第2話 ニア・レドメイン
食堂に向かってあったのは今までの僕の生活からは想像できないような朝ごはんで、これを毎日食べれると考えたら護衛係になってよかったと思う。まぁこんな豪華なものを食べさせてもらえる上にちゃんとした寝床も用意してくれてるんだから仕事を怠りはしない。
「冷めてると思うので温め終わるまでお待ちいただけますか?」
「あぁ、大丈夫です。機械なんて使わなくても魔法で温まりますから」
火、水をいい感じ混ぜて目の前にある料理を程よく温める。シャロさんが驚いていたがどこに驚く要素があるのだろう、あそこの研究室の人は全員できていたしそこまで難しいものでもない。
「お嬢様のも温めましょうか?」
「あ、えっと、お願いします」
僕はお嬢様のご飯も温める。シャロさんも一緒に食べないかと思ったが、シャロさんは従者だ、お嬢様と同じ食卓を囲めるはずは無い。じゃあ僕が今一緒に食べていることもおかしくなるとい思うが、護衛係というのを考えたらご飯を食べてる時も一緒にいた方が守りやすいもんね。
なんの卵か分からないが半熟で、ベーコンと一緒にトーストの上に乗っていて、今まで食べたご飯の中でいちばん美味しかった。
とりあえず朝ごはんを食べた事だし、例のものを作りに行くとしよう。
「錬金台ってどこにありますか? ちょっと作りたいものがありまして」
「その物によりますね」
「お嬢様に危険が迫った時に僕へ知らせる指輪です。寝ているときだったり、僕が一緒に入れない時もありますから」
材料は全て教授から貰ってきたのであとは魔法を組み合わせるだけなのだが、一つ問題がある。指輪、指につけるものだが僕はお嬢様の指の大きさを知らない。
「ロイド様は私たちの知ってる魔法より遥か上の魔法を知っているみたいですね。とりあえず案内しましょう、錬金室はこちらです」
錬金室に案内されると、僕が知ってる中でも最高品質の錬金台が置いてあった、さすが公爵家。
「私はお嬢様の方に向かいますので何か問題があれば私をお呼びください」
「ありがとうございます。申し訳ないんですけどお嬢様の指のサイズって分かります? 普段から身につけていないと意味が無い物でして」
「ならお嬢様が食べ終わりましたらこちらにお呼びしますね」
形は魔法を組み合わせるまでは変えれるしとりあえずお嬢様が来る前に大体の形だけでも作っておこう。研究室の品質の悪い錬金台で何回も作ってきたのでこの最高品質の錬金台で失敗することは無いだろう。
鞄の中から材料を全て錬金台の上に出していく。普通に作ってあとからお嬢様に合うように色々装飾とかを後付けしていこう。
「お、ちょうど良かった。大体の形ができたので1度つけて貰えませんか?」
「わ、分かりました」
起こした時に見た指のサイズから予測で作ってみた……って今の発言変態っぽいな。相手はまだ王立学校に入学していないみたいだしこれじゃあロリコンって言われてしまう、特にあいつから。
「サイズはこれで問題ないですね、ずっとつけていてもらいたいので痛くなように綿を入れときました。あと、見た目を変えようと思えば変えれますけどどうします?」
「じゃあこれを指輪に着けて貰えますか? 私の1個上の友達から貰ったものなんです。その人は王立学校に行っちゃってしばらく会えないからと」
「なるほど、ならそうしましょう。でもお嬢様も来年になったら王立学校に通えるじゃないですか、すぐ会えますよ」
王立学校にはもちろん入るための試験があるのだが貴族の子は幼少期から教育を受けてきているし筆記は問題ない。実技は人によるが大体の貴族は落ちることは無い。
僕に関しては平民だが王立学校の試験を受ける時にとある貴族にバカにされたので腹いせに筆記でも実技でも満点を取ってやった。
「で、でも私が試験に落ちちゃうかもしれないんですよ」
「王立学校に通っていた僕から1つ助言しておきましょう、公爵家ともなれば試験に落ちても特別に入れられることなんてよくあります。貴族は筆記で詰まることはないので、1回僕がお嬢様の魔法を見ていいですか?」
話しながら完成させた指輪をお嬢様に渡して僕は周りに被害が出ないように庭まで移動した。
「確か公爵家には相伝の魔法があったはずです、それを僕に向かって打ってみて下さい」
「それだとロイドが……」
「大丈夫です、完成された相伝魔法の威力じゃない限りは打ち消すか、軽減できるので」
僕は王立学校を次席で卒業、つまり僕より上の人間がいる、それが僕との腐れ縁でもあるレイン・ヴァイス。入学試験の時に僕を煽って来た張本人で、その時は僕が1番だったが卒業の頃には抜かされていた。
僕が無効化や軽減を出来ずに食らう魔法と言えばレインの相伝魔法くらいだ。まぁ無効化できるのは中級魔法までだし、大体は軽減するだけなので避ける。
「それじゃあいきますね、【氷虎】!」
「その歳にしては十分な威力ですね、まるでレインの一撃を受けてるような気もします。なるほど、これなら実技も問題は無いでしょう」
「あ、ありがとうございます! それでなんですけど、空いてる時間があれば私に魔法を教えてくれませんか?」
「もちろんいいですよ」
護衛係兼、先生になったところで僕は当主から呼び出しが来たとシャロさんに知らされたので向かうとしよう。その間は元護衛係のシャロさんがお嬢様のそばに居ることになった。
僕より護衛係歴が長いのだったらお嬢様も安心できるだろう。