第8話
さて、それから私がリディアさんの家にお世話になって早くも3日が過ぎ去った。
ちなみにまだ冒険者デビューは出来ていない。
何故ならこの一週間、私はリディアさんから勉強を教わっていたからだ。
まさかこの年齢になってから本格的に勉強することになろうとは...。
いや、まぁ...外見は中学生くらいなんだけどね。
で、何を習ったのかと言うと、『この世界について』『スキルについて』『フォール家について』の3つである。
まず『この世界について』。
まぁこれは、定期的に魔王って言われる魔物のボス的なのが出現するから、国が勇者認定した人が倒しに行くって言う、なんともゲーム的なお話と。
隣国とは戦争中だって事と、冒険者ギルドに所属してると一定ランク以上は国境を簡単に超えられるとか等の、冒険者についての簡単なお話だった。
次に『スキル』について。
これが私の興味を一番惹きつけた内容で、実に面白い話だった。
まず『この世界の魂は全て世界樹と繋がっている』っていうトンデモ話から始まったんだけど。
なんでも魂は全て世界樹を介して繋がってるから、魂が得た情報は全ての生命に共有され、鑑定や看破スキルを使うと世界樹から情報を引き出すことが出来るのだ。
まぁゲームで言うところの『ステータス』だね。わたしも出せるアレだっ。
で、生き物が死ぬとその魂は世界樹へと還って行くのだが、その時に周囲の生き物を通して還っていく。
その還っていく一部が、周囲に居る生き物の魂と融合して強化されるのだとか。
うん、何て言うかここら辺はまんま経験値だね。
で、魂が強くなると入れ物である身体がそれに合わせて強化されたり、魂の容量が増えると新しいスキルが世界樹からもたらされるらしい。
その魂の力を視覚化したものを『格』と言い、教会や冒険者ギルド...一部の魔道具を使えば見ることが出来るみたいだ。
私はステータスとスキルは見れるけど『格』っていうレベルは見れないからね。
後々教会......いや、アンデッドで教会とかわけわかんないか...。そうだね、後々ギルドのお世話になろう。
さて、余談だが、この世界樹との繋がりを『呪縛』だと言って、聖地にある世界樹へ攻撃を仕掛けてる組織があって。
基本的にどの国でも邪教徒扱いされてるので関わるな...との事だ。
そして最後に『フォール家なついて』。
これがまたぶっ飛んだお話で、正直言って私がフォールとか名乗っちゃ駄目なんじゃないかな? って思った程だ。
--ええと...
この国の隣には、かつて世界最強と言われた小国があったそうな。
その国には軍隊がなく、5家の騎士達によって護られていた。
その騎士の1つがフォール家。
なんかね。1人で軍人10万人以上の強さがあるらしい。
なんでも代々その家系にはユニークスキルが遺伝していて、そのスキルが異常なくらい強力なんだとか。
そのスキルを使ってガンガン『格』を上げるもんだから、最早敵なしの騎士が出来上がるのだ。
しかし、その5騎士のうちの2つの家が裏切って、国が滅んでしまったらしい。
その時、その国の姫様を護って隣国へと脱出したのがリディアさんで。
その姫がこの国の王子と恋仲になって結婚したから今のえらい高い地位にいるらしい。
ちなみにその姫様とは仲良しで、結構遊びに行くことも多いとかなんとか...。
んで、私がそのフォール家の跡継ぎなわけだ。
リディアさんは『フォール家に手出しするような愚かな貴族は居ない...』とか言ってるけど、テンプレ的に...いつか失脚させようと狙われそうな気がするんだよね...。
--だって公爵家並の権力だよ?
それを私みたいな小娘が持ってたら絶対に面倒事へと発展するのがお決まりのパターンじゃない?
まぁ、リディアさんがいる間は大丈夫だろうけど、今から何か対策を考えておいた方がいいかもしれない。
いざと言うときに仲間になってくれる人達を集めたり...とか。何かコツコツ出来る事はあるはずだ。
今後はそれも念頭に入れて生きていこう。
--うん、既に死んでるけど...
さて......。
それで今日なんだけど。
私、いよいよ冒険者デビューしますっ!!
さっき、こないだ私の為に用意してくれたゴスロリ服が届いたらしくて、更に武器も一通り用意できたんだってさっ。
今から庭で私の装備をどれにするか決めた後、ギルドに行って初依頼を受けさせてくれるらしい。
はっきり言おう。
むっちゃ楽しみなんじゃぁぁぁぁぁっ!!
だってねだってね、冒険者だよっ!?
ラノベの世界が今目の前に。
オタク系女子の私がトキメかないわけがないっ!!
それで早速着替えたんだけど。
ヤバイね...うん。ゴスロリドレスは無いわ...。
こんなの着て刃物持ってるともの凄く猟奇的なんだけど?
因みに部分的にも鎧を要求したんだけど、この服がフルプレートアーマーより強固らしく、必要ないって言われてしまった...。
ドレスアーマー...憧れだったんだけどなぁ......。
残念である。
それで服の次は武器なんだけど、私の才能を見るために色々と用意してくれたらしく。
様々な武器が目の前に並べられている。
「とりあえず無難なところでショートソードから試してみるか?」
「はっ、はいっ」
そう言って手渡された刃物を持って、言われたとおりに構えてみる。
「じゃあそれで、そのまま半歩前に出て、私の剣目掛けて振り下ろしてみてくれ」
そう言われて、言われたとおりに構えから真っ直ぐ半歩踏み込んで振り下ろした。
「ていっ」
--スポンッ
メイはショートソードを投擲した。
しかし攻撃はハズレてしまった。
......。
...。
いやいやいやいや、違うんだよ?
ちゃんと狙って振り下ろしたんだよ!?
それが何故かすっぽ抜けてリディアさんの顔を掠めて何処かへと旅立っていってしまった。
嗚呼......さらばショートソード。
君の旅の無事を祈ってるよ...。
「どうやらメイにこの武器は重すぎたみたいだな、こっちの槍を試してみるか?」
「はっ、はいっ!」
--なんかスミマセン......
私、無茶苦茶不器用みたいです。
「じゃあ槍の使い方を見せるぞ?」
「はいっ」
「リーチを活かした槍の基本は突進からの突きだ。魔物と言うのは肉厚がある相手が多い。剣では届かない急所にも槍なら体重をかけて押し込めば急所に届く」
--ザザッ
--ブオンッ
「っと、こんな風に.......。体重をしっかりかけて押し込むのが大事だ、じゃあ真似してみてくれ」
「はいっ」
ええと、こうやって体重を掛けて......こうっ!
「ぬぉぁああっ」
--ザッ
--トシン
......。
ええと、何でかな?
思ったより矛先が重くて棒高跳びをしてしまった。
「だ、大丈夫か...?」
「うん......」
大丈夫...。大丈夫だから何も言わないで...。
それで、その後一通り全部の武器を試したんだけど、なんと見事に全滅してしまった。
いやぁ......ホント驚きだよ。
「んー......本来は自分の身に合った武器を持てばスキルが開放されるはずなんだが...」
「えっ?」
「ああ、そういえば言ってなかったか」
うん、聞いてない!!
「武器スキルは持った状態で構えれば開放される」
「開放って、どんな風に?」
ぶっちゃけ私は最初からスキル持ってたし、いまいち開放って言われてもピンと来ない。
だから、もしかしたら気が付かないうちにスキルが開放されてるかも...。
って、そうかっ! ステータス開けば...!?
......。
...。
ああー...残念。増えて無かった...。
--しょぼん。
「まぁ、開放って言ってもピンと来ないかもしれんが、スキルが増えると必ず分かる
人によるが、スキルを入手すると声が聞こえると言う者や、直感的に感じる者が多いな、ちなみに私は後者の方だ」
「んー...言葉か直感かぁ...」
「そうだな、だがどちらにせよ、武器スキルが手に入れば最低限使えるようになるからすぐに分かる」
「わたし、どれも、アツカエマセンデシタヨ?」
「ああ......そうなると此処にない武器に適正があるか、もしかすると魔法の方に才能があるかもしれんな」
「魔法!?」
なにそれ、もっと早く言って欲しかった!!
やっぱファンタジーな世界と言えば魔法でしょっ!?
間違いない、ここまで武器が使えないのはきっと魔法を使えって事なんだよ!!
よし決めたっ!
私は立派な魔法使いになってみせる!!