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旅する酒場の魔法使い 第一部  作者: アカホシマルオ
第二章 緑の魔境
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遺跡について

 

 コリンはお昼になる前に湖畔の家に帰り、キッチンで昼食の支度を始めた。


 今は遠征している五人の弟子も暮らしているこの家はそれなりに大きく、人数分以上の個室があり、大きな厨房も整っている。


 ソーラーパネルと水道にも使っている川の流れを利用したジェネレーターで電力は確保されていて、特に魔法を利用せずに暮らせるようだった。


 食材は基本的に巨大な冷凍庫に保管され、野菜は家の横に作られた畑で育っている。


 想像していた通り、湖畔は幾らか暑さも和らぎ、穏やかな気候で暮らしやすい。

 今が丁度、雨期が終わったいい気候の時期だからかもしれない。


 それからかなり遅い時間に、三人が家へ帰って来た。

 玄関へ迎えに出ると、ずぶ濡れのエレーナを半泣きのニアが生活魔法で乾かしていた。


「おいニア、生活魔法のときは上手に弱い風を制御しているじゃないか。何故それが出来ん?」


 師匠がニアの肩を叩いた。

「あっ……」


 ニアはそう言ってもう一度更に優しい風でエレーナを包む。

「あれ、できるなぁ」


「ニアは、スゴイのだ」

 エレーナはもう、ニアを野良ネコとは呼ばないようだ。


「さて、お昼ご飯にしましょう」

「コリン、今日は何?」


「アボカドとトマトと牛肉の冷製サラダとナマズのシチューだよ」

「う、またナマズか……」


「今日のはドラーダという、いつもと違う種類だけどね」

 四人はすぐにテーブルに着いた。


「コリンのおかげで食事が楽しみだ」

「うん、そうなのだ」


「今までどうしてたの?」

「弟子が交代で当番に……」


「エレーナも料理するんだ?」

「任せるのだ」


「こいつは肉を焼いて、畑の野菜を切るだけだ」

「肉はどこで手に入れるんですか?」


「ああ、ステーション近くの村で食材は手に入る。月に何度かまとめて買い出しに行くが、今は人数が少ないから当分在庫が減らんな」


「他のお弟子さんは、どこへ行っているんです?」


「山奥の遺跡にガーディアンが出たと聞いたので、調査に行ってもらった」

「ガーディアン?」


「この惑星に古代遺跡が多いのは知っているだろ」

「はい、ガイダンスで絶対に近付くなと」


「ああ。だが時々近付くバカがいて、たまに遺跡を守る魔法遺物を起こしてしまうことがある」


「遺物ですか?」


「ああ。古代魔法の防御機構が生き残っていた場合、侵入者排除機能が目覚めて自動機械のようなものが動き出すことが稀にある」


「そんなの聞いたことがないです」

「ああ、この惑星の者しか知らん」

「で、それをどうするんですか?」


「知らずに近寄ると攻撃されるから、ステーションへ報告して警告を出す。それでも危ないようなら、排除する」


「排除したら遺跡に入れるの?」

 ニアが目を輝かせる。


「絶対に入ってはダメだ。遺跡に入り生きて戻った者はいない!」

「げ、それは物騒ですね」


「大丈夫、五人は偵察だけだから、もうすぐ帰って来るのだ」

「それにしても、ここは過ごしやすい土地ですね」


「ああ、ステーションの周辺から南側は本格的な熱帯雨林で一年中暑くて雨が絶えない。この辺りから北は山岳地帯になり、幾らかマシだな。特に今は乾季に入ったから、雨も降らんし」


「つまりここより南側は、僕らが歩いて来たような湿原や密林に年中雨が降っていると……」

(最悪だ)


「しかしオールドアースの熱帯雨林では、人々は豊かに暮らしていた。寒さで凍えて飢えることもなく、豊かな生命の宝庫なのさ」


「なるほど」

(確かに、砂漠で干物になるよりはマシな世界かも知れない)


 コリンはせっかくなのでもっと密林へ入り、色々な果実などを探してみようと思った。

(それに、テラリウムに使えそうな植物も多いし)



『オンタリオ』に残った面々は、連絡を容易にするために生活サイクルを『ヴィクトリア』のコリンたちの時間に合わせた。


 おかげで朝夕の定時連絡は欠かさない。


 基本的にはコリンの個室にニアが来て結界を張り、密かに五人で話している。ただ、朝はニアがまだ寝ていることが多い。


 コリンたちと同様ジュリオたち三人の毎日も順調で、それなりに成果を出しつつあるようだ。


 肝心な設計図やマニュアル以外にも、MTの基礎理論や科学的根拠は全て残されていない。アイオスに組み込まれた自動機能などから推測するやり方になるが、さすがに高度なAI自体の解析は不可能なため、限界はある。


 しかしケンが様々な周辺機器を分解して解析しながらシルビアが個々の働きを推測し、共通する幾つかのパーツの持つ役割がわかるようになった。


 そうしたパーツが増えれば、様々に組み合わせて新しい機器を造ることも、夢ではない。


 ジュリオはもっと大きく船の動力関係の流れを分析してシステムの特徴を探り、補える弱点はないかをアイオスと検討している。


 そもそも常時魔導師が乗船して補助する前提で設計された船なので、今のような状況が続くのは本来の運用方法ではない。


 アイオスも千五百年間ほぼ眠っていたようなものなので、再稼働を始めた今は周囲の環境に合わせて自己変革が必要との認識を持つに至った。


 それが、ジュリオの狙いでもある。



 


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