23 いざ行かん。 初めてのオーク退治へ
露店によってお昼を確保して北門にやってきました。
ここからオークがいる場所までは普通に歩いて行くと朝出て、昼頃着くくらいの距離がある。
だから普通は1泊する事が前提で野営の準備をしてこなければならない。 こんな時間に出て行ったら往復だけでも途中で日が暮れる。
だがしかし! 俺には身体強化と気功がある。 疲れにくく、移動速度も速い。 今から出ても十分に行って帰ってくることができるのだ!
久しぶりの依頼だから体動かす程度にしようとか薬草採取できればいいやなんて思ってたのになぁ……。 なんでいきなり初見のオーク退治に行かなきゃならないのか……。
門を出てから気が付いたけど、今日は薬草採取だけして、明日朝から行けばよかったんじゃないか? そうすれば余裕もできるし……。
でも、すでに支度して来ちゃったから行かないのはなんとなく負けた気分になる。 何に負けたかはわからないけど負けた気分になるのだ。 だから行こう。 失敗前提だし気にしない気にしない。
気功と身体強化を使って狩場まで一直線です。 気配察知を覚えたおかげで最近めっきり探知の出番がない。 街道を移動してる時はいいけど、オーク探しの時には久しぶりに活躍してもらおうと思う。
着きました。 しかしながらこの光景はちょっとあれです。 いや、親切だとは思うんだけどもね。 そこには看板が立っているのである。
『ここから先、オーク注意。 ゴブリン退治でここまで来てしまった人は引き返しましょう。』
ダンジョンのなごりでこの看板まではゴブリン以外の生物はほとんどいない。 だけど、この看板を境に境界が曖昧になりゴブリンは生まれ、オークはゴブリン狩りに来るのだ。
ここから先はオークがメインになる。 オーク以外の生き物もいるけど、小動物がほとんどだ。 他の生き物が侵入するとオークに狩られちゃうからね。
さてと、久しぶりに探知さんの出番です。 よろしくお願いしますってことで探知発動します。
小さい反応が小動物、見慣れた反応がゴブリン、この5つの反応が動いてるのが冒険者か? そうなると……ゴブリンよりも大きくて1つの反応なのがオークかな?
それだけの情報を確認してから探知を切って気配察知に意識を向ける。
探知は便利だけどこちらから探るために薄っすら魔力を放つため、こちらの存在がばれてしまう可能性があるのだ。
その点気配察知は、相手が出してるものを読み取るスキルなので、気配察知でばれることはないのだ。 他の要因でいくらでもばれるけどもね。
さて、気配察知に切り替えるとさっき感じ取れたもんがぼんやりとする。 小動物はまったくわからなくなった。 ゴブリンも距離が離れているのでわからない。 たぶん冒険者は探知範囲ギリギリだったからこれもわからない。 そして肝心のオークはなんとか感じ取れるみたいだ。
いることが分かってて50mくらい離れてても感じ取れるくらいか……。 いるかどうかわからない状態だとどれくらいの範囲でわかるようになるのかな?
あいつら先輩パーティが20mくらい離れててもわかって40mくらいで感じなくなったから、最低でも20mくらい離れた所からならわかるかな? とりあえず、感じ取れてるオークの所に行って戦えるか調べてこないとね。
なるべく静かに行動して、ただ今オークの後方10mほどの場所に陣取っております。
このオークどうやらゴブリンを狩ってご満悦の様子。 両手を突き上げてブッホブッホと喜んでおりますよ。
その様子を観察しながら全力のマジックアロー3本を用意。 狙いは頭、背中、足。 頭は当たれば1番倒しやすい場所だから、背中は防御力が1番高そうだからどれほど効くのかを確かめたい。 本当は腹がいいけど正面からいきなり挑むのは怖すぎる。 足は機動力を殺したい。 ゴブリンよりも足が早いくらいなら問題なく逃げられると思うけど余裕はあるに越したことはない。
それにしてもあのオーク喜び過ぎなんじゃないか? さっきからずっとブッホブッホ喜び続けてるよ。 実は狩りが初めてで、うまいこと狩りが成功して喜びまくってるのだろうか? そんな喜びに水を差してごめんよ。 水じゃなくてマジックアローぶっ刺すけど……刺されよ? それでは始めようか。
「展開。 行け。」
俺が小さくつぶやきとオークへ向かっていく3本の魔力の矢、喜びまくってるオークの予測できない動きで変な所に当たる心配もしたけど問題なく、後頭部、左ひざの裏側に突き刺さった。 ただ、背中に当たった矢は砕け散った。
「よし!」
俺は小さく喜んだ。 マジックアローは対象に突き刺さるとしばらく形が残り消えていく。 刺さらない、もしくは浅く傷をつけただけだと当たった時に砕け散る。 もろいと突き抜ける。 ゴブリンに全力打ち込んだ時は突き抜けてた。
でも、刺さった事と倒した事は一緒ではない。 事実、まだオークの気配はなくなっていない。 ただ、威力に押されたのか思いっきりこけて地面に倒れこんでいる。
しばらくその様子を観察する。 刺さったのでそれなりのダメージはあるはずだが、むっくりと起き出してきて暴れるかもしれない。
だけど動かない。 マジックアローを待機状態にしておいて、何かあれば即座に撃てるようにしてから近づく。
近づき確認して頭にマジックアローを使う。 近づいてわかったけれど、なんかピクピクしてたのだ。 全力のマジックアローで即死亡まで行かないけど、助からない一撃で時間がたてば死ぬ。 そんなダメージだったみたいだ。 背中と足に当たった場所も確認する。 足はそこそこダメージが入ってるみたいだね。 だけど、
「背中がいまいちだなぁ……。」
マジックアローは砕けてたし期待はできなかった。 背中の表面に火傷したような後がついてる程度だ。 こうなると頭に全力で1撃と追撃入れる形になるのかな?
さて、このオークを使っての最後の検証は解体だ。 肉は残さずに魔石だけにする。 肉を取るには力も技術もいるらしい。 だから普通は肉専門のパーティ以外は魔石だけを取り出して放置だ。
実は魔石取り出すだけでも一苦労らしいけどもね。 魔石だけ残すなら魔力はそんなに多くないのか。 それとも消す量が多いから魔力が多く使うのか。
オークの死体をよく見る……。 たぶん大丈夫だと思う。 野ウサギの時はこの勘を信じないで実行したら気絶したんだよねぇ。 父さんがいたから問題なかったけどもね。 それではいきます。
「解体。」
手に残るオークの魔石。 魔力残量を把握してみるとゴブリンの時よりもほんのちょっとだけ多いかも? ってくらいかな? というか、オークが狩ったゴブリンがそこにいるのだから実際に試してみればいいだけの話だ。
試した結果、やっぱりオークの方が少し魔力をくった。 慣れてないからというのもあるかもしれないけど、たぶんオークの魔石の方が質がいいからだと思う。
俺は周りに注意を払いながら考える。
ここまでやってくるのに使った魔力と時間。 さっきのオークを倒すのに使った魔力。 解体に使った魔力。 今現在の魔力残量。 ……あ、帰ってから作るポーションの事も考えなきゃいけないっけ。 そう考えると……後2匹倒せるかな……? いや、1匹にしておこう。 その代わりに気配察知だけで実際どこまでこの森に対応できるか? 隠密行動の真似事をしてオークにどこまで気が付かれないかを試す事にしよう。 必要な事はさっさとやって情報を集めないとね。
気配察知での探索は順調だった。 しばらく使ってなかったのがウソみたいに普通に使える。
オークは大体30mくらい先にいてもわかることが判明した。 その時はその先に冒険者っぽい反応があったのでその場を離れた。 離れてしばらくすると、オークが1匹でいるのが確認できた。
後ろに回り込みそろーりそろーり近づく、もちろんマジックアローは用意してある。 安全の為にも頭と足を狙う。 うまいこと倒れてくれれば追撃をかけるしダメなら逃げる。 完璧だと思う。
木に隠れながら3mくらいまで近づくと何か様子が変わった。 警戒してるみたいだ。 ばれてはいないけど、何かがいる事には気が付いたのかな?
ただ、ちょっと慌ただしい。 キョロキョロしたりあっち行ったりこっち行ったり。 このままじゃ狙えない……少し離れてみる。
離れる時に気が付かれるかもしれないなと思ったけども、あれだけ警戒してたみたいなのにまったく問題なかった。
そして、5m以上離れるといなくなったと思ったみたいで安心して一息いれたみたいだ。 一息入れるって隙だらけじゃないですか。
「展開。 行け。」
思いっきり頭に刺さり倒れる。 追撃の一撃を入れる。 倒れてるから直線だと当てにくいので途中から急激に落ちるマジックアローだ。 魔力制御はこういう事もできるから楽しい。 そして問題なくオークは倒せた。 魔石を回収して今日は帰ろうか。
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