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お手紙

 エルへ


 昇進おめでとう!

 外務庁副長官だなんて、あなた、魔導院で研究していた時からどんどん離れていっているのね! でも、あの頃から交渉ごとは得意だったし、外務庁のお仕事をしていると想像したら、すごく似合っていると思ったの。絶対、有耶無耶のうちに交渉を成立させているでしょ? すごい才能よね。私も、ほんの少しでいいから、そういう能力が欲しいわ。いつも、気がついたら全く別の話になっていることが多いのよね。なぜかしら?

 そうそう、先日、魔導院の結界を直しました。詳しい話はできないけれど、みんなで話し合いをして構造を練っていく工程って、とても楽しいわ! 全体像は、まったくわからないのだけれどね。セルジュ様は、よくあのバラバラの希望をまとめ上げるわよね。今回は、ユリアス様も、何か意見を言っていたそうよ。教えてくれなかったけれど。セルジュ様が、遠い目をしていたわ。何があったのかしら?

 そんな感じで、講師みんなで、楽しく結界を張り終えたわ。それでね、実はまた、こっそりと、少しだけ細工をしたの。今回は、お兄様もいらしていなかったから、誰にもバレていないと思うわ。あの結界の中はね、なんと……雪が降るのよっ! 気温が一定以下になると、数日に一度、1時間だけ、ランダムに雪が降るように設定したの。もちろん、積もるような気温ではないのだけどね。私、雪が降る中を歩いてみたかったのよね。冬が楽しみだわ。

 そうだわ!この前、珍しい素材が手に入ったの。レクレムの実なのだけど、うまく殻が剥けないのよ。というか、硬いわ、これ。資料通りにやってみたのだけれど、なかなか綺麗に剥がれないの。エルなら、何か知らないかしら。知っていたら、いつでもいいからアドバイスをくれると嬉しいわ。

 それでは、今日はこの辺で。

 お返事、待っています。


 シシィより


***


 シシィへ


 手紙、ありがとう。それから、昇進のお祝いも。

 確かに、魔導院で勉強していた内容とは、全く別の道に進んでいるね。それもこれも、リュミエラ長官の指導のおかげかな。いつも言うけど、君に対する態度と、えらい違いなんだよ。君は、信じてくれないけれど。

 シシィは、交渉ごとは苦手だよね。でも、何だかわからないうちに、君のペースに巻き込まれてしまうのは、一種の才能だと思うけどな。ただし、着地点が意味不明だけどね。俺も、何度呆気に取られたかわからないよ。話が思う通りに進んでいかないんだ。もし、俺が交渉に苦労する相手がいたら、間違いなくシシィを呼ぶね。場が混乱しているうちに、こっちの思惑通りに進められると思うんだ。そのときは、頼んだよ。

 ああ、魔導院の結界のことは、噂に聞いたよ。国王が口を挟んだと言うこともね。さすがに、内容は極秘みたいだけど、まあ、なんとなく想像はつく。君絡みだろうね。たぶん、聞いたら俺も遠い目をすると思う。あいつは、シシィのこととなると、人が変わるんだ。鈍感なシシィくらいが、ちょうどいいと思うよ。でも、結界の細工か……どうやったの? バレないようにするのって、高難度でしょう? 他人の魔力の中に、自分の魔力を滑り込ませるんだよね。シシィの得意な、魔力を薄く細く伸ばしていくイメージかな。雪を降らせるってことは、結界全体に広げたんでしょう? 魔法陣を見てみたいな。今度、寒くなったら、雪を見に魔導院に行ってみようかな。遠くから見かけたら、手を振るよ。

 レクレムの実だったね。あれは、資料通りにして上手くいかないのは、当然だよ。王国の資料は間違っているんだ。レクレムの実は、南にあるベーテル共和国が産地なんだけどね、そこの資料によると、殻の表面に微弱な魔力を流して、内部の核が発する熱を吸収すると、一瞬だけ殻に隙間ができるんだ。そこに薄くした氷を挟み込むと、殻が一気に割れる。ただし、魔力を流しすぎると中の実が溶ける。注意してね。

 こちらは、相変わらず忙しい。だけど、ふと君を思い出すことは多いよ。

 また、近況を聞かせてほしい。

 

 エルより

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