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第14話 戦乙女ですか?それともギャルですか?

 風紀を乱すモノには、ナニかしらのペナルティが課せられる――至極当然のことだよネ?


 それはどんな世界でも言える共通のこと――だよな?


 さて、俺の目の前にいる戦乙女を自称するギャルことメルフィアの話が本当なら、コイツはワルワラ宮殿の風紀を乱し、地上――兎天原に追放というペナルティを課せられたんだじゃないだろうか?


 ま、俺には関係のない話だけどね。


「あ、パイセンだ! お久し振りィ~☆」


「メルフィアじゃん。お前が追放されてから三年くらい経ったはずだが、なんだかんだと元気そうでナニよりだ」


「うへぇ、マリウスのことを先輩呼ばわりしてるし、自称、戦乙女じゃなくて本物の戦乙女っぽいなぁ、あのギャル……」


「う、うん、間違いないわ。アレはビッチのメルフィアだわ……」


「ちょ、チビ竜! 私をビッチ呼ばわりすんな! ん……ってかいうか、もしかしてオリンデ? ニャハハ、獣化の呪いにかかったのぉ? 超笑える~☆」


「う、うっさぃわね! アンタだって耳が猫みたいじゃん。オマケに縞々の尻尾が生えてるし、獣化の呪いの影響を少なからず受けてるでしょうにィィ!」


 や、やっぱり、メルフィアとかいうギャルは同胞(ワルキューレ)のようだ。んで、よ~く見ると彼女の両耳は、縞々模様の猫のような耳で、オマケに縞々模様の長い尻尾が見受けられる。


 兎天原の獣の領域に蔓延る呪い――獣化の呪いの影響を少なからず受けている模様だが、コイツの場合は運がいいのかもな。身体全体が獣と化すことがなかったワケだし。


「あ、熊がいなくなってる! ちょ、おじさん、なんで逃がしちゃったのさァ!」


「おい、俺達のせいにするな!」


「気づいたらいなくなっていたんだ!」


「言いワケだな。うん、言いワケにしか聞こえんわ……」

 

 さて、聖イリアーナ騎士団――いや、盗賊団のひとりである熊獣人のリドラーの姿が、忽然と消え失せる――逃げた! クソォ、威力が弱まったとはいえ、俺が放った光線魔法が命中で転倒し、捕らえるチャンスが到来ってところだったのに……。


「ん、盗賊っつうと、狼獣人がそこに……ちょ、メルフィア、ナニをしているのよ!」


「決まってんじゃん。狼獣人の魂を抜き取っている最中ってワケ……わお、仄かに赤みを帯びているわね。戦士の魂ゲェェェットォ!


 むう、熊獣人リドラーには逃げられてしまったけど、狼獣人——確か名前はティレアだっけ? とにかく、ソイツが俺との魔法戦闘に於いて敗れて気絶した状態で残っている。


 そんなワケだから捕まえるならコイツを――って展開になるところだが、ギャル戦乙女ことメルフィアは、ナニを思ったのか狼獣人ティレアの魂を肉体から分離させるのだった。


 仄かに赤みがかった魂だ――ウワサの戦士の魂なのか!? しかし、ナニが目的で魂を肉体が分離させたんだ、コイツ!


「ん、やっぱり変更! 捕まえるより魂を集める方を優先することにした。私自身の利益を優先するって感じ」


「魂—―戦士の魂を集めているのか、メルフィア」


「その通りよ、パイセン。私はアレを五十個集めろってオデン様に言われているの」


「あ、もしかして、それが風紀を乱したペナルティを解除する条件だったりする?」


「うんうん、そんな感じかァ」


 メルフィアは狼獣人ティレアを捕えるよりも自身の利益となる方を選択したようだ。戦士の魂を五十個集めることでナニかしらのペナルティを解除するために。


「なあ、あのギャルは風紀を乱したって理由でナニかしらのペナルティを受けたんだろう? 一体、ナニをやったんだァ?」


「ん、恋愛禁止っていうウチらのボスであるオデンの姉貴が敷く戦乙女の誓いを破ったんだ。しかも勝手に地上へ降り、彼氏を何人もつくるという暴挙に及んでね」


「し、知らなかった。そんなことを……」


「オリンデが知らなくて当然だ。オデンの姉貴は秘密主義だからね」


「むう、恋愛禁止って、どこかのアイドルグループかよ! だ、だが、何人も彼氏をつくるとか尻軽女だなぁ、おい……」


「フン、愛に生きる女って言ってほしいわね、チビ」


「チ、チビって言われたーッ!」


 むう、戦乙女は恋愛禁止なのかァ、某アイドルグループを連想するぜ。しかし、何人も彼氏がつくるとかマジで尻軽女だな。ああ、あの手の女は、俺が転生前にいた世界にもたくさんいたなァ……別の意味で共通した事柄だネ。


「おい、くだらん話は、そこまでだ! これを見ろ!」


「ん、血痕? いや、違う……蜂蜜だ」


「わお、蜂蜜の滴が、あっちに続いているぞ。きっと、あの熊公が零したんだろうな」


 さて、黄金色のねっとりとした物体が地面に見受けられる――蜂蜜だ。ん、きっとリドラーが所持している樽から零れ落ちたモノだろう。んで、そんな零れ落ちた蜂蜜が、道しるべとばかりに俺達が今いる地点のすぐ近くにある森の中へと続いている。


「この蜂蜜、美味いな」


「兄貴、呑気に食べている暇なんかないッス」


「ああ、その通りだぜ。あ、美味い!」


「ナニがその通りよ、マリウス。地面に滴り落ちた蜂蜜をナメるなんて下品よ、下品!」


「どうでもいいけど、森の中に道があるぞ。蜂蜜は、そんな道の先に向かうカタチで滴り落ちている」


「あ、本当ね……って、アルテナ! アンタも地面の蜂蜜をナメるな!」


「ニャハハハ、美味そうだなって思って……と、とにかく、地面の蜂蜜が道しるべだ。この先に熊公李ドラーがいるはずだ!」


 下品で悪かったな。なんだかんだと、美味そうだったからナメたんだよ、文句あるかッ――とそれはともかく、地面に滴り落ちた蜂蜜が逃げたリドラーの居場所を突き止める道しるべとなっている筈だ。よし、この先の道を進んでみよう。



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