親友以上恋人未満
駄文ですが、読んでやって下さい。
「俺さ、明日引っ越すんだ。秋にはすぐに言おうって思ってたんだけど…タイミングが掴めなくて。ごめんな」
「えっ・・・。まぁ急で驚いたけど…そっかぁ、祐くん引っ越すんだぁ。寂しくなるね。てかまた秋って呼んだ!秋桜て呼んでって言ってるじゃん。もう、小学生じゃないんだから…漢字、読めるでしょ!?」
突然の祐樹の言葉に、秋桜は泣くのを堪えてそれだけ答えた。
二人は近所に住んでいる幼なじみで、なんでも話せる存在だった。なのに祐樹が、引っ越すことをギリギリまで言わなかったことに、秋桜は少なからずショックを受けていた。
でも、そんなことを言って祐樹を困らせたくなかった。
辛いのは祐樹も一緒なはずだから…。
秋桜が表情を曇らせると祐樹は、いつもの綺麗な笑顔で秋桜に言った。
「だって、呼びやすいじゃん。秋もいい加減、俺を祐くんなんて言うの止めろよな。ガキみたいじゃん」
「そ・れ・は、お互い様ぁ。フフッ」
その日は、暗くなるまで二人で話していた。時間が経つのも忘れて、楽しい時間だけが流れた。
家に帰り、秋桜はお母さんに祐樹のことを話した。
「あらっ知らなかったの?今日の朝、お母さんが挨拶に来られたのよ。なんだぁ、知ってるものだと思ってた」
「今日、祐くんから聞いたよ。お父さんの仕事の都合だって…。それで明日、何かプレゼントをあげたいんだけど…なんかないかなぁ」
お母さんは暫く考えるような仕草をして、すぐにパァッと表情を輝かせた。
「じゃぁこの小瓶、試してみない?実は、昨日頂いたんだけど…なんでも、笑顔になれるんだって♪いいと思うんだけどなぁ」
「そんな、子供騙しでしょ!?」
「お菓子に入れてあげたら、効果があっても無くてもいいじゃない!?物は試しよ。別に毒とかじゃないんだし」
秋桜は結局、お母さんに説得されて、ケーキを作って行くことに。
数時間後……。
「出来たぁ!!!後は、この小瓶の液体をかけて…と。よし!」
なんだかんだ言いながらも、秋桜は祐樹の大好きなチョコレートケーキを作った。 そしてそれを、綺麗にラッピングして冷蔵庫に保存。
「明日ちゃんと渡して、笑顔でバイバイ出来ますように」
そう言って、秋桜は眠りについた。
同じ頃、祐樹もベッドに入ると「明日、秋が泣きませんように」と願って、夢の中へと入っていった。
運命の日。
祐樹は朝に出ていくと聞いていたので、秋桜は早起きをした。そしてすぐに、祐樹の家に向かう。
祐樹は既に引っ越しの準備を終え、トラックに荷物が運ばれるのを眺めていた。
「祐く〜ん。これ、昨日焼いたの。笑顔になれるように」
「おっサンキュー♪俺も、これ秋に。お前、泣き虫だからな。お守り代わり」
秋桜が袋を開けると、パワーストーンが入っていた。
その間に祐樹は、ケーキの箱を開けていた。
「うわっこれ、俺が好きなチョコレートケーキじゃん!?流石、幼なじみ。分かってる」
「へへ〜でしょう!祐くんも私がこういうの好きだから、買ってくれたんでしょ?」
祐樹は既に、ケーキを頬張っている。まるで子供のようだ。その姿を見て、秋桜は泣いてしまいそうになった。
「……んっまぁな。ほら、秋も食えよ。意外とイケる」
祐樹がケーキを一口に切って差し出す。
「意外とは失礼だし。パクッ……うん。さっすが私」
自然と笑顔が零れる。あの小瓶は本物だったんだぁと、秋桜は他人事のように思った。
「祐〜そろそろ行くよ」
車から、祐樹のお母さんが呼んでる。別れの時間だ。
「んじゃ俺行くわ」
「うん」
秋桜は、また泣きそうになりうつ向く。
ポンッ
祐樹は秋桜の頭を幼子にするように撫でた。
「秋桜。俺、お前が笑ってる方が好きだ。だから、泣くなよ?」
「・・・・・泣かないし!てか泣いてないし。祐樹も私と離れるから寂しいんじゃないの!?」
秋桜は泣くのを堪えて強がりを言った。
本当に寂しいのは、秋桜の方なのに・・・。
正直な気持ちを言えなかった。親友だから。
でも、初めて祐樹に名前を呼んで貰えて嬉しかった。
それは祐樹も同じ気持ち。
「うん、寂しいよ。でも写真とか携帯あるし。俺、また戻って来るし」
「……っそっかぁ。私、いっぱい写真送るから。祐樹のこと忘れないから!!」
「俺も!一生、親友な!」
祐樹は言って、車に乗り込んだ。
「うん。一生・・・親友だからね!!!」
そう言って、二人はいつまでも手を振っていた。
二人は半泣きで…それでも笑って手を振っていた。
私も、祐樹の笑顔が大好きだよ。だから、ずっと笑っててね。