づいて来ない場所で警戒とか言ってやってるし」




 おじさんが何かまだ言っていたみたいだけど駆け出した俺には聞こえなかった。 

 駆け出す前に身体強化と気功を移動重視の仕様でさくっと使って走り出す。

 使ってるうちに身体強化と気功は、それぞれ特徴があることがわかった。

 身体強化は目に見えた効果が出やすい。例えば速く走れるようになるとか重い物を持ち上げられたりとかだ。その分体力はそれほど変わらない。色々な効果をもつ魔道具みたいな鎧を来ているような感じだ。 

 気功はその逆で目に見えにくい所が強化される。体力が上がってる……のかはわからないけど、疲れにくくなったり、目が良くなったり、気配に敏感になったりする。その分、身体能力の強化は少ししかされない。

 正反対の力を同時に使う事で、とんでもなく便利になった。とはいえ、低出力で両方使えるようになったのは半年くらい前だ。徐々に出力を上げて使えるようになっているけど、今は4割くらいが関の山だ。 

 だから、力の配分を考えた。気功は配分とかできないのでそのまま使う。 身体強化は力とか速さとかに振れるので今は速さに振り分けて走ってるわけだ。


 町から十分に離れた所で1度止まって深呼吸する。すぅ~はぁ~……。そして探知の魔法を使い始める。 

 身体強化と気功どちらか1つだけなら走りながらでも展開できる。だけど、2つを使っている今は無理だ。だから、一旦止まって集中して展開する。町の近くで使うと人がどんどん引っかかって頭が痛くなってしまうのだ。

 使いこなせば、悪意があるものだけを感知するとか、一定以上の力を持つものだけをとかできるらしい、とんでもないのだと個人特定もできるようになるらしいけど、今の俺には無理だ。

 使いこなす為には町中で使い続ければいいらしいけども、1度それを自室に籠りながらやったら情報量の多さに頭がついていかずに倒れたのだ。

 もちろん、両親に心配をかけ怒られた。普段は手のかからないいい子と評判の俺だが、魔法が絡むと途端にダメな子になる。


 それはいいとして、探知も十分な範囲に広げた。さて、目的地にと思ったけども探知になにか引っかかった。

 力の大きさくらいはなんとなく掴めるので、その反応を確かめてそっちの方向をみるとやっぱり野ウサギだ。


俺は迷った。野ウサギは問題なく狩れる。新人冒険者にとって最初の血の出る獲物が野ウサギだ。体長60cmくらいで攻撃力もない。むしろ臆病で近づくと全力で逃げる。 

 だから、逃げられない為にはどうすればいいのかと話し合い作戦を立てる。そして、殺すことを体験する。

 殺し、解体し、必要な処理をしてギルドに提出し金を得る。外に出る冒険者にとっての基本になることの最初の一歩ということだ。


 この辺りには新人は来ない。野ウサギが多くいるのは北門の東側、ゴブリンなら北門の西側、薬草なら南門の東側だ。色々なものがそこそこあり、便利そうで不便な狩場が南門西側なのだ。


 では何に迷うかの? それは今が行きだからだ。日々魔力を注ぎ、大きくした空間収納があるので重さはどうとでもなる。でも、今狩ると時間がたって肉質が悪くなる。

 売るにしても、食べるにしても質は良い方がいい。しかし、帰りにも都合よく見つかるだろうか? 探せば見つかるだろうが野ウサギを狩りに来たわけじゃないし、昼過ぎには町に帰る予定なので、お昼の準備をしてない。

 むしろ初クエストの報酬でお昼を食べたい! その為にお昼を用意しなかったのだ。


 散々悩んだ結果、今回は見逃すことにした。その変わりお昼のメニューは野ウサギに決定した。さらば野ウサギまた会う日まで、目的の採取場所に向かう。


 ちなみに、空間収納は便利で魔力持ちは大体みんな身に着けている。習得方法は、拳大の水晶を見せられ、自分の周りにはこれくらいの収納空間が常にあるとイメージしてください。と言われて、水晶を持った人が覚えたい人の見える位置に水晶出し、しばらく一緒に歩きまわる。その間、覚えたい人は常にその水晶を意識するのだ。

 そうすると、大体の人が覚えられる。空間魔法がこんなに簡単に覚えられていいのか? とアレックさんに聞いたらこれは空間魔法じゃないから魔力があれば誰でも覚えられるし広げられるんだよ。と教えてくれた。 

 逆に空間魔法なんて超希少スキルをどうして知っているのか聞かれたが、なんでそんな言葉を知ってるのかさっぱりわからず、

 やっぱり君は変な子だねぇと言われた。せめて不思議な子くらいにしてほしかった。ちょっと傷ついた。

 さて、空間収納だが覚えるのは楽だけどここからが大変だ。空間収納は最初、拳大くらいの大きさしかない。これでも財布やギルドカードを無くさないので便利だが冒険者ならもっと大容量を目指したい。 

 広げる方法はただ1つ、魔力を注ぎ込むことだ。だけど広がらない。俺ががんばって1日で広げた最大値は子供の指2本分くらいだった。

そして倒れていつものパターンだ。今全力でやれば1日でもう少し広がるとは思うけども、ポーションの事もあるし、やりたいこともあるので1日の終わりに適当に注ぎ込むだけだ。

 野ウサギ1匹は余裕で入る容量にはなった。2匹は入らないけどね……。


 そんな事をつらつら考えながら、しかし警戒しながらいつもの採取場所にやってきた。出会ったことは今までないけど俺の感度の低い探知じゃ引っかからないのもいるらしいしね。

 採取場所と言っても群生地があるわけじゃない。広い場所のあちらこちらに点在しているのだ。


 さてと、依頼の薬草10束と自分で使うポーション用薬草20束がんばって集めよう!

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