24 勧誘?
町に着いてすぐにギルドに行ったけれど、仕事を終えた冒険者たちがたくさんいた。
人が多いときはギルドを利用したくないのでそのまま帰って明日また来よう。
人が多いのがなぜいやか。 もちろん混んでるからというのもあるけど、周りの視線が怖いのだ。 だって、俺がエレナさんの所に行くと大体話をするから長くなる。 そうするとエレナさんに近づきたい人達から睨まれ、ファンクラブからも羨ましがられと大変なのだ。
だから帰ろう。 明日エレナさんに何言われるか怖いけど帰ってやることやって寝ようと思う。
そして次の日
「ユリト君、昨日は夕方前に来なかったけどどうしたのかな?」
「帰ってきたら、混んでたんで帰りました」
「予想以上に様子見に時間がかかったみたいね。 私少し心配してたんだから」
心配してくれたのは大変ありがたいです。 でも倒したとか言ったらどうなるんでしょうか? しかし、言わねばならぬ。 レベル上げにはオークに挑み続けなければならないのです!
「エレナさん、これお願いします」
会話の流れとか無視してオークの魔石を出す。 エレナさんの表情が固まる。
「ユリト君? これはなにかしら? 私にはゴブリンの魔石とオークの魔石に見えるのだけれど……」
「まさしくオークとゴブリンの魔石です」
「…………」
沈黙が痛いです。 そして静かに問いかけられる。
「無理はした?」
「いえ! 安全に倒しました」
「方法は?」
「頭と足に全力マジックアローと使いました! 頭に当たれば即死ではないものの瀕死まで追い込め、足はもし頭が外れても機動力を奪う事で簡単に逃げられる為の処置であります!」
「そう」
エレナさんは黙ってしまった。 なんか緊張ですっごいドキドキしてきた。
「はぁ……無事に戻ってこれたならいいか……」
エレナさんが認めてくれたみたいだ。 俺はブシューと空気が抜けるようにカウンターに体を預けた。
「き、緊張しましたよぉ。 エレナさーん」
「私はユリト君が帰ってくるのを心配しながら待ってるんだからそれくらい我慢しなさい」
「そうかもしれませんけどー」
「はいはい、清算しちゃいましょうか。 ゴブリンの魔石が大銅貨3枚、オークの魔石が銀貨1枚で2個だから2枚、オーク退治は1体につき銀貨2枚だから2体で4枚。 合計で銀貨6枚と大銅貨3枚ね。 確認して。 それで今日はどうするの?」
渡された金額を確認して質問に答える。
「オーク倒せるなら、レベル目当てでしばらくオーク退治しようかと思います。 正直なにをするにも魔力が足りなくて……」
「錬金術は魔力をたくさん使うんだっけね。 ユリト君はもう少し魔法以外でなんとかする方法を考えるべきなんじゃなかって思うわ」
「それができたらもうしてますって……」
物理攻撃とか気功の強化込で、ゴブリン程度しか相手にできる気がしないよ……。
「なら、我々が君を手助けしてあげようか?」
後ろから声をかけられた。 振り向くと人の好さそうな顔をした男が立っていた。 我々とか言いながら1人なんですけどね。
「お断りします」
速攻で断った。 しかしびっくりだよ。 危機察知ってこんな事でも働くんだね。 相手もびっくりしたみたいだった。 そんなに断られるのが予想外だったのかな?
「レベルを上げるなら」
「お断りします」
「いや、あのね」
「お断りします」
「だから」
「お帰りはあちらです」
そう言って俺はエレナさんに向き直ると、ポカンとしたエレナさんの顔があった。 珍しい顔ですね。
「君はレベルをあげたいのだろ? だったら我々と一緒に上位の魔物を狩ればいい。 積極的に敵を倒す必要はないんだよ。 一緒に行動してくれればいいのだからね。
これは貴族の方々もやっているレベルを上げる方法だ。 だったら君がそれを行おうとも誰にも文句は言われない。 君にとってもいい話だと思うんだ。 どうだろうか?」
「えっとユリト君、私はどうしたらいいのかしら?」
「断ったのに必死になって売り込んでくる人がおかしな行動を取ったら、ギルドとして処分すればいいと思いますよ。
俺の利益ばっかりを語って自分の報酬を語らない。 ほいほい着いていったら相手は何人いるかわからない。 どんな扱いをされるのかもわからない。
それに寄生のレベル上げで誰も文句は言わない? それは貴族様だからでしょ。 冒険者なら文句は言わなくてもどんな風に見られるか知ってるはずなんですけどね。
あぁ、確かに1度も冒険者なんて名乗ってないですよね。 ランクとパーティ名をカードと共に出すことである程度の信用してもらおうって行動がないですもんね。 と、思うんですけどエレナさんはどう思いますか?」
お断りを連続している間に必死になって頭を使って考えた可能性だ。 もちろん外れてる可能性もあるというか外れてる可能性の方がよっぽど高いだろう。
だけど、近づいてくるのはこう思うぞ? というのを見せつける意味もあると思う。 見せつけるほど人がいないから、この人から広がる事を祈ろう。
できることなら寄生して、お手軽にレベルを上げて魔力増やして錬金術でバンバンアイテム作りたいよ。 でも、何日も町を離れるなんていやだしね。 ちゃんと家に帰りたいのだ。 そう、家に帰りたいね。
「そうね……。 しつこく売り込む前に自分を証明するものを提示していただけますか?」
エレナさんの恐怖の笑顔がさく裂した! 男はどうでる! 振り返ってみてみると冷や汗ダラダラ流してた。 効果はばつぐんだ!
「い、いや、あのですね……。 失礼しましたーーー!!!」
男は飛び出していった。 何人かの冒険者も追いかけて行った。 あの男の人がまっすぐに自分たちの仲間の所に行ったら大変な事になりそうだけどまぁいっか。
「問題も解決したみたいなんで、オーク退治の依頼受けて行ってきますね。 これからはたぶんこの時間しか来ないと思いますけど、安全第一でがんばってきますね」
「ええ、実際オーク退治してくれる冒険者が少なくなったばっかりだから助かるけどね。 ほら、依頼書持ってきなさい」
「は~い」
俺は依頼掲示板からオーク退治の依頼を持って来て処理してもらい、オーク退治に出かけるのであった。




