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「新井の弟さんの子かぁー!おっきくなったなー!」
場違いな声をあげたのは旦那だった。
あ、そうだ。
旦那の同窓生だった。
興味がないのかと思ってずっと放置プレイだったわ。
ん?てか、私のことをずっと放っておいて無言だったよね。
なんで今さら声あげた?
「えっと…あの…新井修です。今日はいらしてくれてありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる天使にほっこりしながら、旦那に若干の殺意を抱いた。
その顔は私がさせたかった!!
「畏まらないでください!今日は子猫を見せてもらえると聞いたので、フランクにお願いします!」
「ん?見せてもらえる…?」
「あー!猫はどこにいるの?えっとリビングにいていいよね!?連れて来てもらっていいかな?」
「……もしかして、おばさんまたですか?」
「っ!リビングで待たせてもらうねー!どうぞー!上がって!」
セレブ奥様が近所のおばちゃまに変身した。
うん。
この人は親しみやすい人だった。
見た目に騙されていた。
なんだろう…勝手知ったる他人の家的な。
弓子さんは弟さんの家だというのに好き勝手だ。
こりゃ親族は大変かもしれない。
リビングに通されてしばらくすると、2匹の仔猫を抱えて天使が現れた!
その姿はまさに天使でした。マジで。
神様ありがとう、私の生はここまでね…
と思うくらい神々しい天使でした。
仔猫は、白黒ハチワレの女の子と全身黒っぽい男の子。
修くんが目の前のテーブルに2匹を置くと、ハチワレの子は必死に私の方に歩いてくる。
男の子はへっぽこ旦那の方へ。
仔猫特有の歩き方でそれだけで顔が緩みっぱなしになる。
ぽてぽて歩いてるけど、何にもないところでペチャってするのよ!めっちゃ可愛い!!
「あの、こんなこと言うのはアレなんですが、実はハチワレの子しか残ってないんです」
ん?なんですと?
「男の子は明後日引き取りに来るんです」
申し訳なさそうにする天使に私は何も言えなかった。