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第七話 戦乙女の役目って面倒くさいのね。

「あ~……こりゃ助からんわ」


「丸焦げッスね」


「直撃を受けたんだ。そこら辺は仕方がねぇ」


「うっわぁ、件の猫攫いかもしれないけど、罪悪感が半端ねぇ!」


 さて、先程、俺がベトッフデウフクバ――反対から読むと『爆風で吹っ飛べ』と読める呪文を詠唱したことで発動した拡散し、周囲にある物体を悉く爆破する魔法の直撃を受け真っ黒く焼け焦げた人間の死体が、俺の足許に無造作に転がっている。


 え、どうでもいいけど、嘘を吐くなって? いやいや、マジで罪悪感が半端ないぜ――俺は、なんだかんだと、魔法でヒトを殺しちまったんだ……。


 ああ、マジで心が痛い……痛すぎる……殺っちまった人間が、今いるニャオーダの村に潜む悪党こと三人の猫攫いのひとりかもしれないけど……。


「アルテナ、お前は殺人をやっちゃいないぜ」


「な、なんだってー!」


「うーん、コイツは〝すでに死んでいる〟んだ」


「ちょ、ナニを言っているんだ? 意味がわからんのだが……」


「要するに、コイツはゾンビだってことよ」


「ゾ、ゾンビだと!? そ、それじゃ……」


「ああ、お前はゾンビを退治したんだ」


「お、おお……」


 ゾンビ……だと!? ホラー映画ではお馴染みの生ける屍こと〝あのゾンビ〟だと? そんなゾンビは、死体が何かしらの要因――例えば宇宙から降り注いだ怪光線とか怪しげな薬品のよって蘇った死者のはずだったな。


 うーむ、今いる世界は異世界だし、本来いるべき世界ではマジでありえないSFチックな話が、ごくごく普通の出来事として通じそうだし、ゾンビが存在していても別におかしな話ではないな。


 ああ、魔法によって蘇った死者という線もありえるかな、十分。


 ま、まあ、とにかく、俺の足許に転がっている真っ黒焦げの死体は、生ける屍ことゾンビである。


 ふう、心から安心したぜ――殺人を犯してワケではなく人畜有害な存在であるはずのゾンビを退治したことになったワケだしね!


「親分がゾンビだと!? それはマジかヒヒヒーン!」


「あ、でも、ありえるモー……親分の身体から時々、腐った肉の臭いがしたモー……」


 む、むう、瓦礫の中から馬獣人と牛獣人が飛び出してくる――メズキンとゴズキンだったかな?


 んで、件の俺が退治したゾンビとは、コイツらの親分であるダクボのことである。


「ゲ、ゲェーッ! もしかして、お前らは俺達を捕まえるためにやって来たマーテル王国の連中だなブルル!」


「親分がああなっちまったわけだし、ここは逃げるモー!」


「逃げさんッ――バクホ、ホバクホバ!」


「七色の光の網…だと…!? それも魔法なのかーッ!」


 分が悪い――と思ったんだろうメズキンとゴズキンが、俺達の目の前から踵を返す……逃げるのか!


 だが、逃がすかッ――とばかりに突き出したマリウスの両手の掌から、七色の光――虹の如き光の網を放たれる。コイツも魔法なのか? ああ、そういえば、マリウスが呪文を詠唱していたし、間違いないだろう。


「よぉし、猫攫い共はこれで――ん、そういえば、コイツらだけだろうか?」


「また魔法をぶっ放せして出てくるんじゃないか? 他にもいたならな――っと、早速やってみっか☆」


「待って! 他の猫攫いがいたとしても多分、逃げたと思う――悪の気配は、そこにいる馬と牛の獣人からしか感じないしね。それより、ゾンビをどうにかしましょう。早いとこアレの魂の解放しないと蘇る可能性があるわ!」


「わお、それは確かに……って、今、モゾモゾと動いたッス!」


 そういえば、猫攫いは他にいるんだろうか!? だが、仮にいたとしてもオリンデの言う通り,スタコラサッサとトンズラを決め込んだに違いない。オマケに悪の気配とやらもメズキンとゴズキン以外からは感じないっていうし。


 魂の解放ねぇ……とにかく、ソレを行いないとダクボ――ゾンビを完全に倒せないっぽいぞ。なんだかんだと、このまま放っておくと蘇ってしまうっぽい!


「ゾンビはね。操屍術の知識をかじった程度のド素人でもつくれちゃうお手軽な不死者って言われている。それはともかく、すでに生命活動を停止した身体を死霊使いなどの魔術師が行使する操屍術(ネクロマンシー)によって強制的に動き続けている場合が多いわ。ああ、ゾンビの中には死にたくない一心から、自ら不死者になった個体もいるのよねぇ、困った困った。さて、そんなモノは別として、奴らの身体を浄化し、魂を不浄な肉体の外に出さなくちゃいけない――ソレが魂の解放に繋がるのよ」


 長々とした説明ご苦労様です、オリンデ先生☆


 うーむ、そんなオリンデの話を聞いていて思ったんだが、仮にゾンビ系の怪物――生き物の死体を媒介としてつくられた怪物と遭遇した場合、背後にいるんだろうなぁ、死霊使いという黒幕的存在が――。


「さぁ、真っ黒焦げとなったゾンビが、再び動き出す前に――ミタマミタマ、タマミタマ、ミタミタタマタマ!」


「うええ、なんだよ。そのヘンテコリンな呪文は……って、おい! 黒焦げとなったゾンビの身体が一瞬で崩れ落ちたぞ。ああ、そんな崩れ落ちて灰の山と化したゾンビの身体から黒い球体が飛び出してきたぞ」


「アレが、あのゾンビの魂だ。しかし、案の定、猫攫いの魂なワケで黒魂かぁ、コレを送ったら絶対に怒るだろうなァ……」


「間違いなく怒るだろう。ブリュンヒルデの姐さんあたりが……」


「な、なあ、そんなことより、その黒魂ってなんだよ?」


「ん、ありていに言うと――悪人の魂ってところね」


 オリンデがヘンテコリンな呪文を詠唱する――とその刹那、吹き荒ぶ猛風によって一瞬のうちに吹っ飛ぶ砂の城の如くゾンビの身体が崩れ落ち灰の山が出来上がる。


 所謂、浄化の呪文ってヤツかな……かな?


 さてさて、崩れ落ちたゾンビ――灰の山から真っ黒く染まったゾンビの魂が飛び出す。へえ、悪人の魂ってヤツはドス黒いのね……。


「アルテナにもいずれ話すつもりだったけど、丁度イイ機会だから、今、話す。アタシ達、戦乙女が地上界に降りる際、〝とある使命〟が下るんだ。ウチらのボス――ワルワラ宮殿の主であるオデンの姉貴からね」


「ちょ、マリウス! オデン様のことを姉貴なんて呼んじゃ駄目よ!」


「美味しそうな名前だなァ、ワルワラ宮殿の主の名前って☆」


「む、むう、とにかく、私達はオデン様の命令で人間の魂を集めるという使命を帯びているのよ」


「ふーん、何気に面倒くさい命令だねぇ……」


 俺が、この世界に転生した直後にいた場所ことワルワラ宮殿の主――要するに、戦乙女のボス的存在はオデンというのか……お、美味しそうな名前じゃん。


 それはともかく、人間の魂を集めろって!? 美味しそうな名前の戦乙女のボスことオデンってヤツも面倒くせぇ命令を下したもんだ。


 まったく、どんな理由があるんだろうねぇ。なんだかんだと、先輩戦乙女であるマリウスやオリンデに訊いてみるべきだな、うんうん。


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