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薬屋さんの錬金術師  作者: エイキ
第1章、薬屋さんの息子は錬金術師
21/86

21 友の旅立ち。 余計なものも旅立つ

 朝起きて、急いでポーションを作る。 

 俺のポーションは予備として持つのが基本だ。最初は20本にしようかとも思ったけど10本にした。 

 その変わり新作を4本用意した。数が多くなってもあいつらの荷物が増えるだけになるかもしれないしね。 

 ただ、魔力をけっこう使ってる。戻ってきたら昼まで寝てそうだ。 

 出来上がったポーションと新作ポーションの説明書きも入った手紙を袋に入れて準備万端。急いで北門に行こう!

 北門に着くと見覚えのある顔が1人だけいた。


「おーーい! カイトーーーー!!」


「ん? お! ユリト! どうしたんだよ」


 パーティの前衛のカイト、剣術で俺をボッコボコにしてくれて、模擬戦では俺がよくボッコボコにしてた相手だ。 

 ちなみにまだパーティ名は登録されてない。パーティ名登録はDランクからになる。でも、すでに決めてあって、俺も教えてもらってる。もし活躍が伝わってきた時にパーティ名知らなくて聞き逃したとかになったら大参事だ。


「どうしたって、お前らが今日昇格試験と町移すって聞いたから来たんだよ」


「おぉ、知ってたのか。実はユリトに知らせようとは思ってたんだけど、引きこもってただろ? だからしょうがないか~って話したんだよ」


「店で伝言とかしてくれればいいじゃんかよ……。 数少ない友達が知らない間にいなくなってたとか泣くぞ」


「いや~悪い悪い」


 俺の口調もいつもと少し違うと思う。基本年上ばっかりを相手にしてる時と友達とで口調が変わるのは普通だと思う。そして全然悪びれた様子を見せないカイト。でも、なんでカイト1人だけなんだ?


「他の連中はどうしたんだよ? てか、ここでなにしてるの?」


「他の連中は向こうで打ち合わせとかしてるよ。俺は脳筋だからそういうのわけわからんからな!」


「自分で言うのかよ……。今は良いけどこれからそれじゃ困るだろ? 後でしっかり教えてもらえよ。で、ここにいるのは?」


「実はもう1つ別のパーティが護衛につくんだけど、そいつらが来てないんだよ。だから俺がここにいて来るの待ってる。出発の準備はできてるから鐘がなったらすぐに出るつもりみたいなんだけど、まだ来ないからこっち来るのが見えたら知らせるんだ。そしたら、向こうもすぐに動けるようにするんだってさ」


 護衛が遅刻ってダメ過ぎるだろ……。出発前の打ち合わせとかもあるだろうに……。


「まぁ、あの先輩らだからなぁ。ユリトもあいつら嫌いだろ?」


「もしかして1個上のあの人ら? うわ……まじか、顔も見たくないぞ。てかカイト達も目の敵みたいに見られるんじゃないか?」


「見られるくらいはしょうがないんじゃないか? 俺らの方がさっさと駆け上がって来たわけだしなぁ」


「お前ら、圧倒的に他よりも強いもんな。でも、慢心しないで慎重に生き残れよ。活躍は聞きたいけど死亡報告とか聞きたくないからな」


 友達が死ぬなんて聞くのは嫌だ。あんな悲しいのはそうそう味わいたくない……。こんな職業じゃよくある事だけど、それでもね。


「ユリトはバカだなぁ。俺らが慢心する訳ないじゃん。今だって模擬戦やったらお前に勝てないだろ? 5対1で勝てない人間が友達にいるのに慢心もなにもあるかよ」


「俺は強くはなってないけど、めんどくさい相手になったぞ」


 不敵な顔を作ったつもりで言ってやる。 

 実際、並列展開でボッコボコにできるし、身体強化のごり押しでもボコボコにできる。そこに危機察知やら気配察知、レベルはカイト達の方が上だろうけど負ける気がしないね! 

 それに、そういう気持ちを込めて叩きつけてやればきっとこいつらの抑えに少しはなると思う。1人に勝てなかった俺たちが調子に乗っていい分けないって抑えに……。


「うっへ、マジかよ。次に会う時はきっと俺たちがボッコボコにしてやるからな!」


「それができるくらい強くなってくれなきゃ困るよ。ってどうやら先輩らが来たみたいだね。カイトこれやるから生き残れよ」


「ん? 来たのか? どこだ? てかなんかくれるのか? ありがとうな! でも何入ってるんだ?」


「押し付けられた保存食と俺の作ったポーション。新作が入ってるから中の手紙ちゃんと読んでくれよ。というかミリーに渡しとけ。そうすればなんの問題もない。」


「手紙なんていれてあんのか。まぁパーティのしっかり者ミリーちゃんにおまかせだな! ってマジであいつら来たな」


「来たなじゃなくてほら、みんなに伝えるんだろ? 俺も一緒に行くから行こう」


「一緒に行くとあいつらにも会う羽目になりそうだけどいいのか? って俺を置いていくな!」


 あんな奴らと会うのは嫌だけど、どうしたって長い事顔合わせられないんだからみんなの顔見るに決まってるだろ。というかその為に来たんだよ。


「おーい、ミリー、ロッドス、アルトル、ルルー」


「あれ? ユリト君だ。見送りに来てくれたんだ」


「おっはーユリっち。見送りごくろー」


「おぉ? ユリトがいるぞ」


「ユリト、おはよー」


「ユリト! 俺を置いていくな!! てかあいつら来たの見えたから言いに来たぞ」


 しっかりと別れの挨拶したいけど、始めての護衛依頼なんだからしっかり成功させてもらわないとね。


「挨拶したいけど、依頼はしっかりしないとな。カイトに色々入った袋渡したから後で見ておいてくれ。ほら、仕事仕事、しっかり生き残って活躍して来いよ!」


「「「「「もちろん!」」」」」


5人がそれぞれ、じゃあなーとかまたねとか俺に挨拶をしてくれて、依頼人の所へ行った。 

 あ、あの人知ってる人だ。どうかよろしくお願いします。その願いを込めて頭を下げる。頭を上げたら笑って手を振ってくれた。しっかり働く人間にとってはいい依頼人だ。安心した。そうでなければ……。


「雑魚のユリトじゃねぇかよ! ここでなにしてやがる!」


 先輩パーティが足を止めて俺に声をかけてきた。足を止めるとかこいつらバカじゃないのか? しかも、みんなしてニヤニヤしてるし、だから俺は商隊を指さして、


「もう鐘が鳴りますよ? 遅刻なんてして試験落ちても知りませんからね」


「ちっと遅れたくらいで落ちるとかあるわけないだろ? バカじゃないのか?」


「バカで弱いとか使えないやつだよな!」


 同意するようにみんな笑う。こいつらは何を言ってるのだろうか? 俺とはかけ離れた常識をもっているみたいだ。商売にとって時間は大事なのだよ。


「ま、落ちても俺には関係ないか。せいぜい足を引っ張って周りを巻き込むなよ」


「おい! 待ててめぇ!!!」


 俺はさっさとその場を離れた。せめて出て行くその時まで見送っていきたかった。でも、俺があそこにいたら出発が遅れる気がする。 

 商人さん、こいつらを少しでも引き留めてしまって申し訳ありません。きっとこいつらに迷惑かけられると思いますが頑張ってください。 

 戦力としては問題ないと思う。普通は2、3年かけてDランク昇格試験を受けるものだから、あの先輩パーティも2年になるかならないかくらいで受けるのだからそれなりにできる方だと思う。思うけど言動に問題ありって感じがひしひしと……。あれで護衛対象とまともに会話できるのだろうか? むしろこれから先冒険者として生きていけるのかどうか……。 

 あれ? でもこれ、噂に聞く昇格試験をエサにした追い出しじゃないよね? 依頼人や同行者に迷惑かけるからそんなものはないだろうと信じたい。 

 鐘がなった。友達の門出がいいものになりますように……。いきなりひと悶着ありそうだけどな。


「出発直前に来るとか何考えてやがるんだ!!!」


 うん、特大の雷がさっそく落ちてた。

抑えに→抑えに……。 に変更しました。

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