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第7話

 



「それじゃあメイも今日から『フォール』を名乗ってくれ」


「え?」


「私の養子にするからな。私と同じ家名を......もしかして嫌だったか?」


「えっ、あっ、いや、嫌とかではないですけど...」



 リディアさんの家に向かってる道中で、いきなりそんな重大な話しを振られても反応に困るっていうか...。

 えっと、ほら、そういった話しをするにしても、もうちょっと場と雰囲気ってものがあると思うんですよ。


 周りにがっつり人が歩いてるし、何故か妙に注目されてる気がするし...。



「私の家名を名乗れば貴族からちょっかいをかけられにくくなるんだが...」


「そうなんですか?」


「ああ、公爵家くらいの影響力はあるからな」


「こっ...公......マジで!?」


「ん? マジ?」


「あ、ああ、本当に? って意味です」


「なるほど、それならマジだな」


  --マジか...


 影響力あるとか言うレベルの爵位じゃないんですが。だって上に王様しか偉い人いないじゃんさ!?

 リディアさんってほんとに何者なの?



「それでどうだ?」


「えぇっと...」



 よ、養子かぁ。

 私、リディアさんの事『お母さん』って呼ぶの?


 こんな身体になっちゃう前の私より明らかに若そうなんだけど。

 それに何よりむっちゃ美人なんだけどっ!!

 何ていうかこう...お母さんってイメージが全く似合わない。


 だけどもしここで断ってリディアさんのとこを追い出されたら、今日寝る場所すら無いのも事実なんだよね。

 って事は選択肢は1つしかない。


 このままホームレスか、貴族の仲間入りか。うん、答えは簡単だよねっ。



「よろしくおねがいします」


「ああ、任せておけ」



 こんな選択肢、一択に決まってる。異世界まで来てホームレス生活とか勘弁願いたい。いったいどんなハードモードだよそれ。



「ところでリディアさん」


「ん? なんだ?」


「お母さんって呼べばいいの?」

「ぶふぁっ」


   --ゴホッ

  --ゲホッ


 あ、リディアさんが盛大に吹き出してむせてる。



「ケホッ ケホッ い、いや。今まで通り『リディアさん』でいいぞ。うん、それで全く何も問題ない」


「そ、そう? でも養子だから親子って事になるんじゃ...」


「あ、ああ、確かにそれはそうなんだが、これは...その、養子でも良いからそろそろ子供を作れとせっつかれてて...

 い、いや、だからと言って決して軽い気持ちで養子の話しを持ち出したわけじゃないからなっ!!

 安心してくれっ!! ちゃんとメイの人生を背負う覚悟はしている

 だ、だが......その、自分が母親だとか...そういったものはな

 自信がないと言うか柄じゃないと言うか......いったい私はどうしたら良いんだ!?」



 い、いや、そんな事聞かれても、私も母親の経験なんてないんだけど。しいて言うなら......。



「あ、あのっ、リディアさんのお母さんみたいにしたら良いんじゃ...?」


「それはっ...。私は御祖父様に育てられたから両親は良く知らんのだ...」


「そ、そうなんですか」


「御祖父様のように振る舞えと言われればできるんだが、御祖父様は生粋の騎士だったからな...

 厳しく騎士道と剣技を叩き込む事なら出来るのだが...それは何だか、世間一般の親とは全然違う気がするのだ...」



 んー...。実は私も両親が物心ついた時には他界してて経験無いんだよねぇ。

 だから世間一般の家庭ってのは私も良くわからない。


 だからある意味これが私にとって初めての『お母さん』なわけだ。

 この美人でスタイル抜群なお姉さんが私の『お母さん』か...。


 あ、あれ?

 何か悪くないかも?



「着いたぞ」


「う?」


「ここが私の家だ」


「家?」



 えーっと...。

 門しか無いヨ?


 まっ、まさかこれはっ!!

 海外なんかでよく見る豪邸あるある。門から家までが遠すぎて見えないっていうあれなのかっ!?


 ...と、思ったんだけど。


 門の先には広大な庭があって、その向こう側に一般的な2階建ての小さな家が建ててあった。

 うん、確かに門から家までは遠いけどさ、思ってたような屋敷とは全然違かった。



「あー...なんだ、でかい家はどうにも落ち着かなくてな...

 御祖父様と住んでいた場所も兵舎の近くにある小屋だったし...

 その...でかい屋敷を期待させていたんならすまない」



 あー...もしかして私の顔に残念さが出てたんだろうか?

 申し訳なさそうにリディアさんが言ってきた。



「えっと、想像とは違ったけど私もこっちの方が落ち着くから良かったかな」


「そ、そうか、それなら良かった」



 それから二人して家に入ると、リディアさんが思い出したみたいに言ってきた。



「そう言えば、スラムの以前住んでた場所に、何か用事があれば手伝うぞ?」


「ぅえっ?」


「いや、真っ直ぐ此処へ連れてきてしまったからな。取りに行くものや挨拶する相手なんかは居るか?」


「いや、何もない...けど...」



 え、あ、あれ?

 なんで急にそんな悲しそうな表情するんでしょうか?


 私、スラムに住んでなかったから何も無いのは当たり前なんですけども。

 それを抜きにしたって...この世界にくる以前の私にも、特に家に取りに帰りたい物や挨拶したい人は思い浮かばないし。



「そうか、何も無いのか」


「え、う、うん」



 むー...。何でそんな表情するのかよくわからん。




  

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