22 ランクアップと依頼
ちゃんとした挨拶はできなかったし、見送りもしっかりできなかった。 でも、声はかけられたしポーションなんかも渡せた。
これで家に帰って寝れる。実は話してる最中はけっこう無理して明るくしてた。魔力がきつい……。ベッドが俺を待っている。いや俺がベッドに恋焦がれてる。
今日はもう休みにして明日にでもエレナさんにお礼を言おう。
こうして俺は朝友達の旅立ちに軽く挨拶をして、グダグダと過ごした。
そして今日から通常通りの1日が始まる。ポーションを作り続けるのでもなく、冒険者として行きたいところに行けるやりたいことをやれる日々が!
「ユリト君! 話があるからこっちに来てもらえる?」
いきなり計画が頓挫しそうなのですが、エレナさんに呼ばれて行かないという選択肢はない。
「なんですか? 呼ばれるような用事は思いつきませんけど」
「私も忘れてたんだけど、森の件が片付いたらランク上げるって話あったの思い出せる? その処理をしたいからカードを預かっていいかしら?」
カードはエレナさんの手から別の職員さんの手に渡り、ランクの書き換えをしてるみたいだった。
「俺もそんな話し合ったのすっかり忘れてました。そういえば、ありがとうございます。おかげで旅立つあいつらの顔見ることができました」
「それは良かったわね。面倒事も押し付けちゃったけどがんばってほしいわね」
「面倒事って先輩パーティですか? ギルドが手を回して一緒にさせたんですか?」
少し睨みながらエレナさんに言うと
「私がしたわけじゃないから睨まないでほしいかな。あの商隊の人達ってギルドからお願いして試験官もやってもらっているのよ。お願いしてる商隊はいくつもあるけどあそこは特殊で町からの追い出しを頼んでるのよ」
「え……昇格試験という名の追い出しって本当にやってたんですか!?」
そんなのただの噂でしかないと思っていたのに本当の事だったなんて
「やってるわよ。他ではあまり言わないでね。まぁ長い事町にいる冒険者ならだれでも知ってることだけどもね」
「そうなんですか……。でもならなんで一緒に依頼受ける羽目になったんです?」
「期待の新人君達にはがんばってもらいたいから、こういう経験をさせておくのもいいだろうって事になったみたいよ。後は、相手が怒られるのを見て気を引き締めるためかな」
それも経験かもしれないけど、ハードだな……。がんばれよ……。そんな事を話してるうちにカードが戻って来たみたいだ。
「では、今日からEランクですね。それとマスターからの伝言があります」
「ギルマスから? 何ですか?」
エレナさんの口調が丁寧になってるのも相まって、正直嫌な予感しかしないけど聞かない事には始まらない。
「オーク狩れる人員が減っているからとっとと狩れるようになれ。だそうです。ちなみにEランク昇格時に勝手にオーク退治の依頼を受けたことになってます」
「なんで!?」
「いつも通りのマスターの暴走ですね……。幸い失敗しても違約金の発生はないですから行くだけ行ってきてください」
「エレナさんは味方だと思ってたのに……」
いきなりオーク倒しに行けとかおかしいよ……。オークを安定して倒せるようになるのがDランク昇格試験受ける基準の1つのはずなのに……。
もちろん基準の1つってだけで他にも色々な兼ね合いがあって昇格試験になるんだけど……。
でも、オーク退治早すぎませんか? ギルドで登録してから2か月たってないんですけど? しかも1か月はまったくギルドに顔出してなかったのに……。
確かに、父さんと一緒に町の外に出かけるようになったのは10歳になった頃から行ってるけどさぁ。
「う……、私だって抗議はしたのよ……。でも、マスターが絶対だって……。ほら、北門出て時間潰して夕方過ぎに戻ってくればいいじゃない! 失敗してもいいんだし!」
それはそれでどうなんだろうと思うよエレナさん。まぁ絶対だっていうなら様子見だけしてこようかな。
「様子だけ見に行ってきますから、オークの情報もらえますか?」
「ほしい情報ならなんでもあげるわよ。行かないのが1番だけど。
オークの出る位置は北西のゴブリンの出る森を更に北に上がった森一帯でオークはゴブリンとかを狩って食料にしてるみたいね。
2足歩行で身長が180cmくらいでかなり太っているわね。
足の速さはゴブリンよりは早いくらいだけど力が強い。
1匹で行動してることが多いけど好戦的。
剣とか槍だと場所によっては深く傷つけると抜けなくなることもあるから、浅く傷をつけてダメージを蓄積させるのが普通みたい。一撃で切り捨てるなんてことはよっぽどレベルが上がるかしないと無理だって話。
打撃武器は場所によりけりで、最終的に頭を攻撃しないと倒せないみたい。
で、お腹まわりの肉は食べることができて、この町のお肉は野ウサギとオーク肉になるわね。
魔石の位置は心臓の上、人間と同じような位置に心臓はあるわ。その辺はゴブリンと一緒かしら? ん~これくらいかな?」
「ありがとうございます」
ん~足の速さがゴブリンよりは早いくらいなら十分に逃げられるかな? だけど、最大の問題は防御力かな。
俺の最大攻撃力は全力のマジックアローだからこれが効かないとまずい。十分な広さがあればなんとかできるけど、森の中とかだと大きく動けないから剣でのダメージ蓄積とかできそうにない。
マジックアロー叩き込んで様子見るしかないか。とりあえず頭と腹と足に全力で叩き込んでダメージがどの程度か見る。その後はダメージ次第だけど効くようなら何発くらい撃てばいいのか確認しよう。
狩場まで距離があるから身体強化必須だし魔力の残量も気にしないといけないね。 ここ最近、完全に切らすことはないけど魔力が切れかかってる事は多いからなぁ。
「ユリト君、無理しなくていいからね? いい? 絶対だからね」
「とりあえずマジックアロー使って、ダメなら逃げて攻撃方法探さないとならないですね。通じるのが一番ですけど」
「ユ、リ、ト、君?」
「う……。わかってます。まずそうならとっとと逃げますので大丈夫でありますよ」
「私としては行ってほしくすらないんだけどね。行くなら無事に帰ってきてね。約束よ?」
「わかりました。約束します。無事五体満足で帰ってきますよ。では、いってきますね」
「はい、いってらっしゃい。怪我しないでね」
心配そうなエレナさんの視線を受けて俺はオーク退治に出かけることになった。
初見の魔物を1人で相手にするのは始めての事だから気を引き締めていかないと! 倒せないようならアシストつけてもらって倒し方を一緒に考えてもらうのもいいかも? オーク倒せるようになればレベル上げがしやすくなる。
南西の森の奥に行ける可能性もグッと高くなるからがんばろう!! ダメージが通ればいいなぁ……。
誤字を修正しました。 試験管→試験官




