第1話 とりあえず教授は許さない
僕は今、公爵家であるレドメイン邸に向かっている。
何故こんなことになったのかは、僕が学校を卒業する1週間前に遡る。
§§§
「ロイドくん、君をレドメイン公爵息女の護衛係として推薦しておいたよ」
「あなたを今ここで燃やしても問題ないですか?」
なんてことをしてくれたのだろう。僕の考えでは普通にギルドにでも入って依頼を達成して平凡な暮らしをしようと思っていたのに公爵家息女の護衛係に推薦しといたって……洒落にならない。
「君の功績を考えたら許されそうだから怖いね……」
「功績?」
「いやこちらの話だ。君は卒業すれば住む場所が無くなる、いくらギルドに入ると言っても住む場所がなければどうにもならないんじゃないのかい? 逆に護衛係になれば衣食住は全て揃う、君にとっても悪くない条件だと思わないか?」
確かに今の僕は王立学校に奨学金で入って、住むところも学校の寮、食べ物に関してはまともなものをあまり口にしていない。そんな僕からして衣食住が全て揃うというのはとても魅力的な話だ、だけど公爵家息女の護衛係っていうのが問題なんだよなぁ……。
でも実際僕が安定した暮らしを得るには護衛係になるという選択肢かないのは分かっている。
「というか、僕は戦争に出たことはありませんし、僕の他にもっと実践経験が豊富な生徒は居たでしょう?」
「君は戦争を経験していなくとも他の人間を凌駕する実力があるだろう? そうだ一つ言っておこう、戦争が終わった理由はとある一人の男が無差別に兵士を燃やし尽くしたからだ」
「それがどうかしたんです?」
「人は魔力を使い切った時に意識が途切れ記憶を失う、あとは自分で考えてみるといい」
教授は、僕が戦争に出て無差別に兵士を燃やし尽くした本人だと言いたいのだろうか? いいやそんなことはありえないはずだ。魔力切れで戦争に行った時の記憶が無くなったとしても出兵が決まった時の記憶までなくなるなんでおかしい。
「それじゃあ僕は準備してきます、僕に護衛係になる以外の選択肢は残ってなさそうなので」
§§§
そんなことがあって僕はレドメイン公爵家に向かうことになった。
「ロイド様、到着しましたらまずはお部屋の案内をさせていただきます。その後は自由にして構いませんよ」
そして公爵家に到着し、僕がこれから過ごしていく部屋に案内されたあと公爵家の中にある部屋を案内してくれることになった。というかこれだけ大きい建物ならどこになんの部屋があるか覚えるのが大変じゃないのかと思う。
「ここがお嬢様の部屋なんですけど……まだ起きてませんね。申し訳ないんですけど、起こしに行ってくれませんか? 私が起こしても中々起きないものでして」
「あのぉ、これで僕が起こして怒られるなんてことは無いですよね?」
「警戒しすぎですよ、貴族も当主じゃない子どもはだいたい平民と変わらない感性を持ってるんですから。それにお嬢様は貴族の中でも気が抜けてると言うか……ダラダラとしたお方なので安心していいかと」
貴族と言えば『君のごときが!』とかそういうことを言ってくる人達ばかりなのかと思っていたが案外そんなことは無いらしい。とりあえず護衛係になるんだし挨拶も含めて起こしに行くとしよう。
「えっと、新しく護衛係になったロイドと申します……。お嬢様、朝ですよ、そろそろ起きてください」
「シャロ……あと5分だけ寝かせてください」
「僕はシャロさんじゃないですよー。
そのシャロさんから起こして欲しいとお願いされたので」
本当に中々起きない……。貴族でも子どものうちは平民の感性と変わらないというのは間違いじゃなかったみたいだ。
僕としては気持ちよさそうに寝てるしもう少し寝かせてあげたいのだが後ろの恐らくシャロさんから起こせという圧がすごいの体を優しく揺らすことにした。
「おはようございますシャ、ロ?」
「おはようございますお嬢様、新しく護衛係に任命されたロイドと申します」
「あ、あれ今日って来る日でしたっけ……?」
「そうですよお嬢様、早速恥ずかしい部分を見せてしまいましたね」
シャロさんがそう言うと枕に顔を埋めて何やら悶えている。なんか、こういうことを思うのは失礼かもしれないが貴族の中でも上の立場である公爵家の息女であるとは思えないほど子どもみたいだなと思う。
「えっとぉ……ニア・レドメインです。これからよろしくお願いしますねロイドさん」
「ロイドでいいですよ、こちらこそよろしくお願いしますねお嬢様」
「じゃあお嬢様は早く服を着替えて食堂にお越しください。ロイドさんも朝ごはんはまだでしょう、折角ですのでお嬢様とお食べになられては?」
初対面からハードルが高いなぁ……。まぁ朝ごはんを食べてないのは事実だしお嬢様と仲良くなるためにもこれは承諾しておいたほうがいいだろう。
「僕なんかで良ければ是非ともお願いします」
そして僕はシャロさんに案内されて食堂に向かった。
「新しい護衛係の人が男性だなんて聞いてません……。私が悪いんですけど、早速恥ずかしい姿を見られてしまいましたぁ……でも、優しそうな人でした、今までの男性達と違って」