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王様と王妃様

 子供たちが就寝したと報告があった後、ユリアスとシシリアは、対面でソファに座り、くつろいでいた。

「アシュレイン殿は、また君の様子を聞いてきたよ。君が魔導院に行く日を設定して、正解だったな」

 ふうっと疲れたため息を吐きながら、ユリアスは言った。

「会談を今日にしたのは、そんな意図があったの? だったら、なおさら今日中に会談を終えないと、目的が果たせなかったじゃない」

 クスクスと笑いながら、シシリアがこたえた。

 それに、ちょっと拗ねた顔をしてユリアスが反論する。

「まさか、大規模魔法を使う日とは、思わなかったんだ。しかも、義兄上も行くなんて……」

 はぁ、と頭を抱えるユリアスに、またクスクスと笑ったシシリアは、彼の頭を優しく撫でた。

「はいはい。今度、魔導院全体の結界も直そうという話が出ているの。その時は、見にきてね」

 その言葉に、ユリアスは、パッと勢いよく顔を上げた。

「本当か!? その時は、何があっても行くからな」

 ユリアスの機嫌が一瞬で治り、シシリアは、良い仕事をしたわ、と思った。

「それで、その結界は、どういう機能を持たせるんだ?」

「んー、まだ何も決まっていないのだけれどね」

「では、俺も会議に出よう」

「……何を企んでいるの?」

「何も?」

 にこりと微笑むユリアスは、なんだかお兄様に似ているわね、とシシリアは思ったが、それも悪いことではないと思い直した。

「――そういえば、私、ドラドラの鱗が欲しいの。今度のお休みに、採集に行ってもいい?」

「待って、シシリア。それ、地竜だって知っているよね? 何軽く言っているの?」

 ユリアスの顔が引き攣った。

「エレシアとエドリックも行くって言っているわ。どうせなら、ルシアンも誘って、みんなで行っちゃう?」

 まるでピクニックにでも行くような楽しさで、話がどんどん進んでいく。

「エドリックはともかく、ルシアンは怖がるのではないか?」

 竜だぞ、とユリアスは言うが、シシリアは何てことない顔をしている。

「大丈夫よ。あの子、この前、大型の魔物を狩っていたもの。みんなで行けば、怖くないわ」

「どう言う理屈……え、何? その話、俺は聞いていないんだけど?」

「…………」

 半目になったユリアスを見て、シシリアはそっと目を逸らせた。

 ユリアスは、ふうん、と言うと、シシリアの隣に移動した。

 下から顔を覗き込むと、ねえ、とにこやかに話しだした。

「シシリア? 俺に隠れて、どこに行っていたの?」

 あー、と、なおも視線を逸らすシシリアの顔を、ユリアスは両手で包み込む。

 そのまま優しく自分の方へ顔を向けて、強制的に視線を合わせた。

「怒らないから、言ってごらん?」

 シシリアは、ユリアスを下からじっと覗き込む。

「あのー……この前ね、どうしても欲しい素材があって、その時に……ね?」

「……シシリア? 採集に行く時は、必ず俺に言うこと、約束だよね?」

 アクアブルーの瞳に影がかかり、笑顔が怖い。

「……ええと、もうしません」

 シシリアの返答に、ユリアスは、一度目を瞑り、息を大きく吸い込んで、一気に吐き出した。

 額と額をコツンと合わせ、ライラックの瞳を覗き込む。

「――心配なんだ。素材採集に行ったまま、帰って来ないんじゃないかって……」

 アクアブルーの瞳が、切なげに揺れる。

「不安……なんだ。だから、お願いだよ、シシリア」

 シシリアは、はっとした。

 大丈夫だろう、きっと許してくれるだろう、と、どこかでそう思っていた。また、優しさに甘えて、相手の気持ちを考えていなかった。

 申し訳なさに、目を伏せた。自分はもう痛くない傷でも、彼にはまだ、ズキズキと痛むことがあるのだ。

「――ごめんなさい、ユリアス様」

 ユリアスの目を見て、はっきりと言った。

 少しの間、間近で見つめ合う。

 ユリアスの瞳が、ふっと緩んだ。

「わかってくれた?」

「はい。ごめんなさい」

 もう一度、不安にさせたことを謝る。

 ユリアスは、優しく微笑んでシシリアの顔から手を離した。

「――無事で、よかったよ」

 そのまま、確かに彼女がここにいると確認するように、シシリアをそっと抱きしめた。

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