第71部分 事実は小説よりも…2
第71部分 事実は小説よりも…2
思わせぶりな終わり方のまま退出し、しかもほっぽりっ放しにしてごめんなさい。
まあ端的に言えば、嫁どのの母、つまり自分にとっての義母が交通事故で亡くなりました。
住宅街で、しかも自宅から50mほどのところで自転車で走行しているときに軽自動車でハネラレタとのことです。いやむしろ「乗られた」と言った方が良いかもしれません。
軽自動車がようやく停止したとき、タイヤは彼女の胴の上にあったといいます。
状況から察するに、即死…です。
いや悲惨には違いないですが、むしろ苦しむ時間が少なかった…
いやおそらく何が起きたかわからぬままに亡くなったのではないか?
それがせめてもの救いかと思います。
嫁に出した娘の突然の客死、それから3週間も経たぬうちワケのわからぬまま…
そういう事情で、嫁殿のあと片付けも何もかもをほっぽり出し、クリーニング屋から戻ってきた喪服が何とか間に合って葬儀…
ばぁばが亡くなるのがあと一日早かったら、あやうくレンタル喪服になるところでした。
可哀そうなのは我が長男です… といっても一人っ子ですが。
母を失くし、次いで旬日の間にばぁばを失くす。
なんとか前向いて生きていかなくちゃぁ…
そう言いながらも、その憔悴ぶりはとても見ていられるものではありませんでした。
かく言う私も、ある朝浴室でシャワーを浴びながらいきなりダムが決壊したかのように涙が溢れ出してそのまま号泣、しかもそれを起き抜けの長男に聞かれてしまうという失態を時に演じつつ、なんとかここまで生きてきました。
こうなると、死にたいとか言ってられません。
いや心境はいささかも変わってはいないのです。
ただしかし、そういう状況ではなくなった。
いまこのまま長男を置き去りにしてあの世に旅立つことはできない。
いやはや、全くの無責任を決め込んで良いならば、そりゃ死んじゃいたい。
その方がラクそうだもん。
長男と何度言い交わしたことでしょう。
「これなら先に死んじゃった者勝ちだね」と。
ヒトが亡くなったあとの、「後始末」がこんなに大変だとは知らなかった。
とにかく手続きがべらぼうに多いのです。
10万円を超えると手軽に引き出せない銀行預金を、通帳とハンコとキャッシュカードを持っていちいち解約しなきゃならん。御存知のとおり、相続のもろもろがあって、死亡届が提出されると口座は凍結されてしまいます。
しかも私が知らない通帳やらキャッシュカードやらが遺品の間からふと出てきたりして、いらいら…
まず運転免許返納やら死亡届やら… そして市役所のあちこちを移動しつつ小半日かけて話を聞き、手続きしていきます。
次に嫁殿の勤め先への連絡とお礼、そして物品や保険証の返却、いままでの給与の受け取り手続きとかでしたね。
次に生命保険、これは過去の通知手紙とかを漁って会社を調べ、とりあえず電話を掛ければ、あとは必要な書類を郵送してきてくれました。
厄介だったのがサブスクとかカード、ファンクラブとかでした。
カードを解約するとカード決済や自動引き落としが止まります。
そうでなくちゃ困ります。
そしてそれからのんびりと、決済できなかった請求書が郵便で届くのです。
会社の名前を見てもどういう会社か、何を買ったか、皆目見当がつかない場合もありました。
ファンクラブは某歌手のあれこれが届いていたのを知っていたので、これは簡単かと思ったけどそうでもなかった… 結局スマホで入会してIDやパスワードを設定してるので、もうぜんぜんわかりません。
やむなくパソコンで会の規約を調べたら「自動継続」ではなかったので放っておくことにしました。
「メニコン」はわかりました。これコンタクトや保存液なんです。
電話して、解約しました
「アプラス」はわからなくて調べました。これカード決済の代行みたいな会社でした。
電話して、解約しました
そしたらしばらくして「ユーネクスト」というところから請求のハガキが来ました。
「はて、何の会社だろ…」
長男に聞いたら「サブスク」関係のようで、もうとにかくヘルプセンターに電話して解約しました。
そう、最近はこの「ヘルプセンター」も人員削減しているのか、掛けるとたいてい自動音声なんです。
そして「〇〇の方は1を、△△の方は2を…」 と、機械が勝手にしゃべり始めるんです。
おい、わからないんだからさぁ、はやいとこニンゲン出てきてくれよ…
イライラします。
ああ、買い物行かなくちゃ。
朝も洗濯してるけど、今まで当然わかってはいたけど、いっぱい嫁殿のお世話になってました。
実際やってみると、わかっちゃいるけど結構忙しいものです。
ままちゃん、いままでありがとう。
でも… どれだけお礼も感謝も少なかったことか。
重ねて、ままちゃんありがとう。
当面ままちゃんの分まで、長男が落ち着くまでは頑張ってみる。
無理はしないけどね。
そういう意味では、自分がいなくなっても、あとは嫁殿が何とかうまいことやってくれるだろうと思っていたことを、逆に取返しようもない先手を打たれたことになるなあ…
長男と共に出した結論、
「結局死んじゃった者の勝ち」
おれら、負けたわ…




