狩人は勇者の夢を見ない
初投稿です
初心者で豆腐メンタルなので
優しいアドバイスお待ちしています
ぐしゃり、と肉が音を立てた
刹那、肉は血を飛び散らかして
五月蝿い唸り声をあげることなく倒れた
その瞬間、歓喜の感情が湧き出てきた
自分の剣で命を終わらせる快感
ムワッと臭う死体の臭い
剣についた飛び散った血の跡
その全てが愛おしいものと感じた
それが私の初めての魔物討伐に対する感情だった
私は転生者だ
前世では普通の学生だった
いや、虫の死体を解剖するのが趣味だったため、
普通ではないのだろう
かといって殺人や動物虐待なんてものは
犯したことはないし
これからも犯さないものだと思っていた
けど、この世界は違う
多少は命を狩らないと生きてはいけないのだ
この世界には動物の他に魔物というのが存在する
その魔物は人間に害を与える
なぜなら、人間に害を与えるためにできた生物だから
そう聞かされたのはいつだろう
その魔物を討伐し、私はゆくゆくは
魔物を生み出した張本人、魔王という存在と
戦い、そして、討伐することを周囲から望まれているらしい
らしい、とは、そのことに関してさほど興味ないから
言われても右から左へと聞き流しているのだ
前世から変わらず私は生憎、
人間というものに興味はない
だから私は興味を持てない
「勇者さまー!」
今代の勇者と言われていることも
「必ず、魔王を倒してください!」
期待されているということも
そこに倒す魔物さえいれば私はそれでいい
結果的に人を助けたことになっていたとしても
感謝される筋合いはない
だけど、気になるのだ
悪逆非道の限りをつくしていると言われる魔王
そいつは今何を思い、何を感じているのか
気になるのだ
私がその命をとる時、
魔王が何を感じるかを
「クレア様、本当に行かれるのですね」
「ああ、そうやって育てられたからな」
「女の子なのに、あの家系の唯一の跡取りだからといって
無茶をしてはなりません
ダメだと思ったら引き返しても「は…?
私は跡取りだからという義務でやってるわけじゃない
勇者なんて肩書きも興味はない
私が興味あるものは命あるものを狩ること
ただそれだけ」
そういうと私を育てた家庭教師は静かに涙を流した
「こんな残酷な人にするために
勇者として育てたわけではありません」
彼女の瞳は、赤かった
怒りで真っ赤になっていた
そのことさえ、何も感じなくなっていた
「そう…」
勇者として育てられてから
人間として失ったものは多いのかもしれない
だけど、
両親には感謝してる
殺しても責められず、逆に崇拝されるこの世界に
私を誕生させたことに
きっと前世の私が生きたかったのは
こういう世界だったと思うから
「…我をここまで圧倒するとは…」
「黙って、死体に騒がれるのは嫌いなの」
「フッ…死体か…」
「そうよ、私は命を狩るのが仕事なんだから」
結論から言うと魔王はそんなに強くなかった
どうして今まで誰も倒せなかったのか不思議なくらいに
さて、次はどんな命を狩ろうか
今まで相手にもしていなかった
盗賊でも狩ろうかな