記録Ⅰ : 白の邂逅
※この物語に主人公はいません
「きゃはは!…」
「ははは…」
斜光が照りつける晴れた日。
木々に囲まれた木材建築の質素な家。その庭で、ふたりの少年が無邪気に走り回っている。
少年たちの顔は霞んでいてよく見えない。
ただ、ふたりを照らす陽射しと、緑の青々しさだけが鮮明に写る。
そこで映像は終わった。
俺はこの“夢”を二度と忘れることはない…。
一. ホワイト ‐‐‐
「は!?… 何だったんだ?」
気持ちの良い朝日が昇っている。太陽に照らされた部屋で少年は目覚めた。少年の額には少し痛みがある。
「なんだか夢にしては、はきっりしすぎていたような気が…あぁぁ!もう思い出せん!!
きっと俺が世界一のトレジャーハンターになるという神様のお告げだったに違いない!
はぁ〜、やっぱり俺は選ばれた男だったんだ!」
少年は頭の片隅で、わずかな違和感を感じたが、彼特有のポジティブな性格で、それを払った。
「そうこうしていられない!とにかく出発だ!」
少年は部屋を出る身支度を、眠気を誤魔化しながら大忙しに始める。
「エモジオードを見つけて世界一のトレジャーハンターになるには、まず仲間を探さないとな!
と、言いつつまだ誰も仲間見つかってないんだよな…まぁまだ仲間探し一日目なんだけど…
でも!今日は神様のお告げみたいなのも受けたんだから!絶対に見つかるに決まってるよな!一日で見つかったらそれは凄いラッキーだ!」
少年は身支度を済ませると早々に部屋を後にした。
彼はホワイト=アモーレ。 世界に4つ、散在しているといわれるエモジオードを見つけ出し、世界的なトレジャーハンターを目指している。今日は、まだ17歳の彼が世界中を旅する予定の記念すべき1日目である。
"ぐゔぅ〜〜〜“
「やべ、急いで出てきたら何も食べてないし、めっちゃ腹減ってるわ…
仕方ない、仲間を見つけるついでに朝飯でも食べに行くか!」
ここピアコローレ城下町では毎朝路上での出店が盛んに行われている。そこには食べ物から骨董品まであらゆる系統の品物が並び、国中の商人がその腕を振るっている。同然、この通りは国の中でも人通りが特に多く、人材探しには最適な場所というわけだ。
「そこの人、こんなのはどうだい」
「今なら安くしとくよー、見てって」
まだ朝も早いというのに、通りには出店を営む商人たちや通行客の声が飛び交う。
「おお!美味そうなもんがたくさんある!どれがいいかなぁ…でも、金もあんまりないしなぁ…」
「 あ、あのぅ…。こ、このカップどう…ですか?」
突然、からだの細い少年が話しかけてきた。背丈も年も、ホワイトと同じくらいに見える。だか、その手にあるカップは、意外にも美しい宝石らしいもので宝飾されていた。
「キレイなカップだなぁ!だか…すまない、今はカップを買うつもりはないし、持ち合わせもない…他をあたってくれ。」
ホワイトは少年を振り切った。少年の顔がみるみる希望から絶望に変わる。この場を立ち去ろうとするホワイトに向かって、やや食い気味にそして弱々しくも強い声で少年は言った。
「僕には親も、住む場所も、お金もない…!神様に見捨てられたんだ…あなた、よりも…ずっと…。このカップを買ってもらわないと!僕は…ぼくは…」
「だから、それはわかるけど、何かしてやれたらと思うけど、俺じゃなくてもいいだ…
「"あなた“じゃないとだめなんだ…」
少年は下を向いたままはっきりとそう言った
ホワイトは立ちすくんだ。それと同時に、なぜだか分からないが、ホワイトの優しき心が彼の頭を支配した。
「わかったよ。そのカップを買おう」
「っ!、本当ですか!?あ…ありがとうございます!これで数…日は生きていけます!貴方は、僕の命の恩人です!」
少年はそう言いながら、ホワイトに何度も頭を下げていた。それからホワイトは少年からカップを買い、今度こそここから立ち去ろうとした。しかし、途端にホワイトは少年のことが気がかりになり、こんなことを聞いた。
「最後に、君の名前を聞いても良いか?」
「ネ…ネロ…です…!ネロ=エンテ」
「ネロ…そうか、俺はホワイトだ!俺はこんなことしかできないけど、君の人生が素敵なものであることを、願っているよ!」
「はい!本当にあ…ありがとうごさいました!」
ホワイトはそう言って再び仲間探しを始めた。
「あ、…結局、朝飯の分の金も残ってねぇぇぇーーー!」
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「はあぁぁぁ〜今日の収穫はなしか…まっ、初日だから仕方ないか」
すっかり夜になって、ホワイトは外に出た甲斐なく、自室に戻っていた。
「そういえばっと、収穫といえば、金はほとんどなけなったし仲間ではないが、キレイなカップを手に入れたつだった」
ホワイトはそう思うと、カバンからカップを取り出し、眺めてみた。そこでホワイトはあることに気づいた。
「このカップに装飾された綺麗な宝石…、明らかに普通のそれとは違う…」
ホワイトは急いで部屋から駆け出した。
向かった先は勿論…。ーーー
「おいネロ!っ、ネロ!」
ネロはあの場所で、あの時と同じように商品を売っている最中だった。
「あ!先程の、ホワイトさん、…こんな時間にどうしましたか?」
「俺とトレジャーハンターを目指さないか!エモジオードを見つけ出す旅をするんだ」
「え!?あの…!?何ですか、急に!それに、な…なんで僕なんかと?エモジオードだなんて…」
「さっき買った…このカップ!この宝石はどうしたんだ!?」
「あっ、こ、これは…実は、僕もトレジャーハンターに憧れていて、それで…ちょっと探しに出たときに見つけて、とても綺麗だったもの…です。あの…それがどうして…」
「たまたま見つけたのか?」
「いや、そのぉ…なんとなく宝石がありそうな場所がわかるというか…でも!その…見つけたのはこれだけで、あの時が最初で最後です、そんな時間あったら、お店してますけど…」
「っ!?、やはりそうか…。君には才能がある。これは俺にもわかる。俺が見た中で1番美しい。まさに最高峰の宝石だ!…
ちょうど仲間を探していたんだ。だから、…一緒にエモジオードを見つけに行こう!」
「・・・わかりました…」
「えっ!?いいのか!?ほんとに?…」
「はい!ぼ、僕も、あなたが信用できる人だと思ったので。それに、やっぱり、僕には住む場所も…何も…無くて、…それで!貴方の役に立てるなら、本望です!」
「ありがとう…よし!じゃあ早速俺の家に来い!来い来い!!いえーい!」
そう言うとホワイトは、宿に向かって喜びを胸に走り出した。ネロの手を引きながら。
ネロも後を、必死に握った手を離さないように走った。
その口には、"これまでのものとは違う“笑みを浮かべて…
「あの、それでホワイトさん、は…その…認定証を持っているんですか?」
「ん?なんだそれぇ?」
「え、だって、トレジャーハンターはそもそも、認定証がないと活動できないじゃないですか…」
「は?え、…はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?」
そして、ネロの口は普段の穏やかで弱々しい笑みに戻った
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世界に名を残したトレジャーハンターの一人であるホワイトの冒険譚は、ここから始まった
同時に、ネロの人生という名の歯車も…。
そして、ホワイトは何も知らなかった…。
はじめまして。kinoPと申します。
初制作、初投稿です。文学ましてや「小説家になろう」に関わるのは人生で初めてで、拙い文章になってしまうことをご了承下さい。(実際、前書きと後書きの使い方もわからない╮(╯_╰)╭ )
実は本作品、結末までのプロットがすでに完成しております。結構長い間考えました。
どうぞ宜しくお願いします。
おそらく他の作品に比べると一話毎の文章量が圧倒的に少ないですが、その分内容を凝縮し、無駄な文は一つもありません
そして、私生活もあるのでちょー不定期です!