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第一話 どうやら俺は戦乙女に転生したようだ。

 俺の名前は櫻井……櫻井健一だった筈だ。


 身長は180cm弱、体重は70㌔ほど、親父の遺伝のせいで頭の天辺の髪の毛が薄いのが短所であるが、自分自身ではナイスガイだと思っている41歳のオッサンである。


 だが、妙だ。そんな俺の目の前の壁に据えつけられている鏡には、黒いTシャツと白いローレグパンツ姿の大体、十七歳かそこらのキュートな小柄な黒髪ロン毛の女のコの姿が映り込んでいる。


 そう……今の俺だよ、俺ェ! 詳しいことは神のみぞ知るってか? そんなこんなで俺は一度、死んで転生したようだ……ちょ、俺はいつ死んだんだよ! き、記憶にございませんってヤツだぜ!


 ハハハ、しかし、女に転生するとはね……神様、意地悪にもほどがあるぜ! しかし、なんだろう嫌な気分じゃないんだよな――むしろハイテンションだ!


 む、むう、そう思ってしまう俺って一体……。


「まったく、生活のリズムが崩されたみたいだぜ」


「え、パンツ一丁が基本スタイルなのか!?」


「その通り! だが、外に出歩く時は、ちゃ~んと服を着るぜ。だが、気分次第でどこでも服を脱ぎ捨てるぜ。外だって気にしないかな……デュフフフ☆」


「露出狂かよーッ! 変態だ……変態的な考え方だーッ!」


 むう、スタイル抜群の美女なのに露出の趣味があるっぽいところが珠の傷だなぁ、マリウスは……。


「さて、見慣れん顔だな。もしかして新人か?」


「その通りよ。ついさっき誕生した新たな姉妹よ――あ、ああ、名前は……まだないわ」


「ちょ、俺は櫻井健一という名前が……」


「アルテナだな、うんうん」


「ちょ、勝手に決めんな!」


「いんだよ、細かいことは!」


「む、むう……」


 ちょ、勝手に名前を決めないでくれィ! 俺には櫻井健一という名前があるっていうのにアルテナなんて名前をつけるんじゃないィィ! だが、改名も心機一転みたいなモノか……。


「ああ、そういえば、お前――俺は男だって言ったよな?」


「おう、言ったさ! 俺は男だ……違いねぇ!」


「ふーん、なるほどねぇ。転生前の記憶を持ったままワルワラ宮殿に来ちまったのかな、お前さん?」


「転生?」


「ねえ、そんなことより男ってナニ? さっきから気になって仕方がないわ! どんな生き物なの?」


「ん~……ありていに言おう。男ってのは股間に亀の頭に似た角を持っている生物だ」


「あ、ああ、違いないな。俺にもあった筈なんだけどなぁ……」


「アア、アルテナ! パンツの中に右手を突っ込みながら、うんうんって頷くな、下品よ、下品! まあ、しかし、男……そんな奇妙な生き物が存在していたのね。知らなかったわ……」


「ハハハ、下界に往くことがあれば出会えるかもな」


「下界? ハハハ、まるで天国にでもいるかのような発言だな」


「ん、天国? ここは天界だから天国に相違ないね」


「な、なんだってー!」


 ちょ、俺は天界――天国と言っても間違いない場所にいる…だと…!? んで、今いるワルワラ宮殿とやらは、天国にある神様が住まいで、そこに俺はいるのか……。


「信じられないって感じの心情が顔色に彩っているな」


「まあ、仕方がないわ。私も最初はそうだったわ」


「あ、それはともかく、私ンとこのアルテナを連れて来たってことは使い魔の件もあるんだろう?」


「使い魔?」


「一言で説明すると、お前さんの専用の従者だ」


「へえ、そりゃいいね!」


「ま、そんなワケだ。今から使い魔の卵を渡すから、チャッチャと誕生させるんだ」


「え、えええーッ! いきなり、そう言われても……わ、わあ、危ない!」


 ん、俺をマリウスに会わせたのには、使い魔の件も孕んでいるっぽいな――って、おい、マリウスィィ! いきなり、そんな使い魔の卵とやらを投げ渡すなっつうの!


「ふう、危うく落とすところだったぜ。それはそうと使い魔ってどんな姿をしているんだ?」


「どんな姿かって? そりゃ十人十色――使い魔の姿は主人(マスター)によって、その姿は違うぞ」


「へ、へえ、そうなんだ……」


「ちなみに、アタシの使い魔はコイツらだ」


「うむ、服を着た二羽の兎か……」


「よお、新人! 俺の名前はハニエルだ。よし、俺のことを兄貴って呼べよな」


「ボクの名前はヤスというッス。よろしくお願いしますッス」


「お、おお……って兎が喋ったぞ!」


 へえ、使い魔の姿は十人十色、姿形は従えているモノによって違うようだ。


 さて、マリウスの使い魔は二羽の兎だ――喋ったぞ!? 兎が喋ったぞ……オ、オマケに二足歩行で歩ているぞ! ハハハ、冗談だろう!


「ちなみに、コイツが私の使い魔よ」


「オリンデの使い魔はお猿かぁ」


「ウキキ、よろしく、ムグムグ……」


「ああ、ボブ! それは私のバナナよ、返せぇー!」


 ふむ、オリンデの使い魔は、彼女の右肩に座っている小型のお猿だ――え、どんな種類のお猿かって? モコモコしたアフロヘア―が特徴的なフサオマキザルだ。


「どうでもいいけどさぁ。使い魔の卵にヒビが入ったぞ」


「う、うわ、どどど……どうしよう!」


「お、使い魔誕生の前触れだな。うん、もうすぐ使い魔の卵が孵化するはずだぜ」


「う、産まれる……使い魔が!? お、おお、使い魔の卵が割れた……わ、何か飛び出してきた!」


 む、マリウスが投げ渡してきた使い魔の卵にひび割れがッ――わお、そんな使い魔の卵が、その刹那、割れて何かが飛び出してくる!


「ふう、狭苦しかったぜ! ん、んんッ……きょ、巨人だァーッ!」


「違うっての! お前が小さいンだよ」


「な、何ィィ……お、おわーッ! 俺が小さいのか!」


 おい、俺は巨人じゃないぞ。まあ、仕方がないさ。ソイツの身体の大きさから考えると、俺は巨人に見えるだろうな、間違いなく――さてさて、使い魔の卵から飛び出してきたモノは、鼠や雀と同サイズの人間型の生き物である……コ、コイツが俺の使い魔なのか!?


 ちなみに、頭には山羊のような角、背中には真っ黒な烏の翼が生えている――あ、悪魔!? 悪魔を連想させる特徴を持つ黒いビキニ姿の金髪碧眼の美女だ! あ、だけど、前述した通り鼠や雀ほどの大きさだけどね。


「ああ、コイツは……サキュバスだな。いや、サキュバスに似た使い魔だな」


「サキュバス? うお、男の夢の中に出てきて精気を吸い取っていく悪魔の一種か!」


「おい、コラァ! 俺は悪魔じゃねぇ、妖精だ! う、うおー! どうでもいいけど、俺はなんで女の姿なんだよォ!」


「知るか!」


 サキュバス? 使い魔は男の夢の中に現れて淫らな夢を見せ精気を奪っていく存在だろう――それくらい知っているさ。何気にメジャーな存在だしね。


 さて、どうでもいいけど、使い魔の奴、中身は俺と同じ男っぽいぞ。


 も、もしかして同じ穴のムジナだったりして……。


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