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プロローグ

 大陸の西部中央に、ラームハット王国はある。

 その王都ロートリアに位置する王城の、とある会議室。


 奥に座る国王、横に控える王太子、王の前で立つ宰相の前で、当事者達が左右に分かれて座っている。

 左側には、先々代国王の王弟が興した、海洋交易と外交を司るルハーン公爵家。

 右側には、数十年前に王国に帰属した遊牧民を束ねる、外科医学の発展を支えるカダイフ伯爵家。


「申し立ての前提を確認する。ルハーン公爵家の三男ファルネウスが、カダイフ伯爵家嫡女コーネリアへの婿入りをする前提で、王命による婚約を結んでいた。しかし、ファルネウスのカダイフ家入りが難しくなった」


 王の座る席の前で、宰相がこの王前協議……かつて出された王命に対する、当事者間の話し合いの前提について説明する。

 このラームハット王国は、特段の事情があれば女性が爵位を継ぐ事もできるが、基本的には男性が継ぐと定められている。

 しかし、カダイフ家は諸事情により、血を継ぐのが女性のみになってしまった。

 数十年前のカダイフ家の帰属に尽力したのも王家である。それが、カダイフ家自身に落ち度のない理由で国内での立場が下がってしまうのを危惧した王家が、ルハーン公爵家に後ろ盾になって貰うため両家の婚約を王命で出したのである。

 ところが、婚約から数年経ったところで、ルハーン公爵家がその内部事情からファルネウスの婿入りに難色を示し始めたのだ。


「ファルネウスを公爵家の事業後継として手放せなくなった為、コーネリア嬢をルハーン公爵家へ嫁入りさせて欲しい、と言うのがルハーン公爵家側の申し立てである。相違ないか」


 宰相の言葉に、ルハーン公爵オラトリオ、嫡男バラントが頷く。

 当事者の三男ファルネウスは、末席で黙ったまま控えている。


「一方、カダイフ家側の申し立てである。カダイフ伯爵家としては、王命が出されて以来、ルハーン公爵家との信頼関係は無く、この王命による婚約を解消して欲しいというものである。相違ないか」


 カダイフ家側に座るのは、当主一人。

 当事者である嫡女コーネリアは、この場には居ない。

 宰相の言葉に、ルハーン家側の末席に座るファルネウス、ただ一人驚いた表情を見せた。


 しかし、カダイフ伯爵家当主ルピアは……宰相に頷かなかった。


「当初は、そのように申し立てましたが……取り立て頂いてから五十年、この国は私共を受け入れず、技術だけを吸い上げ使い捨てようという魂胆の程は良く分かりました。ならば我々は何の意味のない伯爵位を返上し、我々の全てを引き上げさせて頂きます」


 奥に座る国王含め、発言したカダイフ女伯爵以外の全員が驚く。


「な、何を言っておる!」


 誰も想定していなかった返答に、王太子がカダイフ女伯爵へ詰問する。


「書面が必要でしたら、また後日お送り致します。それでは」

「ま、待て!」


 国王陛下も声を上げるが、カダイフ女伯爵は立ち上がり礼をして、会議室を出て行く。



 これを切っ掛けにラームハット王国内に大きな騒動が起こるとは、この時は、誰も想像し得なかった。


お読み頂きありがとうございます。


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