第59部分 太鼓持(ほうかん)
第59部分 太鼓持
「なるほど、コバンザメ、のうぅ」
実は糖金平は日本が堪能である。かつて学生だった頃、選抜されて公費で日本に留学してきたからである。ちなみに東南アジア諸国にはこういった経歴の指導者クラスの人間は少なくない。過去を遡れば孫文、蒋介石、金大中などもそうだった。
台湾総統だった故・李登輝などは日本の台湾統治下で産まれたため
「22歳までは日本人だった」
「難しいことは日本語で考える」
と公言するほどの知日派だったし、彼の晩年には日本の某公立高校の、しかも超エリート進学校向けの講演まで快く引き受けたくらいである。もっとも期待と異なり「体調不良」によりドタキャンされてしまったそうだが… この話には後日談がある。3年前に当日ドタキャンされた件の高校は再び同様な企画を立ててOKをいただいたが今回も同様に当日ドタキャンされ、仕方なく秘書の話しを聞いたそうである。一国の元総統の講演だから価値があるのであって秘書の話しなんぞ聞いても格別の感動などありえないが、それでも有料講演であり、当然のごとく払い戻しはされなかったそうだ。体調不良が事実か否かは知る術もないが、この辺の商売上手は日本人が見習わねばならぬところである。歴史に学べ、とか二度あることは3度あるとも言うが、3度目まであったとしたら、もうほとんど落語の世界であろう… 閑話休題。
「まてよ… しかし… ただのコバンザメでは対等にはなれない、よな。」
大型のサメ、つまり中国にとっていつか小癪なヤツ、邪魔なヤツだと思われたら、台湾制圧の後にはその台湾の二の舞になるかも知れない。いやすでに思われているかも知れない。しかしいますぐ対等になるのはできない相談だ。
「いつまでも… するとやはり… あやつかのぅ、好きにはなれんが…」
糖が言うアイツとは「カリアゲのアヤツ」である。糖は基本的に国民が好きであるし、国に活気があるのは良いことだと思っている。ただしそれは彼が特権を行使して自身の蓄財をしないということを意味するワケではないが…
だから徹底的に国民を虐げ、独裁を強行し、情報を統制し、人権を無視して支配者一族だけのために国民を奉仕させるあのやり方は好きではない。しかしせいぜい北海道に東北地方を加えた広さしかない国土と予算で「国を統治… いや支配すること」と「国際社会で発言権を維持し続けること」を成り立たせようとしたならば、あの統治は止むを得ない… むしろ考え尽くされた高等数学の結果だという気もするのだ。今まであのやり方で国を維持してきた以上、今更人権だなんだという国際世論に肯いて締め付けを緩めれば、たちまち国はでんぐり返る。でんぐり返ればカリアゲ一族の処断は間違いない… ならば路線を変更してはならない… そう一族は考え、今後も同じ路線を取るだろう。
その一族の対策に当たるのが「核」と「大陸間弾道弾」と最近の「極超音速ミサイル」なのだ。最初は中国とロシアのコバンザメだったあの「人民共和国」は「現代版3種の神器」を得、加えて自国民を敢えて人権のない貧困状態にさらし、時に写真や情報をワザとリークさせることで国際社会の注目を集め、さらに違法脱法行為を繰り返したり言いがかりに近い注文をつけて無償の支援を得ようと足掻いている。
国際社会が人権と平等を高らかに謳いあげる一方、美国が世界の警察官を自主的に勤めた世界が大戦後70余年続いてきた。
もともと連合国=反枢軸国が起源である国際連合は、悪平等な運営方針を持っている。
悪平等とは2つの矛盾を指す。1つにはどんな小さな国でも1票の議決権を持つことだ。洋上の島国でも、山地の閉ざされた公国でも1票… つまりその気になれば、ロビー活動という実態のわからない行動と費用とで投票を買うという行為が堂々と可能になっている点だ。中国がアフリカやアジアで露骨に行う投資や融資はこの一環であることも言えるだろう。そして1票あたりの拠出金、つまり金銭的価値は国によって全然違っている。アメリカや日本の拠出金額は発言権と全く釣りあっていないと言えるだろう。
糖に言わせるなら、アメリカなんぞ国連に関する限り51カ国に分かれて51票分の権利を行使してしまえば良いのだ。ただしロシアも中国も追随するのは間違いないが、もしかしてチベットなんかはもう少し中国のタガが緩むかもしれないではないか。
もう1つは「拒否権」である。これはもう… どこが平等なのかは皆目理解できない。明らかに大戦後の戦勝5大国… アメリカ、フランス、イギリス、ソビエト社会主義共和国連邦、中華民国だけが有利な立場にあるではないか。ちなみに過去の拒否権行使回数は、ロシア連邦・ソビエト社会主義共和国連邦が116回、アメリカ合衆国が82回、イギリスが29回、フランスが16回、中華人民共和国・中華民国が16回であり(ただし2020年8月現在)、ロシアのゴリ押しは当然としても、意外にもアメリカも多く逆に中国は少なかった、少なくとも今までは…
改めて眺めてみると、ソ蓮(共産党)が崩壊した後はなし崩し的にロシアが後を継いだワケで、対日戦に限っては日ソ中立条約を土壇場で破棄して僅か1週間ほど勝ち馬に乗り、サンフランシスコ条約も批准しないまま不法にもさらに数か月に渉って樺太や千島列島を強奪し、強盗猛々しく数年間に渉ってシベリア抑留を強行した「エセ戦勝国」である当事者ソ連は既に消滅している。
また名ばかりの戦勝国とはいえ、対日戦ではほとんど逃げまくるだけで勝ちのなかった国民党については満州国崩壊の混乱に乗じ略奪および虐殺しまくった(これは彼らには「報復」であり、いわば仕方ない国民感情とも言える)と言う意味での「勝ち」はあったので、まあそこは止むを得ないとしよう。しかし、その後国民党に取って変わった八路軍(共産党軍)に負けた覚えなどはない。ホンネで言うなら、大日本帝国は現中国には負けていないのである。正しくは当時の中国とオランダを支援した米英に負けたのである。
結局当時親中派であったアルバニアが提出した「アルバニア決議案」が議決されて中華民国(現台湾)が追い出され、中華人民共和国(共産党という名を借りた独裁体制の現中国)が後を襲っているに過ぎないではないか。
余談になるが、あのとき台湾は怒りのあまり抗議の意味を込めて国際連合を脱退してしまった。しかしいまにして思えば脱退すべきではなかったのではないか。当時の国際連合がつい先日まで「常任理事国」であった「台湾の除名」にまで踏み切ったかどうかは分からないが、もし脱退していなければ今の中国の強気はなかったに違いない。つまり国連に籍がある限り、「政治体制の違う別の国」であると主張する論拠は残っただろう。当時の中華人民共和国はまだ立場が脆弱であったし、台湾の味方も数多かったから、あながち夢物語とも言えないだろう。詳しい事情はわからないが、台湾はあのとき何らかの形での「拒否権」を発動してもよかったのではあるまいか。
そして当時「英断」かと思われたアメリカの手のひら返し的外交が現在の混沌の根本にあることを忘れてはなるまい。もし中華民国(現台湾)と中華人民共和国(現中国)を入れ替える必要があったとしても、台湾は台湾という国またはエンティティで認め、中国は中国で国として認めていくことがあったとしても、なにも常任理事国入りまでさせる必要などなかったのだ… どうせ勝ってはいないのだから…
あのとき日本は日本で見事にアメリカの太鼓持ちを勤めあげ、しっかり台湾(かつての敵だからまあ仕方ないけど)を裏切っている。田中角栄とカンカンランランの「パンダ外交」を覚えているヒトは多いが、あのとき台湾を裏切ったツケは半世紀を越えた今、大きな利息を伴って支払いを求められていることまで連想する方はおそらくほとんど居ないのではあるまいか。




