第17話 俺、ゾンビを浄化させる。
キャラクターのレベルでも載せてみます?
アルテナ
LV:1
HP:80
MP:∞
攻撃力:100
防御力:100
素早さ:100
戦乙女アルテナこと櫻井健一のステータスは、こんな感じです。戦乙女効果でレベル1ながらも一般的な冒険者よりは強いかと。ついでに魔導書スィーデトーチのおかげでMPが∞状態というチート能力を有している。
オリンデ
LV:5
HP:300
MP:100
攻撃力:100
防御力:500
素早さ:100
オリンデのステータスは、こんな感じですね。兎天原にやって来た時に獣の呪いによってドラゴンの幼生体になってしまいました。そのせいか防御力だけは高めに設定。
マリウス
LV:90
HP:7800
MP:3000
攻撃力:4500
防御力:3800
素早さ:3300
マリウスは猫をかぶっています。そのうち本気を出すかもしれませんねぇ。ちなみに、マリウスは露出狂なので脱ぐとさらに強くなりますが自主規制で。
兄貴 ヤス
LV:2 LV:3
HP:30 HP:40
MP10 MP:55
攻撃力:35 攻撃力:37
防御力20 防御力:30
兄貴とヤスですが若干ヤスの方が強かったりします。ちなみに、コイツらは短時間ですが人間に変身できます。そのうち変身させてみたいですね。
エルフィア
LV:25
HP:1200
MP:150
攻撃力:400
守備力:380
素早さ:300
ギャル戦乙女のエルフィアのステータスは、こんな感じですね。
俺なら屍鬼って呼ぶかな、ゾンビのことを――。
さて、そんなゾンビだが全身が腐敗し、一部、白骨化した禍々しい姿で蘇った死者というイメージがある。
しかし、目の前にいるふたりの盗賊フォドンとクボーは、本当にゾンビなのか疑ってしまう。
ナニせ、コイツら巷で知られるゾンビのイメージを覆す姿なんだよァ——要するに生きている人間にしか見えないってこと。
だが、死斑が見受けられるし、やっぱり……。
さ、与太話は、ここら辺でやめておこう。
「我々がゾンビだと言いたいのか!」
「撤回しろ! 撤回するんだァーッ!」
「ふう、まだ認めないなら、その首を斬り落としてやろうか? そうなったら嫌でも気づくってモンよ」
「パイセン、それは惨いわ。腕か足を破壊――ああ、ドテ腹に風穴を開けてやった方が気づくんじゃないかなァ☆」
「ちょ、お前ら、そんな惨い方法以外で気づかせてやった方が……」
「アルテナァ、お前は慈悲深いな――が、ゾンビなんぞに慈悲の心なんて必要ないわ。ちゃっちゃと倒しちまおう。その方がアイツらにとっても救いになると思う」
「わあ、そんな話は後回しッス! ゾンビ盗賊が腰に吊るしている剣を鞘から引き抜いたッス!」
盗賊フォドンの右肩には、マリウスが投げつけた魔法でつくった鋭利な刃物の如き氷柱が突き刺さっている。
それにも関わらず何事もなかったかのように平然としている辺りは、やはりゾンビ故に痛覚が麻痺しているからなんだろうなァ。
それはともかく、自分がゾンビであると認められないフォドンが、腰の左側に吊るす長剣の柄を右手で握ると、勢いよく刃を鞘から引き抜きマリウスを標的にするかのように突撃してくるのだった。
「お、やる気? だが、お前と戦うのはアタシじゃない……よし、任せたぞ、アルテナ!」
「え、ええ、俺がッ……おわぁ、危ねぇ!」
ちょ、何故、俺が戦わなくちゃいけないんだーッ! う、うお、危ないッ……紙一重のところで回避したけど、フォドンが振り回す長剣の刃が命中するところだったぜ! く、マリウスの奴、自分が戦えばいいのに……さ、さぁて、どう立ち回るか逃げ回りながら考えなくちゃな!
「逃げるなッ! 正々堂々、戦えェェェ~~~!」
「だが、ソイツは断る! 正々堂々に戦え? 冗談じゃねぇーッ!」
正々堂々、戦えって? 断るね――不死身の怪物であるゾンビを相手に真っ向から戦いを挑むなんて自殺行為だ。ああ、魔法で遠隔攻撃をすればいいんじゃないかって? まあ、そうだが……さて、どうしたモノか。
「なあ、ゾンビに齧られたり、爪で引っ掻かれた場合、俺もゾンビになっちまうのかな?」」
「それはわからんけど、ゾンビの身体は毒だらけだと思う。下手をすりゃ……」
「ヒ、ヒイィィ! だったら魔法で叩き潰すっきゃないかァ……っと、なんでもいい! この魔法でやってみる! ケサリキデゼカーッ!」
ゾンビに襲われた犠牲者もまたゾンビと化し、新たな犠牲者を求めて彷徨い歩く――ある意味で鼠算式でゾンビって増えていくよね。某映画の設定なんかじゃそんな感じだ。
兎天原は幻想世界だ。某映画の設定が、この世界じゃ、その設定がマジモノの可能性がある故、接近戦とばかりに不用意に近寄れない気がする。ここは魔法で遠隔攻撃だ! スィーデトーチに記されている遠隔攻撃魔法の呪文を詠唱だ!
「ガ、ガアアーッ! 貴様ッ……ナ、ナニをした……わ、私の左腕がァーッ!」
「ウホッ! イイ空気の砲弾! そんな空気の砲弾が盗賊ゾンビの左腕を吹っ飛ばしたぞ」
ケサリキデゼカ――反対から読むと、〝風で斬り裂け〟って読めるよね。
そんなワケで真空波を発生させ対象を斬り裂く魔法かなって思ったが、それは俺の勘違いだ――砲弾だ。大砲から放たれた砲弾の如き圧縮された空気の塊が、長剣を振り回しながら追いかけてくるフォドンに対し、突き出した俺の右手から放たれた圧縮された空気の砲弾が、ズドーンと轟音を奏でながら、フォドンの左腕の二の腕から下を吹き飛ばすのだった。
「う、ううう……痛くないぞ。何故だ、左腕の二の腕から下が吹っ飛んだというのに……」
「まだ気づかんのか? 痛くないのは、それはお前がゾンビだからだ」
「ううう、まだ言うのか! ガ、ガアアアーッ!」
「くくく、首ちょんぱーッ!」
「アルテナァ、さっさと気づかせてやれって」
「そ、そうだとは思うけど……っつーか、最初からお前がやれよ、マリウス!」
うーむ、やはり痛覚が麻痺したゾンビだ。フォドンは左腕の二の腕から下を吹っ飛ばしたのに平然としているしね――っとマリウスが、俺とフォドンの戦いに割り込んでくる……ん、どこに隠していた黄金色の光を纏う長剣を右手に握っており、ソイツを振り回すマリウスが、フォドンの首を斬り落としてしまうのだった。
マリウスの野郎! 割り込むンなら最初から自分でやれっての――ま、それはともかく、首を斬り落とされたワケだし、流石にフォドンも気づくだろう。自分が屍鬼――ゾンビだってことに。
「し、信じないぞ! 私が汚らわしい動く屍だなんて……」
「おいおい、いい加減、認めろよなァ——ん、そういや、もうひとり盗賊がいたな」
「それは私のことかッ……ウ、ウウウ、ナンダ、身体ガ……身体ガァァ……キ、キキ、キシャアアアアッ!」
「わ、なんだ、コイツッ! いきなり両目が白目を剥きオマケに両目から血の涙を……ナ、ナニが起きたワケェ?」
そうそう、盗賊がもうひとり盗賊がいたな。クボーだったか、ついつい忘れるところだったぜ――って、おい! そんなクボーの様子が豹変する。両目がギュルンと白目を剥くと同時に、ドババと血の涙とばかりに大量の血を流し始めると、今度は両手を広げながら奇声を張りあげる。
「騒ぎ立てる声が聞こえると思ったら、またお前らか懲りん奴らよ!」
「ん、お前はドリルだっけ?」
「リドラーだ! ムムム、名前を間違えられるとイライラするッ――それはともかく、クボー卿の理性を取り除いた。ククク、これで彼は真のゾンビと化したぞ」
「ちょ、理性を取り除いたって!? うええ、それじゃ今のアイツは――ッ!」
「ニニニ、ニキュ……肉ゥゥッ……クククク、食ワセロゥゥ! アガガガ、ウガアアア!」
「コ、コイツッ! 今、齧ろうとしたよな、絶対! ヒ、ヒィィ、近寄るなっての!」
むう、奥の通路から大きな熊が姿を現す――熊獣人のリドラーだ。なるほど、クボーが豹変した裏には、コイツが一枚絡んでいたようだ。恐らく操屍術で理性を吹っ飛ばしたのだろう。死霊使いであるリドラーにとっては、使い捨ての駒とばかりにゾンビであるクボーをどうにでもできるしなァ。
「ホラホラ逃げないと食べられちまうぞ~☆」
「か、からかうな! うーん、噛みつかれたら、俺もゾンビになっちまいそうだし……よ、よし、この魔法で!」
理性を取り除いた――それは真のゾンビ、狂戦士の如き不死者と化すことだ。オマケに俺を食べようとしている……た、食べられてたまるか! さて、丁度イイ魔法の呪文がスィーデトーチに記されていたので試してみるか!
「ワガテニツドエタイヨウノヒカリッ――って、わかりやすいな。この魔法の呪文……お、おお、そのまんまの魔法じゃん!」
反対から読まなくても、どんな魔法なのかわかりやすいな。この呪文は――が、とにかく眩しい魔法だ。何せ、直視できぬ太陽の光の如き強烈な光を地下空間に発生させる魔法なワケだし。
「う、うう、眩しいッ! 眩しい光だが、コイツは攻撃魔法ではないな。フフフ、それでクボー卿を――ゾンビを斃せると思っているのか?」
「さあ、それはどうかな? その前に不死者を束ねる死霊使いのクセに知らんのか? 太陽の光が不死者の弱点だってことを」
「フン、それは吸血鬼だ。ゾンビに役立たぬモノよ。それに、あのパンツ丸出し女が行使した魔法は、あくまで太陽の直視できん太陽の光を思わせるだけの強烈な光――コケ脅しにすぎん!」
「コケ脅しねぇ……んじゃ、ゾンビが弾け飛んだのは何故だ?」
「ナ、ナニィィ!」
むう、俺が唱えた呪文は、対象を光熱で焼き払うって感じのモノじゃなかったようだ。太陽の光の如き強烈な光を発生させて対象をショック状態にする――とまあ、そんな感じの魔法である。
リドラーがコケ脅しだって言うけど、まず間違いない気がするんだが、迫りくるゾンビ――クボーの身体が、ドパアアンッと弾け飛んだぞォ!? ついでに、マリウスによって首と胴体が分断された状態のフォドンもクボーと同様に、その身がドパアアンと弾け飛ぶ。
「赤みががった光の玉が残ったぞ」
「戦士の魂よ! いっただきぃ!」
ドパアアアンッ――と弾け飛んだクボーとフォドンは、赤みがかった光る球体を残す……戦士の魂か!? うお、戦士の魂をエルフィアに奪われてしまったぞ! そういえば、アイツも戦士の魂を集めていたんだったな。
「ナ、ナニが起きたのだッ!」
「ああ、その魔法は本物だぞ。本物の太陽の光を呼び寄せる魔法なんだ」
「え、そうなの? 知らんかったぜ」
「その前に死霊使いなら気をつけることがあるだろう。不死者に使い道について、もっとも大事なことが――」
「太陽光に気をつけるべし! 悪質な死霊使いに人体実験とばかりに操屍術を施され生きたままゾンビと化したモノ、日中でも平気で活動できる最強の不死者として闇夜に君臨する不死者の王と言っても過言ではない吸血鬼の真祖といった例外を除くと、全般的に不死者は太陽の光に弱いのだ。そんなわけで不死者を使い魔などとして扱う場合、日中はなるべく行動させるべきではない、と習わなかったのか?」
「む、むう、知らなかった。そんなこと……」
「お前、わしらと同じ死霊使いだが、その様子だと素人か?」
「いや、コイツの場合、ゾンビ等の不死者の扱い方を知らん辺りから考えて無免許だろう」
え、本物の太陽の光だったのか!? で、不死者全般に太陽光は効果的な様子。へえ、この世界の太陽光には、ゾンビなど不死者を滅する浄化の力が含まれているっぽいな!
ついでに、なんだかんだと免許がいるのね。死霊使いにも――まあ、当然と言っちゃ当然かな。んで、リドラーは無免許の死霊使いのようだ。だから不死者の扱いに関して知らんが多い、というワケかな。
「あ、リドラーがいなくなっている!」
「この先の通路に逃げたんだろうよ」
「俺達も行ってみよう」
リドラーの巨体が、忽然と消え失せている。逃げ足だけは早いな――っとそれはともかく、この今いる地点の先にある通路へ向かってみよう。リドラーは、きっとこの先に逃げたはずだし。