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第98部分 異類婚姻譚②

第98部分 異類婚姻譚②



えっと…  なんだったっけ??


ああ、そうか、水面をのぞきこんだ途端、

「ッシャッ!」っと水面が揺れ、大きな波紋が躍ったところだったか。  ←すでに結構忘れてる…orz


当然、

「ん… な、なんなんだ?」

という疑問が起こるワケだ。


このわずかばかりの水界を覗き込んでも、沈む枯葉にまぎれたか、生き物らしき姿を見つけることはできなかった。15分ほど粘ったが、まるで気配を感じることができなかった。こりゃ水中で皮膚か腸とかで呼吸できる能力を持つに違いないぞ…



冬真っ盛り、晴れていたとはいえ、連日凍えそうな気温が続いていた。午後2時ゆえそこまで寒くはなくとも、恒温動物の我々でさえ朝晩には痛みを感じるような寒気かんきの毎日である。さてそんな屋外にまう生物の正体や、如何いかに。


いかに、とは言っても烏賊いかではないことは確かだ。竹藪のきわにあるのだから海水、いや汽水でさえ有り得ない。


真面目に考えよう。

舐めたワケじゃないけれど、そういった淡水面を音を立てて揺らすほどの生物となると、ある程度身体は大きく力も重量もあるワケだから、昆虫ということはなさそうだ。しかも厳冬期でもあるのだから両棲類アンフィビアンズ爬虫類レプタイルズは冬眠中ということで除外して良いだろう。しかし過去の経験に照らしていうとあの水音はカエルの… しかもウシガエルっぽいんだよね。ただウシガエルはもっと大きく力強い感じで「ドボンっ」で音になるんだけどな。

しかしカエルが冬眠するのは常識だよ、常識… でなきゃ寒気で死んじゃう…のかな。そんな間抜けなカエルなんて見たことないし…


脊椎動物門は円口綱、魚綱、両棲綱、爬虫はちゅう綱、鳥綱、哺乳綱の6綱から成る。このうち寒気に弱いとか冬眠するとかいう条件から見るとまず両棲類と爬虫類が除外される。さらに諸条件から見て確実に除外できるのはヤツメウナギ等を含む円口綱と鳥綱だろう。そりゃウとかペンギンとかは結構もぐっていられるけど、まさかにこんな小さな土管のお水溜まりに棲めるはずもない。また哺乳綱のうち淡水棲のものはビーバーとかカワウソ、バイカルアザラシとかアマゾンカワイルカとかで、これもちょっと大きさ的に無理があり過ぎる。


そうだ、ネズミはどうだろう? 泳げるし…

でも彼らはこんなコンクリ壁なら苦も無く登り切ってしまうだろうし、逆に呼吸を止め潜って姿をくらますという手段は不可能であるに違いない。昔は…って、サティも30年ほど前にさんざん体験したが、以前はネズミ捕りで捕獲したネズミを「処分」するとき捕獲器ごと水中に浸して窒息死させたものである。ゆえに15分も息を止めて無事に生き延びられるはずもない。


すると、魚類か?

魚類だとすると… 僅かな例外を除き魚類は常時水中にあるのが普通だし、逃げる場合でも水中を素早く逃げるだけで、枯葉に偽装して水底に身を隠すという選択はしないように思える。そもそもあの孤立した水界にどうやって入ったのか… 人為的な操作が無ければ不可能だし、だいたいあんなところに放流する意図がまったくわからない、むしろ無意味、と断言できるのだが…


ならば無脊椎動物ならどうか。

ある程度大きくてパワフルな動物は海になら幾つか心当たりがあっても、淡水ではちょっとなぁ… 近頃全国的な広がりを見せる「スクミリンゴガイ」、いや「ジャンボタニシ」なら大きさ的に納得できるが、素早さとパワーの面で当て嵌まらないだろう。彼らだって厳冬期には田んぼの土の中などで休眠しているはずだ。




結局何だったんだ?? 謎はのこったままだった。

まあ良い… この次動画を撮りながらそっとそぉ~っと近づけばわかる話じゃないか。



そして翌日… 

わかった。何のことは無い、カエルだった。

カメラを回しつつ静かにジワジワと近づくと、三角形で暗褐色の頭と2つの目が水面から出ているではないか。その目に下には緑色のくまがある。こりゃまごうことなきウシガエルである。水面下ではせいせいと手足を広げてぷか~っと浮いている。

大きさはトノサマガエル成体よりひとまわりふたまわり大きく、思うだけでも冷たい水に身体の8割以上を漬けて上空をにらんでいた。


疑問は幾つもあった。

 この寒空のもと、よく生きてるよなぁ…

 いつ、どうやってここに辿たどり着いたのだろうか。

 好きでここにいるのか、もしかして誰かに連れて来られたのだろうか。

 そのときの姿フェーズは卵かオタマかカエルだったのか。

 こんな狭い空間でエサは足りているのだろうか。

 このコンクリ壁の粗いザラザラ面を「登らない」のか「登れない」のか。


以来コースを変えて毎日のようにここを見舞うのが恒例になり、そっと近づいて無事を確かめるのが日課になっていた。

しかしこの狭い折から救い出してやろうという意志はなかった。ウシガエルは特定外来種なのである。

「ウシガエルを見つけたらどうすればいいですか?」という問いに対して環境省は、

『ウシガエルは特定外来生物なので、食べる場合は、その場で処分サツショブンしないといけません。 そうしないと、法律違反です。 ウシガエルは外来生物法が適用になり、飼育、生きたまま運搬することが原則禁止されます。 つまり、捕獲しても生きたまま家に持って帰って、家族に見せることはできないのです』だそうで… 

まあその辺の池沼や川でガサガサ(足等でガサガサとオドカシて網で捕獲する)すればいくらでもオタマジャクシが捕れるのだが…


コイツを助けたからといって、外人風のカエルが深夜に訪ねてきても困るのだが…

カエルの化けた娘じゃ、一緒にしっぽりと酒なんか飲めないに決まってるし… なんせ下戸下戸ゲコゲコって念を入れてるくらいだからね…



この話、実は後日談が2つある。


1つは… なんとウシガエルは2匹いたことだ。最初は当然1匹だと思っていた。なんなら1匹でも狭いくらいの空間なのだ。

そのうちに、ウシガエルがバシャッ…と潜って隠れた後、遅れてもう一度同じような音と水紋が立つことに気付いたのである。


そんな、USOでしょ? いや、ウソでしょ?

3月中旬、慎重の上に慎重を重ねて可能な限りゆっくりと近づいてみたところ、実際2匹存在しているのが動画ビデオ上でも確認されたのである。

そしてついこの間の6月上旬… 1匹が死んで浮いていた。死因はわからないが、痩せてはいなかっただけでなく、ふやけたのか色が褪せ皮がけかかっていた。そのかたわらにもう1匹がいつものように天を眺めていた。


「井の中のかわず大海たいかいを知らず」 狭い視野にとらわれた世間知らずをこう言ってバカにすることがあるが、実はこのことわざには続きがあるという。


それは

「井の中のかわず大海たいかいを知らず、されど天の高さをる」 というもので、狭い世界の中にいても、一つのことを深く見つめることで、その世界の深さを知ることができる、というニュアンスが加わり、むしろ褒めコトバのニュアンスが強化されるという感じに聞こえたりする。

ああ、どうせならこういうニンゲンになりたかったなぁ…



2つには… 4月25日のこと、この狭い水界にお騒がせの訪問者がいたことである。

それが久しく忘れていた「異類婚姻譚」を思い出させる出来事だった。


けど、今日はここまで、ここを過ぎず… なんかポタ源騒ぎというか詐欺があって、疲れちゃった…

ではまた、いずれ…

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