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第22話 ゴブリン増殖機を発見したのですが壊してもいいかな?

「ここはまだ爬虫類型獣人が囚われている区画だ。捜せば、まだ囚われている爬虫類型獣人がいるかもな」


「ん、じゃあ、研究所も兼ねているから、ここは……」


「ああ、多分、さっきの区画と同じく盗賊共が、ナニかしらの研究を行っているかもね」


「ゲ、ゲェーッ! また腹を裂かれた状態で生かされている犠牲者を見なくちゃあいけのかァーッ!」


 俺はもう見たくないぞ。生命の石とやらの加護のおかげで腹を裂かれた状態でも平気な生きたままのゾンビ化した状態の犠牲者の惨たらしい姿を――。


 とそれはともかく、今いる盗賊共――元名門騎士団だったらしい聖イリアーナ騎士団がアジトとして利用しているウサルカ文明とやらの古代遺跡の地下空間は、思いの外、広大だ。


 ナニせ、ここはまだ先程までいた爬虫類型獣人が囚われている区画の中だしね。それと同時に、盗賊共が人体改造という目を背けたくなるような冒涜的な研究を行っている研究所も兼ねている場所だ。


 そんなワケだ。この区画にいる以上、ナニかしらの研究現場に行きつくはずだ……い、嫌だな。本当に嫌だな……。


 ん、あの熊さんのことを忘れているんじゃないのかって? 忘れるかよ、リドラーの奴、次に遭遇した時に捕まえてやる!


「ん、皆さん、この先の区画に盗賊共がいるかもしれません」


「あ、本当ッスね。ウーリンさん」


「このダミ声はゴブリン共じゃね?」


 さて、俺達は狭い通路を集団で進んでいる。神官ウーリンを筆頭とした俺達が牢屋から解放した哺乳類型獣人達、それに真っ白な毒蛇ことサマエルを筆頭とした爬虫類型獣人達が合流し、ゾロゾロと集団でね。


 無論、連中の目的は盗賊共に復讐することだ。なんだかんだと、奴らによって拉致監禁という酷い目に遭ったワケだし、復讐したくなる気持ちがわからないでもないな。


 ん、それはともかく、今いる通路の先から声が聞こえるってウーリン、ヤス、ハニエルこと兄貴が言い出す。流石は聴力の優れた兎の獣人だ――そんな声はダミ声? ゴブリン共かもしれないって!? もしも本当なら、あの醜い小鬼共がいるのか、この先に。 


『ヨシヨシ、新シイ仲間ガ誕生シタゾ』


『シカシ、聖いりあーな騎士団ノ連中ハ面白イものヲ見ツケテキタモンダゼ』


『アア、確カニナ。ダガ、新シイ仲間ハ、ミンナ大人ノ姿デ産マレテクル……不思議ナコトモアルモンダ』


『ソウイウ風ニ調節サレテイルンダロウヨ。マア、ドンナ原理デ動イテイルナンテコトハ、俺達ノ脳ジャ理解デキナイケドナ』


『マッタク、新シク仲間ガ誕生スル度ニでかイ音ガ出ルノガ鬱陶シイケド、俺達ハ無駄ナコトヲ考エズニ仲間ヲ増ヤシテイケバイイッテコトサ。難シイコトヲ考エルト頭ガ痛クナッテクルシナ』


 とそんなゴブリン共が雑談する声が俺にも聞こえてきたぞ――んん、それと同時にヤカンの注ぎ口から勢いよく沸騰した湯気が吹き出すような音も聞こえてくれる。


「う、変な臭いがするワン! 鼻が痛いのだワン!」


「ん、私達にはナニも……イヌウス、どんな臭いなのか具体的に説明してよ」


「ご主人、了解したワン。そうだなァ……オッサンの靴下が放つ酸っぱい臭いだワン」


「うげぇ、その例えは……あ、ああ、かすかにだけど、酸っぱい臭いが漂ってきた!」


 むう、ゴブリン共がいる区画へ近づくに連れて酸っぱい臭いが漂い始める――エルフィアの使い魔である柴犬のイヌウスの言う通りだ。この臭いはオッサン臭だ! 加齢臭も混じっている何時間も履いた状態の靴下が放つ酸っぱい臭いだ!


「う、うわ、みんな見るんだ! でっかい水槽がたくさんある……ん、そんな水槽の中にゴブリンの姿が!」


「ちょ、兄貴、声がデカすぎッス!」


「ナ、ナンダ、オ前ラハーッ!」


「ほら、見つかってしまったじゃないッスか!」


「む、むう……だ、だが、アレを見て驚かん奴は流石にいないと思うぞ、ヤス!」


 兄貴とヤスの漫才のような相槌はともかく、確かに大きな水槽がたくさん見受けられる――う、本当にゴブリンが、そんな水槽の中に満たされた液体の中に見受けられるぞ。


 お、おいおい、これってSFモノに見受けられるクローン増殖機って感じの機械ではないだろうか!? 各水槽には赤い三本のホースも見受けられ区画の奥にある巨大な機械装置のようなモノに繋がっているしね。


「う、例の悪臭の正体がわかったかも……足許を見ろ! あっちこっちの水溜まりがあるだろう? その水溜まりっていうのは、あの水槽から零れ落ちたモノが放っていたんだ」


「う、うぐッ……本当だワン。水溜まりから強烈な加齢臭混じりの酸っぱい臭いが漂っているのだワン」


「この臭い液体は一体……オエッ! 顔を近づけると吐き気はするッス!」


「恐らくは培養液だろう。この臭い液体は水槽ン中のゴブリンの成長を促進させる効果あるんだろうなァ」


「そんな話はどうでもいいわ! ゴブリンが一斉に襲いかかってきたわ。対処するわよ、みんな!」


 周囲に漂う加齢臭が混じった酸っぱい臭いは、恐らくは――いや、間違いない。周囲に多々、見受けられる大きな水槽――訂正、ゴブリン増殖機(?)の中に満たされている人口羊水的なモノである培養液の臭いだろう。


 さあ、それはともかく、ゴブリン共が俺達に対して襲いかかってくる――うお、多分、五十匹はいそうだぞ、おい! だが、こっちには哺乳類型獣人と爬虫類型獣人が合流し、数の上では有利だ! し、しかし、どいつもこいつも武器を持っていないのが痛いかな……かな?


「ヤ、ヤベェ! 俺、武器を持ってない……」


「武器――拳ひとつあればいいウホ!」


「さ、流石はゴリラ! 鉄拳ひとつでゴブリンを殴り殺せそう……って、本当に殺っちまったな、おい」


「ウホウホ、ついつい本気を出しちゃったぞ☆」


「人畜有害なゴブリンとはいえ、殺生はよくありませんね。ここは私に任せてくれませんかね」


「神官ウーリン、一体、ナニを?」


「まあ、見ていてください。ではでは……」


 哺乳類型獣人、爬虫類型獣人の連合軍(?)は、誰ひとり武器は持っていない――とはいえ、徒手空拳でゴブリンを鉄拳ひとつで斃せるモノも何気にいたりするんだよね。それがゴリラの獣人だ。


 だが、人畜有害なゴブリンとはいえ、殺すのは良くない――と神官ウーリンが言い出す。むう、それならどうやってゴブリン共を……お手並み拝見といきますか。


「ムネムネロネロ、ムネムネロネロネ、ムネムネロネロネ……」


「ん、呪文? う、うお、眠くなってきた……ンガーッ!」


「あ、兄貴が立ったまま眠ってしまったッス!」


「ヤス、ウーリンって兎さんの前に居たら、アンタまで眠っちゃいわよ」


「うへ、そうなんスか、ご主人! 危ない、危ない!」


 反対から読むと、ネロネロネムネム――それはともかく、ウーリンはゴブリン共をすべて眠らせようとしているのか!? まあ、すべて眠ってしまえば平和的解決、平和的決着に繋がるかなァ。


「睡眠波です」


「そのまんまだなァ——え、耳から放出しているのかァ!」


 睡眠波――そのまんまの効果の魔法である。しかし、ウーリンの耳から放出されている。まるで電波を放つパラボナアンテナみたいだな、おい。


「お、ゴブリン共はみんな眠っちまったか!?」


「まだ起きている個体がいるぞ!」


「十匹いるかいないかってところだな。その数なら!」


「よし、任せろウホ!」


 ム、ムム、ウーリンの耳から放出された毒電波――いやいや、睡眠波から免れたゴブリンもいるが、その数はわずかに十匹ほどである……む、獣人達が残ったゴブリン共に襲いかかる! さっきの逆パターンの展開だネ。


「あ、リドラーだ! 捕まえてやる……わ、わわッ!」


「オリンデ、どうした?」


「し、死んでいるわ。リドラーが死んでいる……」


「むう、解毒剤が見つからなかったんだな」


「ムウウ」死体ダト賞金ガ半額ニナッテシマウ!」


「アア、生ケ捕リニシナクチャナァ……」


「わ、ゴブリン! まだいたのか、魔法で……」


「マ待テ! 私ダ、はーげんダ!」


「げはるすダヨ! 盗賊ノ親玉ノ魔法デごぶりんニ変身サセラレテシマッタンダ!」


 ん、眠りこけるゴブリン共の中にリドラーの死体を発見! 解毒が間に合わずに死亡したって感じね。


 さて、盗賊団のボス――あのフードをかぶった人物は、対象をゴブリンに変化させる魔法を使うようだ。そんなこんなで先に進んだハーゲンとゲハルス兄弟は、醜い小鬼ゴブリンの姿に変化してしまったようだ。


『う、うわあああ、なんじゃこりゃああああーッ!』


『おおお、俺の身体が腐っているじゃあないかァ!』


『どどどッ……どういうことだ! 身体中に紫色の斑点がァ!』


『く、臭ェ! なんだ、この臭いはッ……ふ、腐敗臭!?』


 そんな声が響きわたる――む、隠れていた盗賊共が忙しなく物陰から飛び出してくるのだが、連中の様子が変だ。自分の身体に起きた変化に戸惑っているしね。


「盗賊共、物陰に潜んでいたのか!」


「……でも、ナニか変ね」


「変というか気づいていないのか、アイツら……」


「自分がゾンビ……生ける屍だってことに気づいちゃあいないんだよ」


 そういえば、連中はゾンビだったな。恐らくは死霊使いリドラーが行使す操屍術によって――が、死霊使いのリドラーが死亡したことで急激に身体の腐敗が進行したんだろうなァ。


 あるモノは身体中に死斑が出来たり、またあるモノは腐敗のよって顔面の皮が剥がれ落ちる――うええ、上半身と下半身が腐れ落ちるカタチで分断したモノも……禍々しくグロテスクな光景だ……見るに堪えないぜ。


「頭がボーッとしてきたぞ……UGAAAAAA!」


「お、おい、どうしたんだ……GUGYAAAA!」


「うう、俺は俺は……GAOOAAAA!」


「ううう、姫ッ……アナタの仕業ですね! リドラー卿以外に我らをゾンビ化させることが出来るとすれば……UGAAAA!」


 むう、連中の理性が一斉にぶっ飛んだ様子。リドラーが死んだことでゾンビ化した状態とはいえ、理性だけは保っていたが、それも――ん、リドラー以外にも死霊使いがいる……だと!? ソイツは姫? もしかして、あのフードをかぶった人物のことか!?


「ソウイエバ、盗賊共ノぼすハ冒険者ノ村ヘ往ク――ト言ッテイタゼ」


「冒険者ノ村……えふぇぽすノ村ノコトジャナイカ?」


「おい、ゴブリン兄弟! エフェポスの村っつうのは、この俺とヤスの故郷じゃんかよー!」


 なんとッ! 盗賊団のリーダー格――つまり頭目(ボス)は、隠し通路を利用し、アジトとして利用しているウサルカ文明の古代遺跡の地下空間の外へ行ってしまったようだ。


 んー……これは追うべきだよな? うん、追うべきだ――隠し通路を見つけて後を追いかけよう!


「ちょ、完全なゾンビと化した盗賊共はどうするんだ?」


「それなら私がなんとかするわ。アンタ達は先に地上へGOよ。ウフフ、戦士の魂は全部、貰うわよ!」


「むう、私も戦士の魂を大量に欲しいわ。ゾンビ共は元は勇敢な騎士だし、意外と良質な戦士の魂を持っていそうだしね」


「んじゃ、オリンデお前も残れよ。アタシとアルテナは盗賊共に拉致監禁されていた獣人達を連れて外に出るぜ。んー……盗賊のボスの行方も気になるしな」


 盗賊共ことゾンビ共は、元イリアーナ騎士団という名門騎士団の連中だ。そんなワケだから、もしかすると良質な戦士の魂を持っている可能性がある。全部やっつけて戦士の魂を採取だッ――と思うところだが、神官ウーリンやサマエルといった囚われの身であった獣人達を地上へ連れ出さなくちゃいけない。


 なんだかんだと、獣人達を故郷に還してやるべきだよね。


 さ、ゾンビ共は戦士の魂をすべて自分のモノにしたいエルフィアに任せて、俺達が今いるウサルカ文明の古代遺跡の地下空間から脱出だ。

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