15 報酬と新レシピ
最初は色々気を使っていたはずでした。でも、途中からなんかコソコソするのが楽しくなってきました。
冒険者に近づくのはさすがに向こうにも迷惑かかるのでやりませんでしたけどね。
でも、ゴブリンには容赦しないでいいので石を投げて隠れて投げて隠れてと遊んでみたりしました。相手が魔物だとはいえ、遊び過ぎたと今では反省しております。
今回の成果、気配察知がどういうものか確認できた事とゴブリン18匹分の魔石です。
エレナさんにまた無茶したの? みたいに怒られなければいいな……ガクガクブルブル。
ギルドに戻ってきました。なんとか混む前に来ることができて良かったよ。
「ユリト君おかえりなさい。今日は遅かったみたいだけど大丈夫だった?」
「色々試してただけなので全然余裕ですよ。これ今日の成果です」
そう言って俺は空間収納からゴブリンの魔石を18個置くと、
「……前の事を考えればこれくらいは余裕なんでしょうね。ゴブリン討伐5匹で銀貨2枚の依頼、15匹だから6枚で支援金追加で銀貨12枚。ゴブリンの魔石が1個が大銅貨3枚で18個だから大銅貨54枚 合計して大銀貨1枚、銀貨7枚、大銅貨4枚ね。……ユリト君には支援金いるのかしらね?」
眉間を揉み、呆れた顔で話をする。
「もらえるものはもらっておきますよ。お金は確かに受け取りました」
お金も受け取ったし、町を散策してから帰って店の手伝いしようかな? なんて思っていたけれど
「それとさっき来た時に言いそびれちゃったけど、別件の報酬もあるのよ」
「何かありましたっけ?」
「呆れた……。シーフゴブリンの魔石とか森の様子の報告とかしたでしょ」
「あぁ! そういえばそうでした」
正直覚えてなかった。エレナさんの怒涛の勢いがあまりにも印象に残っているので、
「変な事考えてないかしら?」
「考えておりません! 報償はいくらになるでしょうか!」
「その態度は何かあるって言ってるようなものだけど、まぁいいわ。諸々入って大奮発の金貨1枚ね」
へ? 金貨1枚ってそれは……え?
「それは奮発しすぎではないでしょうか? もらえるものはもらいたいですけど、あからさま過ぎて怖いのですが……」
「私も出し過ぎだとは思うし、ガリックスさんもそう思ってるみたいだったけど、ギルマスが、これで警備隊を動かせるぞ! 俺からも出すからはずんでやれ! って言ってねぇ」
「なるほど、ギルマスに感謝しておきますね」
「そうしなさい。それとなんでもいいから依頼がんばってね。この騒ぎが収まったらランクあげるらしいから」
「理由を聞いても?」
「ギルマスが、Eランクくらい余裕だろ? って落ち着いたら上げる気満々だからね。本当はすぐにでも上げさせようとしたんだけど、今は色々忙しいし、騒ぎになりそうだからってなんとか抑えたのよ。だから、周りから見たら普通にランクアップしたと思えるように、実績を作ってほしいのよ」
普通実績があるからランクアップなのに無視してランクあげようとしてるから実績作れと、
「ギルマスも大概ですね」
「いい人だし、間違ってもいないのだけど、だからこそ短絡的に意見を通したりするのがねぇ……」
「苦労してるんですね」
「主にガリックスさんがね。さて、混み始めてきたし、ユリト君は買い食いでもしてきなさい」
「は~い、それではまた来ますね~」
「ええ、またね」
ちょっと呆れられたけど、怒られなかったのでこれでよしとしよう。お金もたっぷり稼げたしね。あちこちひやかしてみよう!
露店を色々と見て回った。時々露店めぐりをしていると錬金術に使えそうなものがあるからそれを探しているのだ。
とはいえ、実際には買ったことはない。作ったらポーション作りに影響がでるくらい魔力を使いそうだったり、材料全てを集めるのが大変そうだったりするので、こうしてみて回って覚えて記録しておくのだ。
幸い、紙は錬金術で作れる。草とか木の皮を集めるだけでいいので材料には困らない。ポーションほどではないにしろ魔力は使うので自分で使う分だけしか作らないけれどもね。
色々と見て回ってるとものすごく気になるものを発見した。
「いらっしゃ~い。水晶買う?」
「ずいぶん小さい水晶玉ですね。こっちのは曇ってるし……」
本来水晶玉と言って売っているものの二回り以上小さい水晶と大きさはバラバラな曇った水晶を取り扱ってる露店だった。
「露店だからね~。色々使い道のある透明で一定以上の大きさの水晶玉はちゃんとした店で売るさ。こっちは見習いや本職の練習品だよ。観賞用とかゴッコ遊び用さ」
「ん~ちょっと考えさせてくださいね」
水晶をじっと観察する。これ以外に必要な材料は……魔力? 魔法を込められる? 違うな……。ん~でも、今の魔力なら余裕をもって作れそうだから買ってみようかな。
「曇ってる小さい同じくらいのこれ4つと透明なの1つくださいな」
「まいど! 意外とお金持ってる子だね~。え~と……全部で……大銀貨2枚だね。大丈夫かい?」
「はい、2枚ね。あ、そのまま持って帰りますよ」
俺は買った水晶を空間収納に入れた。
「空間収納持ちで大きさもそこそこあるんだね~。びっくりしちゃったよ。露店はたまにしかやらないけど、トルトット宝石店ならいつでもおいてあるからほしくなったらおいでね」
機会があれば。と返事をして露店めぐりに戻った。その後はめぼしいものもなかったので家に帰った。帰って事務の仕事を手伝った。母さん、事務員増やした方がよくありませんか?
ポーション作りも終えて部屋に戻り、いつもなら空間収納に魔力を注ぐところだけど、今日は買ってきた水晶で錬金術を試してみる。
なんで5個も買ったのか……これも錬金術師の勘なのかな? とりあえず水晶を全部出す。入れっぱなしにできるほど容量ないしね。
曇った水晶を1つ置く。準備は……これでいいのかな。
「錬金開始」
魔力が線を引いて水晶を囲み魔方陣を描く。水晶は徐々に光となって魔方陣に吸い込まれていった。ん? ここで……選択?
火よ。そう言うと、火属性の魔力が浮かび上がり魔方陣に吸い込まれた。芽が生え、成長し白い木が姿を現した。
その木にピンク色の花が咲き始め、満開となった。満開になった花は中央の木から広がった光に押されて散っていく。
そして、光が収まると魔方陣のあった場所にほんのりと赤く染まった不透明な水晶が出来上がっていた。
出来上がったものを見て思った。なんだこれ? 火の魔力が入ったと言っても魔石って感じじゃないし……。
作れるのは勘でわかるけど、出来上がったものがなんなのかわからないってのはどうにかならないかな。でも、新しい物が作れたことは良い事かなぁ。
今までポーションと紙しか作れなかったし……用途不明水晶が作れるようになったからと言ってなんだって思うけどね。次の無の日に、アレックさんに聞いてみようかな。
とりあえずは無事魔力切れにならずに作れてよかった。魔力残量は……いつもよりは少ないくらいかな? 身体強化は使わなかったけど森でゴブリン退治して、いつもと同じポーション作りをして、新しい物を作ってこれだけ残ってるのはやっぱりレベルが上がったからだね。
南西の森が落ち着くまでは、ゴブリン退治しつつやりたいことやっていこうと思う。




