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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第1章、薬屋さんの息子は錬金術師
32/86

32 デート! お約束編

「エレナさん、もう大丈夫ですか?」


「さっきの事で顔の筋肉がとても疲れたわよ」


 お店を出るともうお昼をとっくに過ぎてたので、今はちょっとオシャレな感じのお店のオープンテラスで食べて、のんびりと食後のデザートを待っている最中だ。 

 視線? そんなもの知りません。 エレナさんは、クロウリー魔道具では激しく表情を変えていたので大変だったみたいだ。


「エレナさんがあんなに表情変える所なんてそうそう見れるものじゃないですもんね」


「もう、お姉さんをあんまりからかうものじゃありません」


 のんびりしながら、これならデートっぽいのかなぁと思いつつさっきまでの事を思い出す。 手にした指輪と腕輪……あれは普通にお店に置いてある商品なのだろうか? ギフト錬金術師なんて珍しい存在の為に存在するこのアイテム達……やっぱりガリックスさんかなぁ。 


「エレナさん、やっぱりガリックスさんが前々から色々揃えててくれたんだと思います?」


「んーそうねぇ……少なくともその指輪はそう考えた方が妥当かな? 他の物に関してはどっちとも言えないけれどもね」


「そうですねー。 そう考えるとあの武具店にもなにか頼んでたのかなぁ」


「もしそうだとしても私はもう行くのいやよ」


「そうなると後日1人で行く羽目になりそうですね」


 あの店の品ぞろえだと俺に使えそうなものがあるかどうかわからない。 もしかしたら剣かな? よくわからん。


「お待たせいしましたー。 シフォンケーキとフルーツタルトになります」


 話をしていたら頼んでいたものが来た。 俺がシフォンケーキでエレナさんがタルトだ。 これも勇者様が教えてくれた物らしい。 勇者様の知識って色々あり過ぎてすごいわぁ。 あ、これおいしいです。


「このタルトおいしいわ。 ユリト君、あーん」


「あーん」


 周囲の視線がヤバイ。 あー! とか叫んでるのもいるし……。 もっと痛いのは、あーんとか言っちゃってるよ!? エアあーんとかどうするのさ!? 俺は大人しくあーんされるぞ。 ポーション作って引きこもってた時に差し入れついでにやってくれてたしな! そして流れ作業で次にやらなきゃいけないことをやる。 待たせるのはよろしくないのだ。


「おいしですね。 こっちのシフォンケーキ食べますか?」


「ええ、いただけるかしら?」


「では、あーん」


「あーん」


 ここまでして完了です。 エレナさんに言われました。 ちゃんとお返ししなきゃいけないからねって。 周りがうるさいのですがどうしたらよいのでしょうか? やるべきことをやっただけの俺にそこまで恨みがましくされても困る。 ここはこのシフォンケーキをさっさと食べ終わるべきだね。


「ユリト君、もう一口もらってもいいかしら?」


「あ、はい、どうぞ。 あーん」


 俺の戦いはこれからだ! 次回続く





 いやいや、まだ終わってませんよ? いや、食べ終わりましたね。 お手て繋いで露店めぐりです。 正直こっちの方がはずかしいですよ……。 目の前で


「よ! お二人さんお似合いだね! 男なら女にアクセサリーの1つも買ってやんなきゃな!」


 とか言われるんですよ! どうみても姉と弟だろ! エレナさんをそういう性癖の人だと思ってるのか? いや、ただ単に売り口上だとは思うけれどもさ。 普段は材料探しがメインだからこういう加工品はなんだか見てて新鮮です。 少しでも意識をそっちに向けないと恥ずかしくて厳しい。


「ユリト君はどう思う?」


「え? ん~けっこうこういう可愛い感じの花飾りとか髪につけるといいんじゃないですか?」


「それは私のイメージじゃないでしょ?」


「そうですか? 普段ならいいと思いますけどね。 さすがに受付嬢やってる時はこれじゃ可愛すぎて浮くと思いますけど……それならこっちの金属の筒のやつで前髪サイド片方まとめるとかどうですか?」


「それならいいかも……」


 俺必死ですよ! 内心もうてんやわんやの大騒ぎです。 こんなのわかるはずないじゃないですかーーー! しかもジーっと見てるし!


「おっちゃん、これ頂戴」


「あいよ! いいねぇいいねぇ、もう甘い雰囲気でおっちゃん、胸いっぱいだわ! えっと……リア充爆発しろ! っていうんだったっけか!」


 良い雰囲気の男女に向かって言う言葉らしいけどリア充爆発しろってどういう意味なんだろうね? 異世界語は難しいです。 おっちゃんにお礼を言って受け取り、エレナさんに渡そうとしたけど


「つけてくれないの?」


 とかお願いされたから大人しくつけさせていただきました。 どこからか壁を殴る音が聞こえるよ……。





 そんなこんなで楽しく色々見て回り、夕食も食べてエレナさんを家まで送って来ました。


「今日は付き合ってくれてありがとうね」


「いえいえ、お礼をいうのは俺の方です。 今日はたのしかったですよ。 ありがとうございます」


 2人して今日のお礼を言ってなんだか可笑しくて二人で笑った。


「安心できました?」


「ええ、あまり心配はかけないでほしいけれどもね」


「心配かけても俺はちゃんと帰ってくるじゃないですか」


「そうね」


 今日のデートで一番大事だった事はエレナさんを安心させてあげることだった。 知らない人は多いけどエレナさんは弱い人なのだ。 だから俺を心の支えにしてる。 その支えになってる俺がやたらと心配ばかりかけるもんだから、エレナさんも気が気じゃないのだろうと思う。 心配かけたくてかけてるわけじゃないんだけどもね。


「そろそろ恋人とか作らないんですか?」


 俺は無駄だと思いながらも質問する。 たぶん答えはいつもと同じ。


「ユリト君が15歳になってから考えるわ」


「婚期逃しますよ?」


「今でもすでに適齢期ギリギリよ」


 すでに何度か繰り返した受け答えだ。 やっぱりまだまだダメなのかなぁ。


「それじゃあ、ユリト君おやすみなさい。 受付で待ってるわ」


「おやすみなさい。 また明日です」


 別れの挨拶をすませて、エレナさんは家に入って行った。 俺も帰ろうか……。 帰ってからやらなきゃいけないこと残ってるしね。

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