第1.5話 陰謀
「お帰りなさいませ」
半年ぶりに城に戻ると、赤髪ストレートでロングヘアーの女に出迎えられる。
この女は我が部下である。名はローズ。
右目の下にある泣きぼくろが特徴的だ。
「それで、例の魔道具は手に入ったのですか?」
ローズの問いに少しばかり機嫌を悪くしつつも、それに答える。
「いや、あと一歩のところまで追い込んだのだが、それこそその魔道具で逃げられてしまったよ」
「羽賀博光……、やはり只の男ではないということですね。しかし、これからどうなされるおつもりですか? 魔王様にその魔道具を献上しなければならないのですよ? もう期限にも余裕がなくなってきましたが……」
ローズの言葉で、より焦燥をおぼえる。
魔王様の命令は絶対。なんとしてでもあの魔道具を羽賀から奪って献上しなければ、俺は殺されてしまうだろう。
あのお方はそういうお方なのだ。
「そんなことはわかっている。それに、只々無駄にテディウムたちを暴れさせただけに終わった、というわけでもない」
「と、言いますと?」
「羽賀をこちらの世界に誘導できたのだ。これで、色々とやりやすくなる」
「なるほど、そういうことですか。確かに、私は向こうの世界には行けませんものね」
「ああ、ここからはお前にも手伝ってもらうぞ、ローズ」
「元よりそのつもりです。……では、私はそろそろ」
軽く一礼して去っていくローズ。
……さて、羽賀がこっちの世界に留まっている間に、早く次の手を打たなければな。