第82部分 変調:普段の自律機能に感謝!
第82部分 変調:普段の自律機能に感謝!
昨日… 全く経験のない変調に見舞われた。
あれ? 違和感を覚えたのは午前10時ころである。
昨日(令和7年2月17日)は例の確定申告の受付開始日である。
昨年10月に退職したので、当然年末調整は済んでいない。しかし自宅で手軽にe-taxができるとかいう宣伝文句を鵜呑みにして先々週まで余裕ブッコいてたら、これがまたとんでもなかった。なんのことはない、どうやらe-tax自体は難しくなさそうでも、その「事前準備」とやらがドエラク煩雑というか不親切この上ない。いざ作成しようと思うと、「まずこのビデオを見りゃわかる…」と最初から高飛車な御役所仕事なのである。調べてみると1本10~20分のビデオを何本も延々と見続けなければならないようだ。
しかし1本見てすぐ辞めた。
あんなわかりにくくて、確かに概要は言ってるけど肝腎なところはあいまいで、最悪次のビデオにたらい回しされる映像などとても覚えてなどいられるワケがない。かといって紙面のマニュアルは使うハードによるものか、途中からは紙面の例と同じ画面が出てこなくなってもう無茶苦茶だ。だれが作ったか知らないけど、素人がそんなきちんと場合分けできるとか専門知識を持ってるワケがないんだぞ。挙句昨年始まった「定額減税」の計算については従来品が対応していないのでどうちゃらこうちゃら… 知るか、んなもん。素人でもちゃんとできるようにシステムを設計配布実施するのがオメエらの役目だろうが…
まずマイナポータルを開く。今まで勤務先の事務さん任せだったから、そもそも自分がどこに該当してどんな書類を作成すれば良いのかからしてわからない。
暗唱番号4桁を入れ、マイナカードをスマホに読ませて本人確認がある。まあそりゃマイナカードを持ってりゃ、基本本人だろうがよ。
やれやれひと段落と思っていると、今度はマイナカードから個人データを読むといっては再び暗唱番号4桁を入れ、マイナカードをスマホに読ませて個人データを読み取るのである。おい、お前はアホか… いっぺんにやれよ。イライラする。イライラのあまり、机上のニッキ飴の被覆を取って口に入れる。
今度は、例えば県民共済に自身のメアドと名前を入れ、返信が来たらログインし、三度マイナカードの個人情報をスマホで読ませてから「確定申告の資料くれ」と請求するのである。イライラする。舐めているニッキ飴をついついバリバリと嚙み砕いてしまう。もうなくなってしまった… じゃあもう一個。こういった工程がスムーズに進む場合もあるが、なんか私のせいではないのに「エラー」が表示されて御破算になることもしばしばあり、もう、気が狂いそうだった。
さらに、いま請求のメールを出したところで、各社からの返信が来るまでには3~5営業日を挟んだ御時間をいただくとのことで、まったくもって全然楽でもお手軽でもない。
これを確定申告に関連があるすべての関連団体に行ない、返信が来たところでマイナポータルと返信の添付データを「e-私書箱」に関連付けて申告できるらしいのだが…
ああ、めんどうくさい、どこが手軽なe-taxだよ… とりあえずいったん気分転換も兼ねてトイレだ、トイレ。
くそっ…このシステムの概要は私が作った方がマシである。ほんと税務署本位の都合だけで、一生懸命入力して正しく納税しようという一般素人ピーポーの能力と心情と労力を全く考慮していない。いちいち10~20分もかかるビデオ見せたりgoogleの拡張アプリをインストールさせたり… そんなことしてるうちに前に見た動画の内容はあらかた抜けてしまうし… 似たような作業を延々とやらせたりして、これじゃまるで行き当たりばったりの増設工事みたいで… それと「類似した名称」とか「略称」とか、見るサイトによって微妙に異なる「名称のズレ」とか… こんなの統一して「様式◎◎」とかきちんと添えてほしい… 「プロ」のはずののオマエラ恥ずかしくないのか?
トイレから掘炬燵に戻り、PCの前に座って考え込む。
私が担当者だったらまず…全社、全団体に対して契約しているものを「名寄せ」してすぐに添付ファイルで送信できる支度をさせておく。各社事務員さんは居るし、年末調整なんかもやってるからこれはどうということはない。
一方で確定申告すべき方にたいしてはフローチャートを公表して、どの書類を作成すべきか、そしてどんなものを用意されていれば良いかが明確にわかるようにしたうえで、それぞれの書類の作成方法をPDFファイル等で公開するだろうになぁ…
いくつかベースを作っておいて、ややこしい条件は枝葉方式というか、後付けで付属させりゃ良いだけじゃないか。
あんなややこしい用語と使い方マニュアルなんて、そりゃプロのオマエラならわかるかも知れないが、ど素人に「全てが書いてある書類」を見せたってわかりゃしないんだよ。
もっとも国税はほくそ笑んで陰で嘲笑しているに違いない。
『なに、申告されなきゃ還付されない仕組みだから思惑どおり。これで良いのさ…』とね。
…なんてイライラの極限で妄想しているときにふと気付いた。
「あっれ、また便所行きたい」
それ自体おかしくはない。
異常なのは、その間隔だった。
さっきトイレに行ったばかりなのだ。おそらくは10分くらい前だろう。
ついさっき便所に行った。そして気兼ねなく放出してきた。朝食で味噌汁を普通に飲んだのが最後であり、以降水や湯、コーヒー紅茶ココアやサイダーに至るまで一切飲んでいない。
「おかしいな、寒いとはいえ早や残尿感に苛まれる齢になったのだろうか」
苦笑しながら掘炬燵を立つ。
しかし便器に座っても… 出ないのだ。
おかしい、こんなに尿意だけはあるのに…
私の意識はこの感覚と現実の差に混乱した。
とりあえず頑張っていきんでみた。
ようやくしぶしぶちょろり…と出た… がまあ3mLというところか。多くとも10mLには達していまい。
しかしまだ尿意は激しく続いている。
…!
これはおかしい。
ここに至って、ようやく身体の変調を意識した。
痛みはないし、尿も出る。今はこんなでも、朝はいつもと変わってはいなかったはずだ。つまり尿管とか腎臓結石とか、そういった何かが詰まる病気ではないらしい。聞くところによると、結石(石)が詰まったときの痛みは激烈なものであるというから、この可能性は除外してい良いだろう。
とすると何かな?
2週間くらい前、XO醤を使って炒め物をしたとき、その夜11時くらいからたまらない腹痛が始まり、ときおりなかなか出ない変な下痢を伴って夜明け前まで苦しんだことがあって… あのときは”いきみすぎた”せいか、朝の尿の色が”血尿”みたいな変な色だったよな… しっかりよく観察してやろうと身を屈めたら、ザァァァァァァッ…と流れて行ってしまったよ、おい…
だから自動便座の気の利かせすぎは困るんだよ…
それにしても… あれの続きにしては間隔が空き過ぎてるしな、うん…
こうなるともう、税金どころではない。
腎臓や尿路の系統の異常でないとしたら、どこの異常だろうか?
仮説1 膀胱の「おしっこセンサー」の異常。センサーがずっと満タンを誤検知している可能性。
仮説2 センサーが正しくても神経に受容信号を発する神経細胞またはそれを中継するシナプス誤検知している可能性。
仮説3 「おしっこセンサー」から伝達されてきた信号を処理する間脳や大脳の信号処理が誤っている可能性。
ここまでが泌尿器系および神経系への疑惑だが、まだ他にもありそうだ… うん、
仮説4 泌尿器系に接する、例えば腸のできた腫瘍等が泌尿器系を圧迫した結果、信号の誤発信に繋がっている可能性。
仮説5 脳内の腫瘍や動脈瘤等による圧迫で尿器系の感覚が阻害されている可能性。
わからん…
当然ながらわからん!
まあ今日は日曜日で医者も休業中だし…
とりあえず我が子と二人分の昼食を作って食べ、食器を洗っても様子は変わらず、午後になっても尿意は続いた。
こうなってみると、「普段の健康」というものがどれだけありがたいものかに改めて気付くことになる。今はもう、なにがなんでも「あ、とりあえず便所便所、おしっこ行きてぇ!」
これしか考えられなくなるのだ。
かと言って便所に行ってイキンでもちょろちょろと5mLくらいが排出されるだけで、何の解決にもならない… どころか水道代が嵩むばかりになる。
どうしよう、わたし…
「ぬぬぬぬぬ… もう今日まともなことをするのは諦めよう… そうだ、散歩行こう、散歩! ん、待てよ… 散歩中にもトイレが… いやもう仕方ない、今日は粗相しても許可にしよう… そうだパンツを5枚穿いて出掛ければ良い。もうそんなには出ないはずだしな… とにかく気分転換しなくっちゃ」
まださすがに「成人用おむつ」までの用意はなかった。でも早ければ明日にでも購入を検討しなければならないかも知れない。
午後1時半くらいから1時間半にわたって歩いてみたが、一向に納まることのない尿意。たまらず公園トイレに2回入門してみたが、やはりほんの少量が出るばかりである、幸いなことに痛くはないし、まあチョロッとだけど勢いもないワケではない。少なくとも男性が経験するかも知れない痛みベスト10に入る尿管結石でなさそうなことは感謝しよう。
夕飯を支度し、仕事から帰った長男と食べたあとに寛いでも… ちょっとも寛ぐことができない。意識の95%が尿意に持っていかれてしまう感覚なのである。かといってこれを長男に相談しても「病院行ったら?」くらいの反応だろうし、とにかく解決しないことだけは理解できているので口を噤んでいることにして、とりあえずは寛いでいるフリをしている。これが激烈な痛みなんかを伴うなら別として、現状を打ち明けたところで余計な心配を掛けるだけだ。
このあと、もしも… テレビを見る視線を保ちながら、頭の中では全く別なことを思案している。
このあと、もしもこの症状が一生続くようならどうすれば良いだろうか。医者でもわからない、直せない新種の異常かもしれないではないか。もう、こんな思いで余生を過ごさねばならないとしたら、いっそ死んでしまった方がマシかもしれない…
ふと連想したことがあった。少々尾籠な挿話になるので、御食事中の方はいったん中断してくださいね。
たしかオーストラリアの話だったように記憶しているが… ある方が森の際で便意を催した。これが小便なら、「社会の窓」を寛げて黄色い液体に放物線を描かせればそれで終了する話だ。この方の便意は”花摘み”の方であり、単独行であったことから人目を気にするでもなく彼のボトムスをずらして爆撃を敢行したらしい。さて文明人の彼はこのあと菊花御紋章を清掃するために塵紙を… いや手近にあった植物の葉を摘んで御紋章を清拭したらしいが…
この植物が曲者… というか毒草だったのである。
毒草の名前はギンピ・ギンピ。英名gympie stingerに含まれるスティンガーは”刺すもの”で、毒クラゲや対空ミサイルなんかヤバイやつの名前にも好んで使用されているようなものだったらしい。さすがイラクサ(指されるとイライラするから付いた植物の名前)の仲間だけあって植物全体をイラクサのような刺毛が覆っていて触れたものに強烈な神経毒を送り込み、人類には耐えがたい強烈な痛みを引き起こし、それが二週間以上とか長時間続くだけではなくはるか後年まで続く深刻な後遺症をもたらすという。外見は…そうだな、葉っぱは青紫蘇っぽいから、一見食べられそうな感じで、現に現地のワラビーの中には実際食べるものもいるという。え、ダイジョブなんかい…
もちろん御紋章などという軟部というか粘膜を直接拭いてしまえばどうなるかは容易に想像できるだろう。
で、気の毒な彼はその場で彼が持っていた銃で自殺したという話を某テレビで放映していたことを思い出したワケだ。
ただ… 冷静に考えるとこの話にはおかしなところがある。
もしギンピ・ギンピの葉をもぎ取ろうと最初に素手で摘まんだならば、触れたその瞬間に激痛に襲われたはずで、当然肛門なんぞ拭かないに決まっている。んんん、それともきちんと皮手袋でも着用していたのだろうか。
ギンピ・ギンピの耐えがたい痛みで已む無く自殺したなら、こうしたエピソードのネタに使われることはあっても、世間の方々は共感し同情してくれるだろう。しかし連続的尿意に耐えかねてという理由では”物笑い”にもならないのではないか。
もう今日は仕方ない。数十年ぶりにおねしょしても今夜だけはしかたがない。何も気兼ねせずに眠剤をアテに酎ハイ吞んで寝よう、それしかない。
あとは明日だ明日だ。
そして翌朝… なにごともなく起きた。一度も目覚めることなく。尿意を感じることもなく。
一体アレは何だったのだろう。
掘炬燵のPC前、冷静さを取り戻してからいつもの位置に座り思い起こしてみる。
うん、おそらくストレスが絡んでいたのは間違いないだろう。くそ、国税のせいかよ… そしてふと机の上に散乱した包装プラを見てアッと思った。
そういえば昨日… うまくいかないあまりニッキ飴をドカ喰いしてたっけ。イライラのあまり飴球をガリガリと噛み砕いてしまい、勢いそのままに次のものを何個も、何個も…
本来なら今日もニッキ飴をドカ喰いして仮説を検証すべきところであるが、もう一度あの症状が再現されてしまったらと思えば到底実行する勇気は出てこない。
なんにせよ、身体の恒常性維持作用のおかげでなんとか元に戻ることができた。ありがとう、ありがとう、私の身体よ! 感謝してます… 今日はチョコレートを許可いたしましょう… 値上げエグイけどさ、ね、祝いじゃ快気祝いじゃ!
結論… すべて国税庁が悪い。奴らがサティにストレスを掛けたからこういうことになったのだ… ということで丸く収めておこう。
くそ、奴らの鼻を明かすためにしっかりe-taxで払い過ぎた税金を取り戻してやるぞ… それがたとえ100円であっても、だ。




