38 家探しに出発! できなかった
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「そんな訳で今日は家探しをしようと思います」
今日は無の日なので教会にきたけれど早く家を探さなければならない為、アレックさんに会って兄さんが帰ってきたことや決まったことなどを話終えたところだ。
とりあえず1日40本納品、月の最後に満額で金貨20枚もらえることになった。 納品できなかった時は1本につき銀貨3枚減らされていく。 全体ではほんのちょっと色がついてる。
それと薬草代はすべてお店持ちで、1日20束までなら好きに持って帰っていいことになった。
それでも、店の利益は十分すぎるほど出ている。 だって俺のポーションが毎日売れればそれだけで従業員の給料をだいたい賄えるんだからね。
「なるほどね。 だけどずいぶんあっさりユリト君は引いたように思うけどそれはどうしてかな」
「あんまり家族でケンカ続けるのも気分がよくないですし、町にいればすぐに顔見にいけますしね。 露天で錬金術用の素材買い漁るのも実際やりたいですしね」
「ふむ……。 なるほど……」
アレックさんは納得した後、なにかを考え出した。 今週中に家を見つけないと新年なのだ。 考え込まれてもこっちが困ってしまう。
「あの……そういう訳で帰りますね」
「待ってくれるかな? ユリト君にとってもいい話だと思うからもう少し待ってほしい」
「はい……」
そう言われたら待っているしかない。 今まで散々お世話になってるのだからこれくらい待とう。
というか、なんかまたお世話になる気がする。 どこか家でも紹介してくれるのだろうか?
そんなことを考えてたら、アレックさんが俺を見て、
「実はユリト君にお願いしたいことがあったね。 それを頼むにあたっての報酬として家を無償で貸し出そうと思うのだけれどもどうだろうか?」
「アレックさんのお願いでしたら、よほどの事じゃなければ受けますけど……。 いったい何をしたら無償での家の貸し出しなんて報酬になるんですか」
どれくらいの期間、無償になるのかわからないけれど、かなりの額になるはずだ。 そうなるとお願いがまったくわからない。
「ユリト君にね。 弟子をとってもらいたいんだよ。 ギフト錬金術の使い手としての弟子をね」
「アレックさんが認めてる人なら弟子くらいとってもいいですけど大した事できませんよ? それはアレックさんもわかると思うのですけど……」
「そんなに難しく考える必要はないよ。 こちらとしても錬金術を使えるようにしてほしいと言ってる訳じゃない。 君に弟子入りさせると口実を作ってこちらに連れて来るだけだからね」
「連れて来るだけですか?」
「その子が微妙な立場でね。 だから私がこっちで保護することにしたんだよ。 それで、ギフト錬金術持ちの子だから君に弟子入りさせるという口実で連れて来る訳だね。 元々は、新年明けてから王都に迎えに行って帰ってきてからユリト君に話そうと思っていたんだけどね」
「今、ちょうどいいから話してしまえと?」
「そういうことだね」
アレックさんが認めてる人を弟子としてとるだけで無償で貸し出し……? さすがにおかしい。 ちゃんと育てろって言われてる訳でもないのにこんな報酬出すか? それになにより、なんかアレックさんがにこにこしてる絶対何か隠してる。
「受ける、受けないならアレックさんのお願いですし受けますけど、何を隠してるんですか? 絶対に言ってない事ありますよね」
「さすがユリト君だね。 微妙な立場を得る環境で君よりも1つ年下の女の子と一緒に住んでもらおうかと思ってね」
「……」
俺の時間が止まった。 女の子と一緒に住んでもらおうかとか言った? えっと……弟子が女の子で一緒に住んで……。 あ、だから無償なのか。 あくまで俺はおまけだから……。
いたずらが成功したのでアレックさんは楽しそうだ。
「女の子と2人暮らしなんて無理ですよぉ」
「安心していいよ。 メイドさんも一緒だから最低でも3人暮らしだね」
「見知らぬ女の人が増えた所で同じじゃないですかぁ……。 それにこちらの一存で勝手に決めるのはまずいでしょ?」
弟子になれるかどうかもわかってない状態だったのに、急に師匠になる俺も一緒に住むとか嫌なはずだ。 ってちょっと待て、メイドってどういうことだ? しかも最低3人暮らしってことは、1人よりも増える可能性があるってことですか? どんな立場の女の子だよ! 何もなくても一緒に暮らすだけで問題になりそうじゃありませんか?
「向こうとしては政治力のない相手に嫁ぐならまったく問題ないと思うよ。 それにユリト君だって結婚の事はもう考えておかないといけないと思うよ」
「いやいやいや、嫁ぐって……。 それに俺の結婚話はまだ早いと思うんですけど」
「まだ1年くらいはいいかもしれないけど、それ以降は色々大変だと思うよ。 なにせポーション作れる事は広まっているんだから、お金は持ってるし悪い話もない。 顔もそこそこだし、力もあるなら優良物件だろ?」
「確かに露店めぐりしてる時に、うちの娘どうだいとか言われたりしますけど……。 あれって本気ってことですか?」
「おそらく本気だろうね。 そうすると女の子と一緒に住んでるのも面倒事を避けるのにいいと思うよ。 その娘自身も良い子だしね」
「いやでもですねぇ……」
これから結婚関係で面倒が起るからその前にそう見える娘を近くに置くってどうなんだろうね? いやいや、さすがになしだと思うんですけど……。
「ふむ……。 まぁそうだね。 向こうの意志の確認も必要だね。 ただ、やはり家は必要だろ?」
「必要ですけど、それは探せばいいだけですし」
「では、教会で抑えてるいくつかの物件があるからその中から好きなものを選ぶといい。 弟子の話は受けてくれるのだから無償貸し出しもしよう。 ただし、向こうが許可してくれたら一緒に住むという事でどうだろうか?」
「譲歩してるように見えて、俺の見ず知らずの女の人達と暮らすのはちょっとって意見まる無視ですねよ? そんなに一緒に住まわせたいんですか?」
普段のアレックさんからすると俺に提案はしても押し付けることはしないはずだ。 それなのに今回はどうも押し通したいみたいだ。 なにかあるんだろうか? ジーと見てるとため息をついた。
「はぁ……私の負けだ。 正直に言おう。 君を引き込もうと思ってる人物達が女で釣ろうと考えていてね。 後ろ盾の私にお見合いの招待状とか来るんだよ。 全て断ってはいるのだけれども、それならばと直接乗り込んできそうなのがいてね。 そんな騒ぎに巻き込まれたら、君が女性不信になりかねない。 だから、予防線を張っておきたいんだよ」
「引き込もうとしてる人達ってすでに排除済みじゃなかったですっけ?」
「それは強引な手を考えていた者たちだ。 それ以外は話し合いで解決してあるが、正攻法だと対処しにくいものがある。 結婚などはそのいい例だよ」
「それなら先にこっちのいい娘をくっつけてしまえと?」
「私としては友人の娘とユリト君だからね。 くっついてくれればいいと思ってるけど、そこまで行かなくても一緒にいてくれればいいんだよ。 お互いがお互いの壁役としてね」
俺の結婚相手だと思わせて、女の人が寄ってこないようにするのと同じように、相手の娘の結婚相手だと思わせて男が近寄ってこないようにしたいのか……。
つい昨日も俺が折れたばっかりだけどまた俺が折れる必要があるわけですね。
「はぁ……わかりました。 一緒に住むのも受け入れます。 優秀なメイドさんがきっとうまいこと家を回してくれるのを期待してます。 そのかわり家は選べるみたいですから俺の気にいるとびきりの所借りますからね!」
「いや、申し訳ないね」
「申し訳ないなら言わないでくださいよ……」
「それでも言わないといけない事もあるってことだよ。 権力なんて面倒事に巻き込まれないためにもね」
「俺、ポーション作ってるだけのはずなのに、なんてこんな立ち位置にいるんでしょうね……」
「これからのことも考えると私にはそれだけで終わるとは思えないけれどもね。 すでに界石とか魔玉とかあるわけだしね」
「それを言われると言い返せない」
こうして俺は、家探しの報告のはずが女の子との同居話になってしまっていたのであった。
この話聞いたらミュースさんとかどうするんだろうか? エレナさんは? それはその時になってみないとわからない……。 エレナさんが真面目に恋人探しとかしてくれるようになったりしないだろうか? そうすれば安心できるんだけどなぁ。
「あ、ちなみにその子はギフト錬金術に並々ならぬ思いを持っているからがんばって教えてあげてね」
「え? 弟子って口実だから教えなくていいんじゃないんですか?」
「向こうは教わる気満々だと思うよ」
「アレックさーーーん!!!」
すべてはアレックさんの手の上でした。
女性不振を女性不信に修正しました。




