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第4話

 



 それから私はリディアさんに連れられて街の中までやってきた。

 途中で見上げるほどの壁を潜ってきたんだけど、あれには私も圧倒された。


 高い建造物は日本でいくらでも見慣れてるはずだったのに。

 あの壁にはそんな建造物には無い威圧感が存在した。


 まさに街をまもるための壁って感じだ。



「メイ、食い物の露天が気になるんだろうが、逸れないようにな」


「う、うんっ」



 優しく微笑みながらリディアさんが私に手を差し出して来た。

 別に露天が気になってたわけじゃないんだけど、スラムの子だって思われてるからキョロキョロしてたら迷子になりそうに見えちゃうのか。


 うぅ...本当は子供じゃない...。

 中身は全然子供じゃないんだけど、渋々差し出された手を握って繋いで歩く。

 こうやって歩くのはもの凄く久しぶりで、何だかとっても気恥ずかしいんだけど...悪い気はしないかな。



 中世みたいな町並み。

 冒険者みたいな格好をした人達。

 大きな杖を持った魔法使いっぽい女の人。


 ファンタジーっぽい風景が私の視線を奪っていく。


 手を繋ぎながらもキョロキョロと周囲に目線を泳がせながら、たどり着いたのは...。


  --冒険者ギルド...?


 ファンタジー小説の定番が来たっ!!!

 そして連れられるがままに建物へ入ると、リディアさんは迷わずカウンターに向かって綺麗なお姉さんに話しかけた。



「ギルドマスターはいるか?」



 それから通された部屋で。私は借りてきた猫のように大人しく座っている。

 と、言うのも...。


  --ギルドマスターでけぇ...


 身長、3メートルくらいあるんじゃないですかね?

 全身筋肉だらけで、白い髭を生やした巨体がそこに居た。印象としてはまるでシロクマみたいだ。


 こんな人に怒られた日には心停止する自信があるぞ。...たぶん、既に私の心臓は動いてないけど。


 だから余計な事を言って機嫌を損なわせないように、リディアさんとギルドマスターの会話を横で大人しく聞くことにした。


  --ビビリ?


 ははは、何とでも言いたまえ。


 それで二人が何を話してるかって言うと。当たり前だが私の事だ。

 私が『ユニークスキル』使ったんだけど、スラム出身で奴隷落ちさせられる可能性があったから保護した。だからリディアさんを後ろ盾に冒険者登録させてほしい...と。


 まじか...。

 私、冒険者デビューできるの!?

 もの凄く面白そうなんだけど!!

 やっぱり異世界モノだと、いきなり飛び級でランクアップして注目浴びたり、新人いじめを撃退したりするイベントがあったりするのかな?

 あ、いや...でも、スキルはあんまり使わない方が良いみたいだし、スキル以外だと大して強くないもんなぁ...私。



「それで嬢ちゃん、名前は?」



 私が脳内で華々しい冒険者デビューについて妄想してると、不意打ちでギルドマスターに話しかけられた。



「うぇっ! あっ、えっと、『メイ』です」


「メイか...。それでコイツ...リディアが後ろ盾になるっつー話なんだがな。冒険者できるか?」


「はっ、はいっ! やりたいですっ」


「そうかわかった、ただな...後ろ盾になるっつー事は、嬢ちゃんが悪さしたらその尻拭いをリディアがするっつー事なんだ。もう悪い事には手を出さず、いい子にできるか?」


「はいっ!」


「よし、それなら信じてやる。期待にこたえろよ」



 そう言うと、でっかい手が私の頭に覆いかぶさってきた。


 びっ、ビビった...。


 ぬああー...。


 どうやらギルドマスターは私の頭を撫でてるつもりらしい。力が強すぎて頭が押さえつけられてるような感じになっちゃってるけど...。

 手が左右に動く度、視界がぐりんぐりん動いて...。うっぷ...酔ってきた。


  --ああー......。


 そろそろやめてー、脳みそが溶けちゃうからー。



「それじゃあリディア。儂からは話しをつけておく。しっかり責任を持てよ」


「ありがとうございます。勿論、剣にかけても自ら決めた事に責任をもちますよ」


「そうじゃったな、お主はそういうヤツじゃった」



 そう言ってギルドマスターとリディアさんはお互いに微笑み合うと、ガシッと握手をしてから席を立った。

 そしてそのまま受付で私の冒険者登録を済ませると、リディアさんが『装備を整えに行くぞ』と言って手を繋いできたので、私は手を引かれるがままに街へとくりだしていた。


 門の近くは食べ物の露天が多かったけど、街の奥の方は一軒家の店が多いみたいで、売ってるものも怪しげなポーションや武器、何に使うかわかんない道具などが目に付くようになってきた。

 間違いなく手を繋がれてなかったら駆け出して丸一日見てまわれる自信がある。


 っていうか、あの魔導書っぽいもの売ってる店とか凄く気になるから見に行きたいんだけど。


  --うずうず


    --うずうず


「メイ、店は後でな」


「う、うん」



 やばい、注意されてしまった。こんなん注意されるの母親以外ではじめてだぞ。

 おかげで少し気恥ずかしい...。


 それから更に街の奥へと進んで、裏路地に入って...って、人通り全く無いんだけど何処いくんだろ?

 店っぽいものは一応見当たるんだけど、さっきみたいに看板があって売り物が表に陳列されてる感じじゃなくて、店っぽい雰囲気の扉が建物にあるだけだ。しかも凄く高級店っぽい。

 だって、さっきまでは全然見かけなかった硝子窓やステンドグラスのランプなかが店の外装を飾ってるし。高級な感じの威圧感が半端ない。


  --あれ?


 たしか、私の装備を整えるとか言ってたよね?

 まさか、こんないかにも高そうな店に行くわけないよね?


 私のそんな不安は他所に、リディアさんは明らかに一見さんお断りみたいな店の扉に手を掛けると、戸惑いもせずにその中に入って行ってしまった。

 そんなリディアさんに、私は一人店の前で呆然と......立ちすくむ余裕なんてモノはあたえられず、手を引かれて強制入店させられてしまった。


 ま、まだ心の準備が...。


   --カララン


 ドアベルが鳴る中、店の中へと入っていくと、そこはとってもファンタジーな世界が広がっていた。


 


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