第26話 俺、甘党な死霊使いと遭遇する。
兎天原の東方以上に存在すると言われる兎天原南方の砂塵の底に埋もれた未発見状態の古代ウサルカ文明の遺跡を発見し、名声を得たいモノ。
前述した古代ウサルカ文明の経済を支えたとされる金鉱石の埋蔵量がトンでもない隠された金鉱山を発見できりゃ一夜にして巨万の富を得られる! ――と信じて疑わないモノ。
男女、種族に問わず野望、そして欲望を駆り立てるシチュエーションが数多く眠る地である兎天原の南方へと向かうモノ達の中継点――俗に冒険者呼ばれるモノ達の村であるエフェポスの村の一般住人は、兎獣人や猫獣人といった小型動物型の獣人達である。
まあ、従って家屋のサイズは、そんな兎獣人等の小型獣人に合わせたモノばかりである。
ハハハ、ここにやって来た人間の冒険者は野宿をするか、もしくは数は少ないけど存在しているっぽい人間サイズの大型の宿泊施設なんかを探すしかないよなァ。
「むう、小さな家がたくさん。アレじゃホテルのような宿泊施設なんかも小さすぎる気がする」
「お前、もう休みたいのかァ?」
「そりゃ、そうだ。エフェポスの村のような大きな村へ来たんだし、極上とまではいかないが、そこそこの値段で泊まれるホテルなんかがあるんじゃね? そう期待してもいいだろう?」
「あ、ああ、それもそうだなァ☆ アタシは風呂に入りたいな。風呂なら誰にも気兼ねなく素っ裸になれる!」
「さ、流石に気兼ねなく――とはいかないけど、俺も風呂に入りたいな」
「それは今は後回しよ。今は村の墓地へ往く――それが私達の目的よ」
むう、どうでもいいけど、そろそろ休憩したところだぜ。この世界に転生してから、それほど時間は経ってはいないけど、横たわるくらいの休みは欲しいしね。
数は少ないけど、人間サイズの大型の宿泊施設を探したところだ。ああ、宿泊費は安いけど、そこそこのサービスが受けられる場所があればベストなんだが……。
だが、オリンデの言う通り、ホテル等の宿泊施設を探すのは後回しだな。
今は村の墓地へ往かなきゃいけない。大手宗教団体であるラーティアナ教の神官であると同時に、情報屋であるラビエルに頼まれたんだ――ゾンビマンという怪人を捕まえてくれって。
ああ、そんなゾンビマンとかいう怪人は死霊使いだ――もしかすると、俺達が追う盗賊姫かもしれない。
ん、その前にゴブリンの姿に変えられた元天使を名乗る二人組のオッサン――ハーゲンとゲハルスの天界復帰計画にイイように乗せられたんじゃなかったって? むう、考えてみりゃ、そうかも……。
そういえば、戦士の魂ってモノも集めなくちゃいけないんだったなァ。
さて。
「さ、見えてきたぞ。あそこはエフェポスの村の墓地――ええと、確かヨモツヒラサカ共同墓地だったかな?」
「うっわぁ、背の高い雑草が密生しているッスね。どんだけ手入れをしてないんスかァ、ここは」
「そういえば、新しい墓地が完成したらしいですね。ああ、なるほど、それで古い墓地を放置ということですかね」
「むう、そんな場所だからこそゾンビマンのような遺体を掘り起こしてゾンビ化させるような外道に利用されるんだろうなァ……」
ム、ムムム、ここが件の怪人ゾンビマンが出没するという墓地かァ……ヨモツヒラサカ!? どこかで聞いたことが墓所名だなァ。
まあ、とにかく、ひとつ言えることは、ゾンビマンのような不届きモノが身を隠すには丁度イイ場所だな、ここは――ナニせ、二メートル近い背の高い雑草が、あっちこっちに密生しているってワケだし。
やれやれ、本当にヤスの言う通りだ。ちったァ手入れくらいしろっての――なんだかんだと、ここはご先祖様が眠る場所なんだし、まったく。
「あ、今、ナニかが草むらの中で動いたわ!」
「むう、気のせいだろう? それより、このおはぎをどこで使えばいいんだァ?」
ラビエルから手渡されたおはぎなんだが、これ食べてもイイよね?
どこで使うのかがさっぱりだしなァ……。
「ん、奥に唯一、綺麗に手入れがされた状態のお墓があるわよ」
「アレは墓はないな。ナニかしらの石碑だと思うぜ」
「石碑ねェ……お、そんな石碑のところに皿が置いてあるぞ」
長いこと手入れがされていないおかげで、背の高い雑草があっちこっちに密生するヨモツヒラサカ共同墓地の中で唯一、そんな背の高い雑草をキレイに刈り取った形跡がある場所を発見する――所謂、石碑ってヤツだな。
――で、石碑には奇妙な幾何学模様文字がびっしりと石碑に刻まれている。兎天原特有の文字だろうか? オマケに古ぼけた一枚の皿が置いてある。お供え物をここに置けってか? ああ、おはぎがあったなァ。
「ん、小さいけど、立て札があるぞ。何々……『蘇られせて欲しいモノがいたら、この私、屍王女ネクロリリーにお任せあれ☆』――むう、悪質な商売を!」
「ネクロリリー!? ゾンビマンのことかしら?」
「あ、立て札には、さらに妙な文言が書いてあるッス」
「『お金もイイけど、甘いお菓子もイイよね。出来れば、おはぎを☆』……そ、そうか、このおはぎを使えば、ネクロリリー――ゾンビマンかもしれん怪人をここを呼び寄せて捕えることができるかもしれないなァ」
さて、石碑の横に木製の立て札が見受けられる。んで、そんな立て札には、屍王女ネクロリリーとかいうモノが、如何にも悪質で冒涜的な仕事を請け負う――という張り紙が貼ってあるワケだ。
屍王女ネクロリリーか、件の怪人ゾンビマンとナニかしらの関わりがあるんだろうか? いや、関わりというかゾンビマンの正体なのかも――。
『おおおッ――わらわの大好物であるおはぎの匂いがするぞぅ!』
「今の声ってもしかして!?」
「シッ――声を出すな、兄貴! 石碑の側から離れるぞ。草むらに身を潜めるんだ!」
「お、おう!」
むう、甲高い女の声が聞こえてくる——屍王女ネクロリリーがやって来たのか!? とりあえず、石碑の側から離れよう。背の高い雑草が密生する草むらに身を潜めて様子を窺っておこう。




