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第67部分 チーズ

第67部分 チーズ


言われ尽くされた感もあるが、写真を撮るときに

「はい、チーズ」

「チーズ」

パシャ!(シャッター音)

と言わせて撮影するのは、目的を達成する手段を履き違えている所業だ。


確かに「チーズ… パシャ」とタイミングこそ合うものの、だからといって肝腎の「笑顔で撮る」のに適切な手段とは言い難い。


ちょっと頑張って笑顔を作ってみよう。このとき大部分の人は口の両端が耳側によるかと思う。このときのクチビルの形が母音ボインイのくちの形、つまり「いきしちにひみいりゐ」の発音をするときの形の相似形になるのだ。つまり「イ」の発音をしている時に撮れば、手っ取り早く笑顔の写真が撮れるワケで写真撮影の掛け声にしたい理由の大部分はソレである。


…とすると、

「チーズ」という単語は適切であるとは言えない。

「ズ」は「ウ行」、つまり「うくすつぬふむうるう」の仲間である。

それでも笑顔で撮りたければ「ちー」と口を開けている間に「フライングゲット」して「ず」と言い終わる頃には撮影を済ませている必要があるのだ。

こんなこと、誰でも知ってるはずなのに、もう何十年間も

「はい、チーズ」

は繰り返されている。そんなにそこまでチーズのことを好きでもないクセに…


気付いているならみんな、そろそろ革命を起こすべきではないだろうか。

例えば暑い時期なら「アイスティ」

例えば寒い時期なら「レモンティ」

春と秋には「ねぇ、サティ」    ← おい宣伝か?

とかね。

ちょっとだけそんな工夫をすれば、もっと手軽に笑顔っぽい写真が撮れるはずだ。



さて… 前置きが長くなってしまったが、今回のテーマは、その「チーズ」自体だ。

きっかけは昨夜の晩御飯である。正確には、その片付けから始まっている。

我が家のヨメ殿はここ2年ほど恒常的にご機嫌ナナメであり、私はすでに慣れっこになっているが、それでも夕飯の片付けだけは欠かさず実践している。こればかりは無言の呼吸というか、圧力というか、事実上の無視というか… いっそある意味での信頼と言っても良いかも知れない。


いや、話したいのはそこんとこじゃない。昨日のメニューは久々の「鶏ムネ肉のチーズ挟み焼」であった。ムネ肉は比較的安価で買えるし、味付けもシンプルに塩コショウ、贅沢するならスパイスを加えても美味い。味付けが物足りない場合は焼き肉のタレでも個人の好みで後付けで追加すれば良い。


作り方はカンタン、ムネ肉を程よい大きさに切って少量の砂糖を振り、厚みを半分にするように包丁で裂くのだが、ここにチーズを挟むので若干切り残しておくのがポイントだ。この料理はずっと以前に自身で考案し、ムネ肉をどうしようと悩んでいたヨメ殿に伝授したものである。

これをフライパンで焼くのだが… シート状のチーズは別として刻んである「伸びるチーズ」を使う場合にはどうしても若干のチーズが裂け目からこぼれてしまうのだ。食後フライパンに残ったこのチーズの切れ端、ヨメ殿は平気で捨ててしまうが、私は旧い体質の人間のせいか、もったいなさ過ぎてそれができないのである。


そう、片付けながらそれらを集め、生ゴミ処理… というか早い話が食ってしまうのだ。半ば焦げたチーズは実に旨い…


…はずなのだが、あれ、そんなにうまくないぞ。おかしいな。

いやいや… 思い返すと、チーズという食品が期待していたほど美味しくない場面はいくつもあった。

 スパゲティの上にとろけるチーズを掛けてレンジで温めたとき

 長く伸びることで有名ななんとかいう韓国名物料理を食べたとき

 某有名出前ピザを何かの機会に一切れだけ御馳走になったとき。

 軽食として食べたドリア



そう、昔よく食べた6Pチーズとかプロセスチーズとか、もっとチーズらしいクセもコクもあった。

更に言うと、ドイツ料理、スイス料理店などで食べたチーズ等かは「臭い」くらいに個性があった。アツアツのチーズフォンデュを食べた時はまず口の中にヤケドしてから味が解って来る。カマンベールだのブルーチーズだのが配合されている場合はうまい…の後に強烈な臭さが襲ってきて、ちょっと身構えておかないと吐き気に襲われることすらあったではないか。



おかしい…


冷蔵庫から「とろけるチーズ」っぽい封の開いたビニール袋を取り出し、短冊状の数切れ少量をフライパンに載せて加熱してみた。

ん? 短冊が柔らかくなり形は変形してくるのと同時に何やら染み出してくる液体があるではないか。

なにこれ、アブラ?


チーズには当然乳脂肪分が含まれているだろう。しかしこの量はおかしい。こんなに出るワケがない。このチーズっぽい塊を食べてみた。うん、チーズだ。しかし噛み続けているうちにチーズではなくなってきた。香りも味も消え、残ったのはチューイングガムみたいな感じの食感の何かである。やはりこれは何かがおかしい。


いままで風味が薄いと漠然と思ってきたけど、ちゃんと調べてこなかったよな…

考えてみれば、ここ何年もの間はチーズなんて何かと一緒にパクっと食べて、数回咀嚼しただけで飲み込んで、数秒経つとそんな違和感さえ忘れたままにしてきたんだな。チーズっていう食品は何にでも合わせてくれる名脇役でありながら、所詮は主菜たり得ないような扱いの食材なのだろう。だからはじめの数噛みの間だけそれらしき風味と焼き色と香りを演出してくてくれればもう出る幕は想定されていないのだろう。


よし、今日は調べてみよう。


まず原料からだ。

当然チーズの原料はチーズだろうけど…


冷蔵庫の中のチーズをヨメ殿に怪しまれないようにそっと調べてみた。

・6Pチーズ カマンベール入り:ナチュラルチーズ、寒天、乳化剤、加工デンプン

・とろけるチーズ(だと思ってたもの):え、なにこれ?

   へえ、これってチーズじゃない扱いなんだ。

  

いや正確ではないな。家にはなかったけどちゃんと「シュレッドチーズ」というものもあって、モッツァレラでもチェダーでもベルギーでも何種類かを混合したものでも細かく短冊切りになっていれば「シュレッドチーズ」なんだそうで… うん、でもこれは良い。「シュレッド(shred)」はシュレッダーでおなじみの「切り刻む」という意味だし、ちゃんと原料はチーズ、つまりナチュラルチーズ、乳化剤、安定剤(増粘多糖類)、調味料(アミノ酸等)だもんね。


しかし… 知らなかったのは家の冷蔵庫にあったもう一つの「シュレッドチーズ」まがい、というか、見た目はまさに「シュレッドチーズ」である。

どうやらスーパーマーケットで見かける「コレステロールカット」の「ヘルシー」のチーズっていうものらしい。ついでに価格もカットされてるようで、本物のチーズをたっぷり使っているとは到底思えない。


結論から言うとこういう商品は「チーズ代替品」であり「よく似た非なるもの」なのだ。原料はなんと

「乳等を主要原料とする食品」と「植物性油脂」であって「チーズ」ではない。そのせいかパッケージには「チーズ」とは記載されてはいない。なるほど、よく考えたものだ。


パッケージの裏側にある原材料は一般的なシュレッドチーズなら「名称:ナチュラルチーズ」などと書いてあるけど、コレステロールカットチーズの方は、「名称:乳等を主要原料とする食品」と表示されている。

まあ安いうえにチーズの気分だけは充分味わうことはできる。要は長く伸ばして「まがいもの」のボロがでないうちに、さっさと飲み込んでしまえばわかりはしない。アレルギーの問題で乳製品そのものがNGな方や流行りのヴィーガンにも重宝する品物であることは確かだし、まあ買うときに知識を持って選べば良い話ではある。


ちなみにナチュラルチーズの主原材料は牛乳などの生乳および食塩(塩化ナトリウム)である。

本来のチーズ作りは、屠畜した離乳前の反芻動物(ヒツジやヤギ、ウシなど)の胃液から抽出したレンネット(またはキモシン)という酵素を生乳に加え、レンネット凝固によって生乳を固めるところから始まるものだった。もちろん今はコスト面からも、そして離乳前の動物を屠殺するという行為による非難を躱すためにも微生物性遺伝子組み換えレンネットや植物性レンネットを用いてチーズを作っているようだ。



さて、添加物としての「乳化剤」。この乳化剤とはリン酸に炭酸ナトリウムを加え、加熱濃縮した「リン酸塩」がその正体である。ただしこのリン酸塩は胃、腎臓、大動脈にカルシウムを沈着させ、カルシウムの利用を悪くする結果、骨粗鬆症を招いたりカルシウム不足によってイライラ感が増したりすることをご存じだろうか。乳製品によってカルシウムを補給できると信じている方はちょいと考え直した方が良いかもしれない。

一説にはリン酸塩によるカルシウム吸収も問題よりも、チーズ製造時の食塩が含む塩分に害の方が問題だそうで、まあ何事も「過ぎたるはなお及ばざるが如し」ということにしておこう。



そうそう、他にも添加物があった。加工デンプンはまあデンプンだから、元々の原料はわからなくてもジャガイモやコーンスターチなどのデンプン、つまりグルコース(多数のブドウ糖が脱水縮合したもの)なのだろうけど、この増粘多糖類ってのは何なんだ?


そう思って調べていたら、こんな広告に巡り合った。


HOME すべての商品 > ユニガム ▲H-08(20kg)

~食品メーカー様へ、各種ご相談をお受けしています。詳しくはこちら~


●ニガム ▲H-08(20kg)

区 分      食品添加物

一般名      増粘剤製剤

内容量      20 Kg

保存法      直射日光、高温多湿、着香を避け、冷暗所に保管

製造者      ●ニテックフーズ株式会社

食品への表示例  増粘剤(加工デンプン、増粘多糖類)

本製品に含まれるアレルギー物質(28品目中)  なし

備 考      規格書は別途お問い合わせください

商品コード    ###

価 格      34,###円(税込)



あらま、これも結局加工デンプンだし増粘多糖類でもある。なんだよ、これ。水分が加わることは確実なので、20kgで35000円程度なら、チーズの原料費を相当抑えられるに違いない。そして問題は「植物性油脂」だ。正直何の植物から採っているかもわからないが、大方ヤシとかじゃないかなぁ



こちらもこんな広告を見つけてしまった。


「お店のためのとろけるミックスシュレッド」  ←チーズとは書いてない

植物性商材の市場ニーズの拡大・乳製品の価格上昇に伴い、需要が増える植物性代替チーズ。

植物性油脂80%とゴーダチーズ20%を配合してチーズ風味を残しながらもコストメリットが出る絶妙な配合。コレステロールを70%カットして冷えても固くなりにくいシュレッドタイプの商品です。


著作権に配慮して多少文章を弄ったけど、製造元はコーヒーで有名な、あの◆CCである。

なるほど、こりゃ安いワケだ。


ああ、はいはい、これでわかった。

要するにそういうことね。チーズ少量だから風味が薄いし、デンプンが入ってるからあの変な繊維感が残ったんだ。

とか言って健康被害が出るようなら話は別だけど、いまのところメーカーとか商品を責める気はない(このへん誇大広告ファイブリーゼとは扱いが違う)

知ったうえで風味を楽しむか、カネを出してホンモノを楽しむかってことかってワケだ。


そして意外な収穫は、サティの舌と感覚は案外確かだった… ってことか。



本当はチーズが溶ける溶けないの差とか、裂ける仕組みとかまで書こうかと思ったけど、なんか、もう、いいや。


今回このくらいにしといてやろう。


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