星へ伝える月の感謝
星に出逢えて、私はいつも幸せです。
ありがとう
月
小さな頃から、自分に自信の持てない月が居ました。
「何て汚い月だろう」
「もう、見ていたくもないな」
―…「あんな月は大嫌いだ」
人々は口々にそう言いました。
月は悲しいのです。
悲しくて、悲しくて堪らないのです。
「そんなこと無いんだ」
「そんなこと言わないでよ」
月の叫び声は、夜空に吸い込まれて、誰にも届きません。
在る日を境に、月はこう思うようになりました。
「僕がもっと良い子なら、もっと優しい子なら。
きっと皆、僕を必要としてくれる筈」
月は愚かでした。自分の存在価値を求めるあまり、他人の顔色ばかりを窺う様な月へと成長していきました。
月は気付いて欲しかったのです。
「大丈夫だよ」「在りのままの君が綺麗だよ」
そんな風に、嘘でも良いから微笑んで欲しかったのです。
そんな月を、小さな小さな星が見つめて居てくれました。
ずっと、ずっと、「頑張れ」って、呟きながら。
「君は、君だよ」って、言いながら。
月は在る時、優しい星に出逢いました。
星は、優しい星でした。いつも、誰かが星の傍に居ました。
月は、星に憧れていました。
星の優しさに、憧れていました。
そんな星から、月に手紙が届きました。
「汚れていても、醜くても。それが貴女なら良いじゃない?」
月は、本当はその優しさに気付いていました。
その言葉は『本心』なのだと理解していました。
けれど、月は怖いのです。
昔のように、手を差し伸べてくれる誰かを信じて、その手を振り払われるのが。
月はただ、怖いのです。
「もう消えてしまいたいよ」
月は、その言葉が星を傷つけると理解していました。
けれど、月は怖いのです。
月は星が大好きでした。
だからこそ、星を傷つける事が怖いのです。
その時の星がどんな顔をしていたか、月は何も知りません。
だけど、ただ、月は星に幸せで居て欲しいのです。
星の負担になりたくないのです。
月は、自分がどれだけ重い存在かを、理解していました。
―けれど。
塞ぎ込んでいる月に、星からの手紙が届きました。
それは、重い月を嫌う言葉なんて一言も書いて居なく、ただ優しさに溢れた星からの言葉が綴られていました。
月は泣きました。
星の優しさが嬉しくて、嬉しくてただ泣きました。
月が照らす世界に、温かい雨が降りました。
星に月は、「ありがとう」と直接伝えられてはいません。
けれど、月は今、夜空に浮かびながら、流れ星へと願います。
―どうか、この先、星の未来が、いつまでも、いつまでも幸せでありますように…と。