10 ゴブリンに出会えればと思っていたのにこんな事になるとは……
朝の日課を終え、エレナさんに口撃をくらい、薬草採取にやってまいりました。場所は昨日に引き続き南西方向になります。
しかし、昨日とは違うことがあります。それは……袋が1枚増えました。 気が付いたんです。家で使う時だって10束ずつなんだから、10束ずつ保管すれば楽だって。
今更だって思うけど気が付いたときに変えていければと思います。
薬草採取をしながらスライムの核を集めたりして早い時間に本日の必要数は確保した。
さて、今日はここからが本番だ。森に近づき、ゴブリンが出てこないか確かめたいのだ。もちろん、森の中に入るつもりはない。
そもそも、この場所に来てるのは人がおらず質のいい薬草があり、ゴブリンが出るからだ。 魔力は使う事で増やすことができるけど、レベルアップの場合グッと増える。
レベルアップだけ考えるなら北西に行くべきだが、まじめに冒険者になる人たちの修練所みたいなところだから、俺が使うのは気が引けるし、なにより倒した後の行動を見られたくない。
だから、ここに来てのんびりやろうと思っていた所にあの情報だ。 視線だけしか感じられなかった存在と言うのが怖いけど、いざとなったら必死になって逃げようと思う。
そして、森にある程度近づいたわけですけど、
「なんじゃこりゃ……どうしたもんか……」
探知にゴブリンが引っかかっておりますが、え~と、1、2、3……10匹居るみたいだ。予想外です。距離はあるから倒せるけどこれ上位の指揮官いませんか?
でも、強さ同じくらいの個体しか引っかからないってことは、例の視線だけの奴? とりあえず気功の出力を上げる。上げてる途中に気が付いた。
把握できてるゴブリン達の後ろからこっちを見てる視線がある。
視線の奴が後ろにいるなら……うん、戦ってみようか。 俺はさっきから動いていないのに向こうは動かない。
こっちに気が付かれてるとは思わず、近づいてくるのを待っているのかもしれない。だったらこっちから仕掛けようか。
倒す方法はマジックアローの一斉掃射、せっかく動かないでいてくれるのでなるべく仕留められるように細工する。
探知と組み合わせて10本のマジックアローの飛んでいく場所を決める。そして、視線の奴にも1本マジックアローを準備する。だけどこのマジックアローは特別製だ。
これだけはマジックアローに乗せられる魔力限界まで注ぎ込んでいる。 これにより、速度も貫通力もかなり高くなる。
自分の中にこれだけのものを用意したが、相手はまだ動きを見せない。 それならそのまま死んでくれ!!
「マジックアロー展開! 一斉掃射!!」
マジックアローを展開して、手を振り命令を与える。気分の問題だけど、そもそも魔法なんて気持ち次第で強くなったり弱くなったりするのだ。
気分よく魔法を使えば効果もあがるってものですよ! 実は完全に制御できているのでなんの意味もないんですけどね~。むしろ声に出してる分、ばれやすいか?
勢いよく11本のマジックアローがゴブリン達に向かっていく。その中の1本だけその他のマジックアローよりも速く獲物へ向かう。
ここからだとゴブリン達の様子はわからないから、マジックアローをすぐに撃てるように準備しながら探知で探る。
ゴブリン達の後ろに反応が増えた! これは視線の奴か? ダメージが入って気配を消しきれなくなったかのかな。
「「「「GAYAAAAAA!!」」」」
ゴブリンの叫び声が聞こえた。 飛び出してきたのを撃ち……ってあれ? この結果は予想外です。反応が全部消えたよ。全弾命中って事かな。
って全部……? 視線の奴はどうした? また気配消されたのか! 警戒しなきゃ……。
しばらく様子を見てたけど、視線を感じない。これは逃げられたかな……。警戒しながらも俺はゴブリンの回収に向かう。
森が近い場合、首を切り魔石を抜いて、森の中に放り込んでおく。そうすると動物や魔物が処理してくれる。首を切り魔石を抜くのはアンデット化を防ぐ為だ。
だけど、俺の場合は別の手段を使う。ギフト錬金術を持つから使える魔法、その名を解体という。
この解体、便利なのだが癖が強い。まず範囲は自分から半径50cmくらいだ。だけど、直接触らなくても発動すると思えば十分だ。
そして何より、基礎魔力消費がものすごく少ない。ただ使うだけならそれこそライトのような簡単な魔法と同じくらいだ。
一見ものすごく便利そうだがそこは錬金術に与する魔法だけあって一筋縄ではいかない。この解体魔法最大のデメリット、それは残す素材が多ければ多いほど魔力消費量が跳ね上がるのだ。
前に父さんと一緒に来た時に、野ウサギの肉と皮を残すように使ったらそのまま倒れたことがあった。
あの時の事を思い出すと今増えたくらいの魔力じゃ野ウサギすら素材として解体できないのだ。
じゃあこんな魔法どう使うのかと言えば死体の処理だ。基礎魔力消費だけだと、この解体はすべてを無に帰す……つまり分解するのだ。
なんとなく、解体してるわけじゃなくて、分解と再構成をしているんじゃないかって気がするよ……。
そんなわけでゴブリン達の死体に近づき、魔石のみを残して解体を使う。 魔石だけならマジックアロー1本と同じくらいの消費だからだからなんの問題もない。
これで魔石が地面に転がるならわかるんだけど、なぜか手のひらの上に乗ってるんだよね。不思議だね。魔石はそのまま空間収納に放り込む。
そうしてすべての死体を処理して、警戒を強めながら視線の奴がいた場所を調べに行く。浅いとは言え森に入ってるので十分に注意が必要だ。
「これは……、あ~こういうオチかぁ……」
現場について状況を確認してため息がでる思いだった。だって、普通に死んでるんだもん。サイズは普通のに比べると一回りくらい大きく見える。
一般的なのと違いレザーアーマーもつけてはいたみたいだけど、上半身だけで、マジックアローは何も防具をつけてない右足に当たっている。かろうじて足は繋がってるように見える。
で、元々枝の上にいたみたいだけど当たった衝撃か、痛みで下に落ちてのたうち回ってるうちに死んだみたいだ。
「あ~これ、どうしようかなぁ……」
たぶん、ギルドもこの死体ほしいと思うんだけどゴブリンなんだよねぇ……。でも、情報提供はしなきゃいけないから……持って帰ろうか。
とりあえず、右足の繋がってる部分を切り落として森の外に運んだ。それから、切った場所を水で流してファイアで傷口を焼き血を止める。
俺は、ゴブリンをずるずる引きづりながら町へと戻った。
「ユリト、ゴブリンの死体なんぞどうした?」
町に到着すると門番のおじさんに声をかけられた。門番だから声をかけるのが当然と言えば当然であるが、さすがに死体付だしな。
「南西の森にいた変なゴブリンだから、ギルドに情報提供の一環でもってきてみたんですけど……」
「変なゴブリンか……。ギルドに使いを出すから外で待っててくれや」
俺はわかりましたと答え、おじさんは詰所の中に入っていった。
おじさんは戻ってきたけど門番の仕事を再開して俺は大人しく待ってた。 通りかかる人が、ゴブリンの死体なんぞなんで持って来てるんだ。って目で見てきますが、俺だって好き好んで持って来てるわけじゃないんだけどねぇ。
そうして待っていると、荷車を引いてマティスさんがやってきた。
「おぅ坊主! 待たせたな!」
「マティスさんがなんで……?」
「坊主がもってきたものを運んでくれってギルドの連中に頼まれたのよ。 で、運ぶのは……なんでいゴブリンか? なんでまたゴブリンなんぞ運ぶんだ? ん? おお! なんかでかいか?」
「能力持ちっぽいし、ギルドで情報集めてそうだったから持ってきたんだよ」
「そうか。ま、俺は俺の仕事をすればいいだけだな!」
そう言ってマティスさんは、荷車にゴブリンを乗せてくれたので俺もその後をついていく。
さてさてどうなることやらね。
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特別性→特別製 修正しました。




