第63部分 「論文もどき 寒冷期の灯火付近におけるコイの集団採餌について」
第63部分 「論文もどき 寒冷期の灯火付近におけるコイの集団採餌について」
在野モノ好き研究者 茶茶 サティ
御挨拶:ひさしぶりのアップになります。今後ともよろしくお願い申し上げます。
なお資格試験は… 自身の感覚ではおそらく受かった模様… ありがとうございました!
(まだ早~い!)
★ イントロダクション
昨年晩秋の夕方、近所の池のほとりを震えながら散歩していたときのこと、妙なことに気付いた。
それは夜間照明設備の灯火直下に鯉が立ち泳ぎする姿であった。
いくつもある水銀灯付近のそこここに、1匹で、あるいは数匹で敢えてその場を動かないように身体を立てて泳いでいるのである。タチウオでもないのに、この泳ぎ方にはどんな意味があるのだろう。
遊びでないとすれば、何匹もが同じ行動をとること自体に何らかの意味があるはずだ… そう考えてその後数回にわたっていろいろな時間帯に観察を試みた結果、およびこの行動の意味にかかる考察と推論をここに発表するものである。
★ サマリー
魚類は一般にさほどの知能行動はなく、学習能力にも際立った才能や特徴はないものとされている。
魚類の生物学的な「学習行動」と言えば
・条件づけをしておけば、例えば「手を叩くと集まって来る」といった学習行動が成立する
・条件づけをしておけば、例えば「輪くぐり」をしたり、形や色や識別したりすることができる
程度のもので、新たな行動を自ら編み出すような知能的な行動の報告はほとんど為されてはいない。
アーチャーフィッシュ(テッポウウオ)が水を吹いて葉に居る虫を落とす名人芸もスゴイが、あれは「本能行動」であって「学習行動」とは言えまい。
乏しい生物学的知識を総動員しても、
・「セーシェル諸島」のロウニンアジが巣立ったばかりのセグロアジサシのヒナを海面で、または
海面に近付いたところを海中からジャンプして捕食する行動
・「釣り人が多い港湾付近」のサカナが、釣り針にかからないように巧いこと採食する行動
地域にカギカッコを付けたのは、他の地域では観察できない行動だから、と言う意味からで、要するにこれって「学習」、そして地域の仲間内に伝播していく行動かと思えるからだ。
今回のケースは
・人為的な「灯火の照明」を利用して
・コイ自らが(経験的に?)効果的な採餌方法としか思えない行動をとり
・しかもこの池の集団の多数のコイに同一の行動が伝播している
・さらに温暖期を越えた翌年寒冷期にも同じ行動が観察されている
という点で特筆すべきものであると考えたのだが… いかがでしょうか。
★コイの行動
この公園は地域住民の憩いの場であり、朝は6時30分からラジオ体操の音楽がかかり、夜は
21時まで街灯が点灯している。これは寒冷期でも変わらないスケジュールである。ちなみに筆者は16時から18時30分くらいの手が空いた時間帯に行くことが多い。
冒頭に戻る。
昨年晩秋の夕方、近所の池のほとりを震えながら散歩していたときのこと、妙なことに気付いた。
それは夜間照明設備の灯火直下に鯉が立ち泳ぎする姿であった。
いくつもある水銀灯付近のそこここに、1匹で、あるいは数匹で敢えてその場を動かないように身体を立てて泳いでいるのである。
はじめに想起したのは「鼻上げ」行動である。
サカナが水面でパクパクすることを『鼻上げ』というが、基本水中が酸素欠乏状態にあるときに見られる行動だという。鼻上げ行動は水温が上がり、気体(酸素も)が溶存しにくくなった温暖な時期によく観察されるが、さらに低気圧で空気の全圧が減り、当然酸素分圧が低くなったときには気体の溶解も減り、コイに限らずフナも金魚も鼻上げ行動を見せるのである。昔の方々は「鼻上げを見たら(低気圧だから)雨が降る」ことを知っていたらしいが、溶解度だの分圧だのを知らなくても経験則からそれを悟った観察力は敬服に値する。
おまけに水温上昇のせいでプランクトンの大量発生が重なると、酸欠状態はさらに深刻なものになる。このときばかりはサカナだって酸欠で苦しいワケだからカワセミやらサギやらの危険も省みず酸素を求める一心で水面ギリギリまで口を上げ、水と共に空気まで吸い込む勢いでエラに水流を通すのである。
いやちょっと待て、これは鼻上げではないぞ。
コイは水面ギリではなく、3~5cmの水面下に居るように見えるし、そもそも今は寒冷期である。ヘンリーの法則によれば「気体は水温は低いほど溶けやすい」ので、鼻上げする必要などこれっぽっちもないハズなのだ。それとも水質汚染が深刻化しているのだろうか…
サカナは弱ってはいない。弱ったサカナは横倒しの体勢になりがちだが、そういった気振りは一切ない。ひたすらに水を吸い込みつつ、その場で立ち泳ぎを続けるのみだ。そのうちそのコイの近くにもう一匹のコイがプカーっと浮きながら現れ、距離5~10cmを隔てて向き合うように立ち泳ぎを始めたのである。まるで恋人のように… ここにいたってようやく、私はこの行動自体に何らかの意図があるのだ、と確信するに至った。しかしコイの恋の季節は初夏であり、今はどう考えても相応しくない水温としか思えない。
さらにコイが2匹、元の2匹の左右からプカーっと出現した。みんな角度80度くらいのロケット打ち上げのような姿勢で顔を寄せ合うように向き合いつつも位置は動かず、互いを気にする様子も邪魔する様子もないままにひたすらクチから水を飲み、エラからの排水を繰り返すばかりなのだ。
なにしてるんだろう、私は…
いや、このコイたちは…
私は考えこんでしまった。
ふと気付くと、そこここの5か所ほどにコイの鼻上げグループができていた。1匹のところ、3匹のところ、4匹のところ…
不思議なことに5匹も6匹も群がるグループはない。単なる鼻上げだったら、集団ごと数十~数百匹の単位で水面にたくさんの波紋が生じるし、サカナの向きも秩序も整然とはしていないはずだろう…
★行動の解釈と考察
だとすると、この行動にはある意味の「適切な定員」が合理的に存在しているのではないだろうか。
酸素ではないとすると、これは面白い発見かもしれない。灯火の下は、その照明によって朧げながら様子はわかる。灯火のないところに同様な集団があったとしても、当然のごとくそれを見ることはできない。しかし灯火の届く限りで観察しても、灯火の直下および付近の10m範囲より外には自分の目では観察できなかった。おそらくこの行動は灯火と関係ある行動なのである。
サカナ、灯火と来れば誰もが「集魚灯」を思い受かべるだろう。夜の海で強力なライトを点ければ、動物プランクトンが「正の光走性」によって集い、それを追うように多くのサカナやイカなどが蝟集するので、そこに漁師が網を入れる…というあの漁である。
「そうか、プランクトンか…」
やっと納得できた。
つまり…
寒冷期に入ると、池の底の生物活動も休眠等で不活発になるし、生き物自体の動きも少なくなる
コイも生理的活性は落ちるが活動はしている。しかし食べたくてもエサが少ない
池の底の泥を食べても、春夏秋ほどは満たされない
そういう状況だ。
しかし…
ニンゲンはニンゲンの事情で灯火を21時まで点けている。
池に棲息する動物プランクトンは無意識のうちに灯火下の水面近くに集まってしまう
通りかかったコイの誰かが「おお、ここらへんプランクトン豊富じゃね?」と気付いてしまう
プランクトンは水面近くに集まるため、立ち泳ぎをしていると表層水が効率よく口に入る
その理由は、【鰓耙】で漉しとった残りの廃水を下方に流すと、周囲の表層水がコイの口元に自然に流れてくるからである。このとき、近所のコイが「口元を寄せてくれる」と一層円滑な水の流れが生じ、結果として効率良く採餌ができるのではないか。
このやや複雑ではあるが条件反射的な行動がトクであることをコイが覚えてしまったら、つまり学習能力があれば、池の他のコイも見様見真似で覚える日も来るような気がする。
そこから先は散歩そっちのけで暗い所も灯火の下も水面ばかり見詰めて歩くようになってしまった。
問題はむしろコイの食性であって、プランクトン食性が強い「鮒」であればすんなり辻褄があってしまいそうだが、果たしてコイはそこまでプランクトン食性が強いのだろうか。それともそこまでしなければ満たされないほどの腹ペリ状態なのだろうか。
★今後の課題
今後は条件をもっと絞り込んでいくことだ。
いつからいつまで、そしてそれは表層水温が何度位のときに起きるのか
この行動を起こすコイのサイズはどのくらいか…
と言うのは、なぜかビッグサイズのコイを見掛けていないからでもある。
この行動で本当にプランクトンを効率良く集められるのだろうか
この行動は全てのコイに見られるのだろうか
他の池でも見られるのだろうか
などなど、わからないことだらけでして…
★最後に
こういう行動について御存知の方、専門家や学者の方、なにか心当たりの知見がありましたら、是非御教示賜りたくお願い申し上げます。
御連絡いただければ調査中の池の名称等、具体的な詳細をお知らせいたします。
よろしくお願い致します。
茶茶 サティ
あああ、4000字も書いてしまった…
およそ三か月ぶりの文字並べでした。




