表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

古びた書店の怪奇

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/06

雨宿りの最中に遭遇した異様な「何か」——。

どこか懐かしく、そして恐ろしい、夏の小さな怪談をお届けします。

静かな図書館の片隅で、涼やかなハサミの音に耳を澄ませてみてください。

通り雨のようだった。書店の中から出られずにいた。傘を持っていなかったからだ。本棚の間から漂う湿った紙の匂いが、閉じ込められた焦燥感を少しだけ和らげていた。外は激しい夕立。傘を持っていない俺は、自動ドアの向こうに広がる白い雨の壁をただ眺めるしかなかった。

ザー、と世界を塗りつぶす雨音の隙間に、ふと別の音が混じる。

シャリ、シャリ、シャリ。

かき氷を削るような、どこか懐かしい涼やかな音。最初は外の露店かと思ったが、音は背後の、文庫本が並ぶ暗がりから響いていた。

振り返る。棚の奥、照明の届かない隙間に、黒い人影が立っていた。

影は手に持った大きなハサミで、己の腕を削り落としている。削られた薄い皮膚が床に落ちるたび、あの涼しげな音が響く。

「……あ、夏だねえ」

影が顔を上げた。目も鼻もない平らな顔から、かさついた声が漏れる。

「暑いから、削らないと。でも、誰も見てくれないと、僕が夏だったことすら忘れられちゃうんだ」

影がハサミを向ける。次の瞬間、俺の耳元でシャリと音がした。

首筋に走る激痛。視界が急速に赤く染まっていく。

「君も一緒に、夏の音になろうよ」

外の雨音はいつの間にか止んでいた。

店内にはただ、涼やかで残酷な、ハサミの音だけが響き続けていた。

日誌』を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

雨宿りの日に出会った異様な「何か」や、静かな書店に響く涼やかなハサミの音——。少し懐かしくてゾッとする、夏の怪談のような空気感を楽しんでいただけていたら幸いです。

最終話まで執筆を続けられたのは、ひとえに温かく見守ってくださった読者の皆様のおかげです。物語の余韻とともに、皆様の夏が少しでも涼しく味わい深いものになりますように。

また次の物語でお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ