表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
旅する酒場の魔法使い 第一部  作者: アカホシマルオ
第三章 ペルリネージュ
92/123

遺跡とガーディアン

 

「相手のマナに限りがあるのなら、やり方がある」


「どうするの?」

 コリンには、何か考えがあるようだ。


「エレーナがゴーレムを倒した後、どうしたか覚えてる?」

「穴に埋めてしまった?」


「そうだ。この柔らかな砂に深く埋めてしまえば、あの重そうな金属製のゴーレムは簡単に上がって来られないんじゃないかな」


「じゃあ、深―く埋めなきゃね」

「そう。とっても深ーくね。その間に、僕らは逃げよう」


「おーけー、派手にやるよ」


 コリンが周辺を感知すると、他にも何体かのゴーレムが接近し、囲まれつつあった。


「あれ、ゴーレムが増えた」

「囲まれたね、コリン」

 ニアも気付いていた。


「素早く頑丈そうだから、壊すのは大変かもしれない。ただ、魔法を使わない物理攻撃だけなら、そんなに怖くはないよ」


「うん。それに、黙ってても向こうから寄って来るみたい」


「そうだね。このままクロウラーから引き離して、一気に始末しよう。あの基地や衛星からも見られないように、周囲を風魔法で遮るよ」


 コリンは、その作戦をクロウラーへと伝えた。



 コリンとニアは風で砂を巻き上げながら二手に分かれて逃げ回り、クロウラーから充分な距離を取った。


 頃合いを見て追い詰められたように二人が合流し、砂丘の上で互いに背中を預けた。


 二人を囲んだ合計四体のゴーレムは、どれも銀色に輝くメタリックなボディだ。


「ピカピカだねぇ。これも一つ土産に持って帰りたいんだけど」

「そんな余裕はないって。ニア、そろそろ来るよ!」


 四体のゴーレムが微妙にタイミングと角度をずらしながら、二人に迫る。その足取りは砂に深く沈まずに、滑らかだった。


 コリンの風魔法が作った砂の竜巻が、周囲を広く囲んでいる。その包囲の輪はゴーレムの接近と共に狭くなり、高く上空へと延びた。


 ゴーレムは、竜巻の中心にいる二人の元へ駆け上がる。


 だがその攻撃を待たず、二人の姿はその場から消えた。


 次の瞬間、ゴーレムの立つ足元の丘が、広範囲で消滅した。



 二人はコリンの短距離転移魔法で、上空へと逃れていた。


 そして竜巻の中心を落下しながら足元の砂丘を魔法で消し去り、大地に深い大穴を穿った。


 突然の出来事に、なす術なく奈落の底へと落ちる、四体のゴーレム。


 二人は空中に作った足場でその場に留まり、落下するゴーレムの姿を上空から確認した。


 二人はニヤリと笑う。


 ニアが「砂!」と叫ぶと、落下するゴーレムの上に大量の白い砂が出現した。


 同時にコリンは「水!」と叫んで、大量の冷たい水を作り、砂と混合する。


「「冷凍!」」


 重く湿った砂の塊が落下しながら急速冷凍されて岩のように硬くなる。


 それが岩戸のように穴を塞いで、ゴーレムを追って落下した。


 元々あった砂丘を超える大量の凍った砂の塊が、ゴーレムを穴の底へと押し潰した。

 その上に、ニアの造った白い砂が雪のように降り積もる。


 高く積み上がった白く輝く砂丘の頂上に、二人は降り立った。


「さすがのメタルゴーレムも、これなら簡単には動けないでしょ」

「うん、だといいけど。とにかく、早くここから離れよう」


 コリンに急かされ、二人は砂の上を軽やかに跳躍して、クロウラーへ向かった。


 その後クロウラーは無事に『オンタリオ』と合流し、再び地表を離れた。


 エランドの高軌道へと戻り、ステルスモードで地上の観測を続ける。


「もう、何なの、あのキラキラは!」

 シルビアは不満をぶちまける。


「あれが、ヴィクトリアにいたガーディアンなのか……」


「私たちが見たのは、石でできたストーンゴーレムなのだ」


「今日のはメタルゴーレム?」

「うん、強かった」

「あんなの、反則だよ」


「まあ、コリンとニアの方がもっと酷い反則技を使ってるがな」


「でも、ぶっ壊したわけじゃないんだろ?」

「うん、あれは復活する可能性大だね」


「あんなのがいるんじゃ、迂闊に下へ降りられないよなぁ」

「あれはガーディアン。遺跡の守り人なのだ」

 ヴィクトリアでは、そう言われている。


「あの砂の下に、遺跡があるって?」

「いや、無いだろ」


「じゃ、標的はコリンとニアなのね」


「ヴィクトリアでストーンゴーレムをぶっ壊したのはエレーナだぞ」


「わ、私に仕返しに来たのか?」


「大丈夫、ここまでは追って来ない……たぶん」


「でも、軍には追われたのだ」

「あの後、どうなったのかな?」


「もしかして、オレたち賞金首のお尋ね者か?」

「アイオス、この船の素性はバレていないよね?」


「はい。遠距離で、ステルス状態での遭遇でした。現代の艦船からこの船の固有情報が探知されたとは考えられません。まるでゴーストのように、何も残さず消え失せました」


「ほら、大丈夫」


「コリン、もっとしっかりと現実を見ろ。全然大丈夫じゃねえぞ」



 そこで、また甘いものを食べながら、情報を整理することにした。


「ゴーレムは、恐らく僕とニアを追って来たんだと思う」

「どうして?」


「南米ステーションのとき、ゴーレムはエレーナじゃなく、わたしとコリンを追っていたの。それは確か」

 あの時のエレーナは、二人に巻き込まれただけだった。


「で、その理由は分かるのか?」


「たぶん、二人で遺跡に入ってカウンターウェイトへ飛ばされ戻って来たから、かな。その意味では、今はエレーナも一緒か……」


「遺跡は侵入者をカウンターウェイトの宇宙空間へ飛ばして始末し、それでも生き残った奴を追っていると?」


「カウンターウェイトには、ゴーレムが出なかった。でもその代わり、軍に警報が送られ、ステーションが封鎖されてカウンターウェイトが包囲された」


「つまり、生き残りの魔導師を発見するトラップだと?」


「わからない。でも、エレーナがやっつけたゴーレムは、明らかにあの氷のような石を回収に来ていただけだと思う」


「その石は何だ?」

「ええっと、シムが持っていた、認識疎外系の魔法が掛けられた謎の石ね……」


「僕はあれが、マナを貯蔵するエネルギーパックのようなものじゃないかと思ってる。それも、特別製の超高効率のね」


「まさかコリンの自動収納にそんなものが入ってるんじゃあるまいな?」


「それはない」


「わかったわ。じゃ、次の目標はそのカウンターウェイトかヴィクトリアの遺跡ね」

「おい、シル。それは危険過ぎないか?」


「だって、その謎を片付けないとエランドに降りられないんでしょ。だったらさっさと行きましょ!」


「その危険な場所に行くのは、僕とニアだよね」


「あんたたち以外に、いないでしょ!」



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ