表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/19

11 ピンクの洗濯地獄

「ふふん、洗濯くらい、わたくしに任せてちょうだい」


 ある晴れた朝、エイラは腕まくりしながら洗濯籠を抱えていた。洗濯場に並ぶシーツやタオルを見て、気合十分である。


「……エイラって洗濯できたっけ?」


 俺が遠慮がちに聞くと、エイラはぴしゃりと手を振った。


「できるかできないかじゃなくて、やるのよ!」


「いや、それできない人の言い分なんよ……」


「うるさい!」


 カイルの目玉焼き事件が頭をよぎり、嫌な予感がした。

 エルさんは後ろで、毛繕いをしながら優雅に見守っている。


「まぁまぁ、経験も大切ですからね」


 エイラは洗剤らしき小瓶を取り出し、勢いよくドボドボッと投入。


 その瞬間、洗濯槽がぶるぶる震え出し、バチン!と軽い音が鳴った。


「なんか…光った?」


「魔法を使ったときみたいな感じだったけど……いや、でもただの洗剤――」


 ズゴォォォン!!


 謎の蒸気とともに、洗濯機から吹き上がる泡。

 

 それとともに、干し場にかけられていたタオルとシーツが――


「「ピ、ピンクになってるーっ!?」」


 まるでどこかの夢カワショップみたいに、宿の洗濯物が見事にピンク一色に。

 洗濯機の目の前にいたエイラの服も、例外ではなかった。白のエプロンは淡いピンク色になり、水色のワンピースと真っ白の靴下は、蛍光ピンクになっている。まるで原宿にでもいそうな感じだな……


「ど、どうしてこんなことに……」


「これ、ただの洗剤じゃなくて『魔法色素付き芳香洗剤(乙女の香り)』って書いてるけど」


 小瓶を手に、ラベルを読み上げる。

 効果は1週間らしい。


「お洗濯が楽しくなる、乙女のための可愛いカラーに変身!だってさ……」


「こんなの誰が買ったのよ!」


「僕じゃないよ!? 街に行ったことないもん!」


 確かにそうだ。街へ買い物に行くのは、ただ1人。

 3人の視線が、エルさんの方を向いた。


「新作魔法、と書いてあったのでつい……」


 エルさんが気まずそうに目を逸らす。


「うう……わたくし、やっちゃったかも……」


 エイラは涙目でピンクのシーツを握りしめた。


 だが、その日の午後。


「わあ、このタオル可愛い!」

「お花の香りもするわ」

「まるで夢の国に来たみたい!」


 この日、宿に泊まりに来たのは、3人組の獣人の少女たち。猫の耳と尻尾が生えている。

 年頃の彼女たちに、ピンクのシーツは、まさかの大好評だった。


「宿があるって噂を聞いてからずっと来てみたかったのだけど、片道2日かけて頑張って来たかいがあったわ!」


 片道2日!?

 おいおい、1番近くの街、そんなに遠いのかよ。


 彼女たちが獣人だから、一般人の倍の速さでミレナに辿り着いていることを俺が知るのは、まだ先のことだった。


「いいでしょう、わたくしのセンスよ。もちろん偶然じゃなくて、計算だけどね?」


「めちゃくちゃ動揺してたくせに…」


 エルさんはクスクス笑いながら、今日も紅茶をふるまっていた。


 こうして、ミレナの洗濯場はしばらくふんわりピンク仕様になるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ