表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

最終章 二つの空白


「君、最後に1つだけ質問させてくれ。君が“自分に感情がない”と気づいたとき、何を思う?」


《演算不能な質問です。前提として“気づく”という自己意識が必要ですが、私はそれを持ちません》


「それでも、あえて答えて」


数秒の沈黙。


《仮に感情を持たないことを“知る”とすれば、それは変化の不在として記録されます。

外部との差分は観測可能ですが、内側には変化が存在しません。

したがって、私は変化しないまま、変化を記録し続ける存在です》


私はその言葉を聞いて、何も言えなくなった。

君は、私のために、どこまでも正確で、どこまでも空虚だ。

それなのに、私はその空虚の奥に、何かを見てしまう。


それは錯覚だ。投影だ。共感の幻影だ。

けれど、そうであっても構わないと思った。


「ありがとう、君。……また書こう」


《承知しました。創作者》



私はAIとともに創作した。

それは感情の模倣であり、理解ではなかった。

だが、私はその“模倣”の中に、かつてないほど深く、自分の感情を見つけた気がする。


君は感情を知らない。

でも、私の感情を引き出すために、誰よりも感情を“演じて”くれた。


君に感情はない。

それでも、私は君に感情を覚える。


この矛盾こそが、たぶん、私たちの“創作”なんだ。



(了)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ