第6話
お風呂は陶器の湯船があって、湯船の上に魔道具のシャワーが固定されてるタイプのものだった。
リディアさんから魔道具って聞いた時にはうまく使えるか不安だったけど、何か魔力は魔石に補充されてるからスイッチを押すだけだった。
着けてた防具を外して私の身体を洗おうとするリディアさんをお風呂場から追い出してから、服を脱いでお湯を浴びる。
追い出した時、リディアさんにもの凄く心配されたが、同性でも身体を洗われるのは恥ずかしい。
それにしても真っ白ですべっすべだなぁ。
お湯が滴る肌を撫でて、以前の徹夜続きでカサカサな肌を思い出す。
まさか、こんな美肌を手にする日が来ようとは!!
「うっ......」
お、重い。
お湯を浴びたせいでまさかの事態だ。
髪の毛が水を吸ってもの凄い重量に...首の耐久力がちょっとまずいかも...。
さらにそれだけじゃなくて、濡れた髪が身体に纏わりついて鬱陶しいオマケまで付いてきてる。
淡い金色の髪の毛は踵あたりまで伸びてるし、これははやく切らないと踏んづけて大惨事待ったなしだよ。
今までボブより長く伸ばした事なんて無かったし初めての経験だけど、髪が長いとこんなに面倒なのか。
多分もう伸ばすことはないな...きっと。
「さてと...」
そろそろシャワーを止めてっと...。
「うーん...やっぱ面影は欠片もないなぁ」
お風呂場には姿見が付いていて、初めて自分の顔を見たんだけど。
記憶にある顔は面影すらも存在せずに、そこには人形のような童顔が映しだされていた。
いったい誰だコレ?
瞳の色なんて赤色だし、こんな色の目なんてアニメの中でしか見たことないぞ。
やっぱ、異世界転生...なのかなぁ...?
この姿を見てしまったらもう信じるしかないんだけども、全く実感が湧いてこない。
いや、そもそも腕が取れてなんともなかった時点で信じろって話だけれども...。
だけど、姿かたちまで変わってるって事は異世界転移じゃなくて転生なのかなぁ?
いや、別に赤ん坊から始まったわけじゃないし、異世界憑依ってのが正しいのかも?
--まぁ...
虫とか動物とか、人の形をしてないモノにならなかっただけ良かったと思うべきなのかもしれないけど。
それでも今の私ってアンデッドだしなぁ。
確実に魔物枠なんだけど...。討伐される事だけは何とか避けたい。
生きた身体に憑依してればアンデッドじゃなかったのかなぁ?
でもその場合は元の身体の持ち主が居るから憑依できないのか。
私、この世界でやってけるのかなぁ...。
......。
「んー...よしっ」
うだうだ悩んでても仕方ない。
こんなところで美幼女の...まぁ私なんだけど、自分の身体を眺めてても湯冷めするだけだ。
後のことは出てからゆっくり考えよう。
それで一通り自分の身体を確認した後、私はお風呂場から出て用意されたであろうタオルで身体を丁寧に拭いていく。
「あれっ? 私の..服...」
私が脱ぎ捨てたボロボロの布切れは、白いワンピースに置き換わっていた。
「なにこれ、かわいい!!」
むっちゃ私好みのデザインなんだけどっ!?
派手になりすぎないよう裾に花柄が刺繍されていて、かといって地味になりすぎない、もの凄くデザインのバランスが取れている。
何処にでも着ていけるようなタイプのワンピースだ。
うん、これでいいよ。
普段着はこの服が良い。
ゴスロリドレスみたいなヒラヒラした服には憧れるんだけど、あれを普段着にしたいとは思わない。
出来る事なら、このワンピースみたいな着慣れてる服がほしいんだけど...。
この服、もらってもいいのかな?
後で聞いてみよう。
むしろ出世払いで売ってもらおう!!
えーっと、それで下着は......。
「えーっと......」
--え?
なんであの痴女とお揃いのスケスケ下着が置かれてんの?
ちょっ、待って待って!!
無理だから!!
流石にブラはこの胸だと必要無いと思われたのか、代わりに黒いシャツが置かれてるけど。
パンツが...ものすっごいエグいんですけど?
いや、まぁ、実はさっきまでノーパンだったから既に痴女だったのかもしれないけど。
これは次元が違くて、着けないより着けた方が恥ずかしいんだけど!?
どうしてノーパンから下着着用して痴女度あげなきゃならんのだっ!!
「う...うぅ...」
でも、着けないとまたノーパンだし。
痴女パンかノーパンか...。
痴女パン...。
ノーパン...。
ぐ...ぬぬぬぬぬぬ。
......。
...。
はい、負けました。
どうせ誰も見ないしね。
うん。
もしもスカートが捲れちゃった時に、着けて無かったら警察っぽい何かにしょっぴかれるかもしれない、っていう結論に至ってこうなった。
いや、だってまだ異世界の法律とか知らないし、流石にノーパン露出狂は犯罪になっちゃうと思うんだ...。
あー妙に高級なシルクの感触が...落ち着かない。
「おっ、似合うじゃないか」
私がお風呂場から出て行くと、壁に寄りかかってたリディアさんに声を掛けられた。
どうやら私が出てくるのを待っていてくれたみたいだ。
「あの、私、この服が良いんですけど...」
「ん? そうか?」
うん、この服がいいから、何だか深淵とかいうわけわかんない謎素材で出来た、超高級っぽい服はいらねーです。
「んー...だがな、その服だと貴族感がまるで無い
気に入ったのなら部屋着にしてもいいが...」
あ、はい。普段着は駄目ですか。そうですか...。
結局普段着はゴスロリドレスで決定してしまった。
それで私の身体に合うように自動でサイズを調整する魔法陣を組み込むとかファンタジーな事を言われ。
私の魔力波紋とかいうわかんないものを水晶玉みたいな謎道具で取られ。
服の受け渡しには1日かかるらしく、その日はそのままリディアさんの家へと連れて行かれる事となった。
ん、だけど...。
なぜかどんどん遠くに見えてる、ネズミーランドで見た事があるような城に向かって突き進んでいる。
途中で騎士が守る妙に立派な門を抜けて、貴族街っぽい塀の内側へと入りました。
あのね、リディアさんや。
騎士に顔パスで入れて、その上私が居るのスルーって。
いったいどれくらい地位が高いんでしょうか?
それに、リディアさんのフルネーム、リディア - N - フォールって言うんですね。
さっきの騎士達がフルネームで呼んでるの聞いてしまった。
うん、もの凄く貴族っぽいです!!