十七、桃太郎、これからも。
2016年4月30日:文章修正
「清海、おれはこの国を守っていくぞ」
「……それはもう、耳にタコができるぐらい聞いている」
呆れた顔のこちらに、今さっき先代から家督を継いだ青年は爽やかに笑った。
「おまえはこれからもおれのことを支えてくれるか?」
「……そうだな、現時点でも支えて……というか重い! さっさと退け!」
清海は怒鳴った。すると背中にもたれていた政春は脱兎の如く退いた。
「おっかねーな。清海は」
政春はなおも軽口を叩く。清海は忌々しく政春を睨み、起き上がった。大きな合議も終わり、暖かい縁側で昼寝をしようとしたら、これだ。
しかし政春は飄々としていた。
「そう睨むなよ清海。というか、浦島の当主がこんなところで油売ってていいのか?」
「その言葉そのまま返してやろう。お前は暇なのか?」
「家臣どもの長話には飽きた。眠くて仕方ない」
あくびをする政春に清海は頭を抱えた。
「これから一色家を背負う身の奴が、どうしてこうも阿呆なのだろうか……」
「打ち首にすんぞ」
「そしてなんと横暴だろうか」
「さらし首決定じゃあっ!」
「やってみろ、唐変木!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ二人だったが、すぐに顔を見合わせて笑顔になった。
「……清海」
「なんだ?」
ひとしきり笑うと、政春はやけに真剣な表情をした。
「おれさ、この国をもっと豊かにしていきたい。だから、戦のない国を作りたいんだ」
「戦のない? 難しいことを言うな」
世は乱世である。
周辺諸国は更なる富を得るために、領地の拡大に勤しみ、戦を繰り返している。現に一色も東西で睨み合い、時おり戦闘が起こっている。
清海は眉をひそめるが、政春は続けた。
「戦がなかったら田畑は荒れないし、領民は幸せに暮らしていける。武力だけじゃあ何も解決しないだろ。戦なんか馬鹿のやることだ」
「……」
清海は彼の精悍な横顔を見つめた。
夢物語だと思う。
戦のない世などありはしない。人はいつだって何かをこじつけに争いを引き起こす。争いの中で人は知恵を付け、物事を円滑に運ぶのだろう。
それでも、親友の意志は固いだろう。
清海は黙ってしまった。
すると政春は笑ってこちらを振り返った。
「国のためならおれはなんだってやってやる。それが上に立つ人の役目だろ? だからさ!」
ばん、と清海の背中を叩いて言った。
「おれを支えてくれよ? 清海」
その声はいつになく弱々しかった。
清海は少しだけ目を見張り、薄く笑った。
「……いいだろう、お前の夢に付き合ってやろう」
「清海」
「主家の一色ご当主が頭を下げるのだ。浦島家棟梁として答えないわけにはいかない」
「なんか腹立つ言い方だな」
「これから大変だぞ」
息を吐くと、政春は裸足のまま縁側から庭に下りた。雲一つない空を見上げて、彼は大きく腕を広げた。そして宣言する。
「誰がなんと言おうと、おれはおれのやり方で国を治める」
「……そうか」
彼の背中を見つめながら清海も決断した。
どんなことがあろうともこの背中を守っていきたい。それがどんなに卑劣な手段だとしても、彼の慕う国を守れるなら命を差し出して構わない。
清海は姿勢を正し、政春に頭を下げた。
「この浦島清海、一色の最善のために最期まで戦い抜きたく思います」
堅苦しい言葉に一色当主は振り返った。そして明るく笑う。
「おまえにそう言われると恥ずかしいな」
そして。
一色政春は有言実行をした。
家臣を説き伏せ、彼は子を成し、隣国と同盟を結ぶ。交易の自由を認め、金や銀などの資源の採掘にも手を伸ばした。
一色は先代よりも経済は豊かになり、平和な国となった。
一色という国は二十年近くもの間、大きな戦をしていない。
* * *
広間には重々しい空気が流れていた。
最奥には城主である政春が冷たい目をして広間を見つめる。
その隣で、桃太郎は気まずそうに髪を掻く。
現在一色桃太郎は療養中である。幸い命に別状はなく左腕も元通りだ。これからも剣は振るえる見込みで、今まで自室で寝かされていたのだが、突然政春に招集されて今に至る。
「……」
広間の中央にはこちらへ平伏する少女がいた。少女の前には綺麗に折りたたまれた書状がある。政春はそれを開きもせず、彼女を見つめていた。
桃太郎はそんな父親を横目で見やり、少女に声をかけた。
「頭を上げてくれ。瑠璃」
しかし浦島瑠璃はぴくりとも動かない。艶やかな黒髪を床に垂らし、沈黙を保っている。桃太郎はいたたまれなくなり、放置された書状を手に取った。
書かれていることはおおよそ想像ができる。政春がこれを受け取らない理由もわかる。だからこそ開きたくなかったのだが。
――内容は嘆願だ。
波乱をもたらした海賊討伐は、隣国皆元の介入で幕を閉じた。
海賊『和爾』はほぼ討ち取られ、消滅したと言っていい。海賊と繋がっていた皆元の若武者は取り逃がしたが、皆元と同盟を結んでいた一色家臣、浦島清海を捕縛した。これは一色家臣団に不安を招いた。
政春が当主となってから大きな事件はなかった。そして浦島清海と一色政春は旧知の仲である。そんな彼が皆元と手を組み、主家を討つなどあり得なかった。
家中はしばし紛糾する。
今すぐでも皆元と戦を行うという意見も挙がった。だが政春は、それだけは決して許さなかった。
しかし政春はけじめをつける。
反旗を翻した浦島清海は打ち首と決まった。まもなく謀反人として処罰される。
清海の子である達海は蟄居を命じられた。桃太郎の助言もあり、彼は処刑されることもなく事なきを得ている。しかしいずれは家臣たちの反感を買うため、これからどうなるかわからない。
その中で浦島家、息女の浦島瑠璃は単身で政春に願った。
「どうか、父と兄のお命をお助けください」
頭を垂れ、瑠璃は言う。
桃太郎は嘆願書を開いたままで読むことはしなかった。読んでも内容は入ってこないだろう。それから、ちらりと父を一瞥した。
相も変わらず、政春は沈黙を続けている。
桃太郎はがしがしと頭を掻き、政春を睨みつけたが何も起こらなかった。
「……私は兄と父の力になりたい」
ふと、瑠璃が力強く言った。
「私のできることはこれぐらいしかないから。どんなに頑張っても武器を持って戦うことはできない、桃太郎様や達海兄様のようには戦いません……」
「……」
「だから! 私は私のやり方で戦いたい。自分の信じたことをやり遂げたい! だけどそれがすべて正しいとは思わない。だから、今も怖い……それでも! 私の選んだ道だもの、後悔なんかしないわ」
瑠璃はぐっと顔を上げた。その潤んだ瞳は真っ直ぐと政春に見つめた。
「これが、家のためにできる、私の最善だと思うから!」
本当に芯の強い。
愚直なほどに真っ直ぐで、頑固だ。
「どうか、寛大なご処置を……!」
瑠璃は再び頭を下げた。
茫然として彼女を見つめていると、政春は桃太郎の手にあった書状をひったくった。びっくりするこちらに目にもくれず、政春は書状を引き裂いた。
その音に瑠璃の肩が震える。桃太郎は思わず、政春の腕を掴んだ。
「親父……!」
「桃太郎、」
「あん?」
政春はついっとこちらに目をやり、
「おまえが決めろ」
「は……?」
その声が瑠璃にも届いたのだろう、がばりと顔を上げる。涙がいっぱい溜まった瞳が、視界の端で揺れる。
政春は淡々と口にする。
「今回の件、おまえが裁断しろ」
「……い、いいのか、オレの答えは決まってるぞ」
「清海は難しいだろうがな。……それでいい、家臣どもはわしが説き伏せる」
「親父……」
桃太郎は目を瞬いて父親を見つめた。政春はこちらから目を離して、広間の外を眺めて言う。
「若い連中は若いなりに、がむしゃらに生きろ」
「わかった」
桃太郎は立ち上がった。それにすぐさま瑠璃は頭を下げる。
「あぁ桃太郎、清海に伝えてくれ」
「ん?」
「今までご苦労であった、大義だった。と」
政春は桃太郎に背を向けたまま、言い捨てた。
父の背中はどこか遠くに感じた。
そのあとすぐに、桃太郎は清海に会いに行った。
政春の決断を伝えるために。そして桃太郎自身も少し清海と話がしたかった。
幽閉される浦島達海は誇らしげな表情をして、桃太郎を見つめた。
「まさかあなたが足を運ばれて来られるとは、思いもしなかった」
「あんたとは話がしたかったからな」
桃太郎は牢の向こうの清海を見下ろした。清海の表情に後悔など微塵も感じない。桃太郎はそれが悲しく思えた。
「親父は今回の件をオレに一任した」
伝えると、清海はわずかに目を見張る。しかしそれも一瞬で、嘲笑い吐き捨てた。
「あいつは昔からそうだったな……、本当に阿呆だ」
そして桃太郎を見つめる。
「儂を連れ出すおつもりですかな。なら結構」
「瑠璃が、あんたと達海を助けようとしている。娘の想いを踏みにじるのかよ」
「……はっ。あいつがそんなことを。無邪気で我の強い娘であったが、まさかそこまでするとはな」
「だから……」
「なれど、それは受けられません」
清海は冷たく切り捨てた。
「儂が生き長らえば、死んでいった者たちに顔向けができませぬ。咎はこの身で請け負います」
「……」
あのとき、忠治たちが斬り捨てたのは海賊だけではない。浦島清海を主と敬い、散っていった者たちもいるのだ。
桃太郎は奥歯を噛み締めた。
「もっと……もっと、良い方法なかったのかよ」
自然と口が動く。
「これじゃあ何も、残らないじゃねーか」
格子に拳を押し当てる。すると清海は微かに笑った。
「やはり親子だ。あなたは政春に似ている。強い意志と屈しない心を持っている。真っ直ぐなところは少し異なりますが」
「……」
「それでも儂に後悔はありません」
彼は何もない天井を見上げる。
「これであいつも、他の連中も外へ目を向けよう。……あなたのことだ、是が非でも達海を助けようとなさる。あいつはそれを受けるでしょう。それはとてもありがたい。やはり浦島家を終わらすのは忍びない」
「あんた、言ってたよな?」
声に清海は反応する。ゆっくりと顔をこちらへ向かせた。
「オレが、一番親父を知ってるって……。そんなわけないだろ、オレは一色政春と二十年も一緒にいない餓鬼だ。あんたのほうが、もっと、ずっと長く親父と一緒にいるだろ?」
清海の瞳がわずかに揺れた。そして小さく吹き出して大きな声で笑った。牢に響く声音はどこか楽しそうだった。
「あなたは面白い。それでこそ、政春の息子だ」
しわを歪ませて清海は笑い、頭を下げた。
「政春によろしくお伝え申し上げたい」
「……」
「大馬鹿者が。と」
浦島清海は笑っていた。
* * *
「――若」
縁側で寝そべっていると声が掛かった。誰だと訊ねなくともわかるため桃太郎は目も動かさないで、空に向かって答えた。
「なんだよ、忠治」
影が差す。こちらの顔を覗くのは、相変わらず真面目な表情をした犬養忠治がいた。また、小言を言われると思った桃太郎であったが、起き上がるのも億劫だった。
忠治は隣に正座して口を開く。
「私はこの度、若を危険にさらしました」
「……あー、そうだな」
完治はしていないが、もう左腕も動くようになった。まだ刀は振るえないが。
そんなことを考えていると忠治の言葉は続いた。
「私はこれからも若のお側にいてもよろしいでしょうか」
「あ? 何言ってんだおまえ」
目を上げると忠治の手が見え、拳が作られていた。
「……」
桃太郎はしばし考えてから、起き上がった。そして忠治を見つめた。柄にもなく忠治は眉尻を下げて、悔しそうに唇を噛んでいる。……捨てられた犬のような感じだった。
桃太郎は忠治の頭をぐわしっと掴んだ。びっくりする忠治を無視してわしゃわしゃと撫で回した。
「な、なにするんですかっ!」
鳥の巣のような頭になった忠治が抗議の声を上げる。
「おまえさ、アホだろ」
「はっ?」
言うと忠治は目を見開いて固まった。驚く忠治に桃太郎は肩をすくめて微笑を浮かべた。
「オレがおまえを捨てると思ってんのか?」
「え」
「オレが怪我したぐらいで落ち込むな。……らしくないぜ? オレはおまえがなんと言おうと側にいてもらう。言ったろ? オレにはおまえが必要なんだよ」
「若……」
彼の笑顔に忠治は呆然として見つめていたが、やがて嬉しそうに悔しそうに顔を歪めて、しっかりと座礼した。
「私はいつまでもあなたのお側におります。どこまでもついて行きますよ」
「頼むぜっ!」
「どっ、どうして頭に触れようとするのですか!」
「えっと、なんでだろう?」
桃太郎は首を捻った。
「あの、桃太郎様っ」
すると声が掛かった。声の主は千鶴だ。彼女の登場に忠治は側に控え、桃太郎は縁側に腰掛けた。桃太郎は微笑む。
「久しぶりだな、千鶴」
「はい、お見舞いできなくて申し訳ありません」
「オレはもう大丈夫。ほら、腕も上がる……痛」
桃太郎は左肩の痛みに顔をしかめると千鶴が悲鳴を上げた。
「だ、大丈夫ですか!」
「若、やはり本調子では……」
「大丈夫だって。そう心配するなよ」
桃太郎は千鶴に笑いかけ、優しく頭を撫でてやった。千鶴はくすぐったそうに微笑んだ。それを微笑ましく思ったが、不意にその手が止まった。桃太郎はゆっくりと手を離し、謝罪した。
「ごめんな」
「え?」
くりっとした大きな瞳が見開かれる。
「巻き込んだこと。せっかく海見せてやったのに、いろいろとやらかした。ごめん。……千哉にも謝んないと」
本当に迷惑をかけたと思う。
千哉も千鶴も本来なら人間の争いに巻き込むべきではない。彼らは『鬼』であり、人を見限ったから山の奥地で暮らしているのだ。
やはり軽率だったのだ。
「桃太郎様は優しいお方です」
そのとき、千鶴が桃太郎の手に触れた。驚く桃太郎を見つめて、千鶴は優しく包むように手を握る。
「あなたと出会えて、少なくともわたしは後悔などしていません。あなたと出会えていなかったら、わたしも兄も周囲のことを知らず一生を終えていました」
千鶴は微笑み、握った桃太郎の手を両手で包み込んで自分の頬に当てた。
「あなたが生きてくれてよかったです」
「お、おう……」
彼女は目を閉じて、うっとりとしていた。
そんな千鶴に桃太郎はどぎまぎした。
「あの、よろしいでしょうか」
「へっ?」
声に千鶴が振り返った。その拍子に桃太郎は手を離される。そこには五右衛門がジト目でこちらを眺めていた。
「えっ、これは! その……!」
千鶴が懸命に言い訳をしようとする中、五右衛門は肩をすくめた。
「モモ様、逢い引きならせめて部屋でやってください」
「あっ、あああっ、あ、あっ……!」
五右衛門の言葉に千鶴は顔を真っ赤にした。
後ろ姿だけでもわかるくらい、動揺する千鶴に桃太郎はからからと笑った。
「何を笑っている? 貴様は」
突然殺気が周囲に満ちた。その殺気の主は五右衛門の背後にいた。五右衛門は思わず跳び退り、距離を置く。そこには拳を震わせた千哉がいた。
「なんだ千哉」
「なんだ、ではない。貴様、怪我人の分際で千鶴に軽々しく触れおって……!」
「いや、もう怪我治ってるし」
千哉の顔は怒り一色であった。ずかずかとこちらへ歩み寄り、ぐいと顔を落としてきた。
「死ぬ覚悟はできているな?」
「あー、千哉さん。ちょっと落ち着こうよ。ね?」
「黙れ、害虫」
「もうっ、喧嘩しないでください! 桃太郎様は怪我人なんですよ!」
一触即発の二人の間に割り込んだのは千鶴だ。彼女はむっとした様子で千哉に詰め寄った。千哉は妹の表情に狼狽え、言い淀む。
「ま、待て千鶴。これもお前のため……」
しかし千鶴は柳眉を逆立てて、言い捨てた。
「そんなお兄様は嫌いです」
その一言で場が凍りついた。
ふんと可愛らしく鼻を鳴らして、千鶴は桃太郎に笑顔を向けた。
「お茶でも淹れてきますね」
千鶴はあっという間に廊下の角に消えた。
「……あーあ、やっちまったな」
しばらくして、桃太郎は冷たい目で千哉は眺めた。彼は未だに驚愕の表情をしたまま固まっている。
「『大』はついていなかったけど、『嫌い』って言われたな。お兄さん」
笑って言うが千哉から反応はなかった。五右衛門が襟足を掻いて呟く。
「これって再起不能ですよね?」
「ほっとけ、いつか再生する」
そう言うと、忠治は深いため息を吐き、五右衛門は首を捻った。
やがて、千鶴が美羽を連れて帰ってきた。美羽は廊下で凍りつく千哉を見てぎょっとした。
「……何があったかは察しがつきました」
「……わからないほうがいいと思うぞ、私は」
「そんなことより、おやつにしましょ」
当事者である千鶴はにこやかに言った。彼女の持つお盆には湯呑と大福餅が並んでいた。
五右衛門が喜んですぐさま腰を下ろす。その後に忠治と美羽が座った。
暖かい縁側で菓子を食べるのは心地よい。桃太郎は皆の様子に満足げに微笑んだ。それから大福餅を手に凍結した千哉に近づいた。
「ほら、おまえも食えよ」
「なっ、敵の施しなど……」
「いいから」
「む……」
大福餅を押しつけると千哉は仕方なく受け取った。桃太郎は千哉の隣で大福餅を頬張る。甘い餡子が口の中で広がり、にやついてしまう。
「……今回みたいなことは二度とないように頼む」
すると千哉が呟いた。
桃太郎は大福餅を咥えたまま振り返った。
「……わかってる。もう巻き込まないよ」
千哉はフンと鼻を鳴らして大福餅を口に放り込んだ。不機嫌そうな彼を桃太郎は見つめた。
「わかってるから、鬼と人は違うって。オレにとっておまえは友達だもんな」
それを聞いて千哉が淡く笑う。
「友、か……悪くない」
「え?」
「お前は俺が見込んだ『人間』だ、最後までつきあってやる。あと、千鶴にこれ以上近づくな。約束だ」
「おまえ……ほんと千鶴一筋だな」
桃太郎は呆れて千哉から目を離し、美羽に茶を頼んだ。
四月も終わり。庭の、桃の木の花は小さくなっており、緑色の葉が目立ってきた。
空は晴天。雲一つない。
いつまでもこんな日々が続くといい。しかし物事に永遠はない。いつかは壊れてしまうだろう。
それでも桃太郎は願う。
一色の人間として国も民も、鬼たちも守ってみせる。誰に否定されても、自分には支えてくれる友人たちがここにいるのだ。
目に映るものが鮮やかに見える。
未来は輝いている。
了