恋の信号
ピコンピコン……………あ、しまった、また赤信号になっちゃった。いつもより遅く家を出た私は信号に時間をとられ焦っていた。チッチッチッ……後ろから自転車をゆっくり漕ぐ音が聞こえてくる。なんとなく振り向く。「あ…。こ、こんにちは!」「おぉ、おっす。」先日辞めたばかりの部活の先輩だった。この先輩は私の好きな人だ。いつもは近くにいると誰よりも安心するのにやっぱり今日は違う。気まずい……。胸がチクッと痛む。
ガタンッ……バサッーーーーーー
あれ?ベッドの上?目を覚ますと保健室にいた。「りおなちゃん………。」ん?せ、先輩?隣のベッドから聞こえた気がした。カーテンをあけて隣のベッドをこっそりとのぞく。「えっ、先輩?」先輩は眠っていた。さっきのは寝言?「わ!りおなちゃん!目覚ましてたんだ…大丈夫?怪我してない?」「え、えっと、、、気づいたらベッドにいて……。」「あ、記憶ない感じ?」「ごめんなさい。無いです…。」「実はりおなちゃんが急に倒れたから急いでここに……」「え?!すみませんでした。えっと……実は私病気なんです。その病気は絶対治らなくて……」「病気ってどんなやつ?」「私ガンなんです。でも、もうすぐ死ぬんです。だから死ぬまでにできるだけたくさん学校に行きたくて。」「い、いつ……?」「……い、1ヶ月……。」先輩が急に涙を零す。「なんで、なんでもっと早く……。」「あ、あの……先輩なんで泣いてるんですか?」「り、りおなちやんのことが…」 ガラガラガラ…保健室の扉が開いた。なつこ先生だ。「あら、りおなちゃんと山田くん、起きてたのね。」
「あ、なつこ先生。こいつ頼みます。」「はーい。ありがとね〜。」
先輩行っちゃった……。
「なんか、山田くん元気なかったね。」「そ、そうですね。」
「さっきね、山田くん、ものすごい青ざめてりおなちゃんお姫様抱っこしてここに連れてきたんだよ。」微笑ましそうになつこ先生がいう。「2人はもしかして付き合ってる?」「え?」「あー違ったか〜。でも、山田くん、りおなちゃんのこと好きだと思うよ〜?」先輩と両想い?いやいや、あるわけない。
学校帰り、私は、あいとカフェにはいった。
入ると先輩が真剣な表情で座っているのがみえた。その手前には女性が座っている。あいが先輩が座っている席の近くに座る。「ちょ、ちょっとあい。」「あ、あー、先輩でしょ?今の状況気になっただろうと思ってここに座ったんだから。」あいは、私の好きな人を知っている。あいなりの気遣いだ。
「あのさ、別れてほしい。」「どうして?」「理由は言えないけど、別れてほしい。」「なにそれ。意味わからない。」「頼む、別れて。」「かーくん、そういうとこあるよね、なんでかちゃんと答えてよ。私はまだ別れたくないよ。」「絶対言えない事情があるんだ。別れないとゆりのこと傷つけると思う。」「もういい。わかった、その代わり、復縁とか絶対しないから!」
女性は店を出ていった。別れ話?あんな綺麗な人をなんでだろう。
あいとわかれて1人で帰り道を行く。
「りおなちゃん!」振り向くと先輩がいた。「どうしたんですか?」「今朝言いかけてたこと、ちゃんと言いたくて…。俺、りおなちゃんのことが好きなんだ。付き合ってください!」「せ、先輩…。」すごく嬉しいけど照れくさくて言葉がでない。でも、ダメだ。私には病気がある。しかも、あと1ヶ月たてば私はこの世からいなくなる。先輩を悲しませてしまう。心の信号が赤になる。「私、1ヶ月後に死ぬかもしれないんですよ?」「俺はりおなちゃんのことが好きだ。だからできるだけたくさんりおなちゃんの傍にいたい。俺がりおなちゃんを幸せにして病気なんて治してやる!」「でも……」「じゃあ、俺のことどう思ってる?」「わ、私もす、す、好きです……。」恥ずかしさで目を合わせられない。「こっち向いて。俺は真剣にりおなちゃんと向き合いたい。りおなちゃんが苦しい時は一緒に苦しんで、悲しい時は一緒に悲しんで、辛い時も一緒に乗り越えたい。治らない病気だとしても奇跡を信じて一緒に戦いたい。だから、俺と付き合ってください!」「先輩……」思わず泣いてしまった。
「かーくん、今日で1ヶ月だね。」「ねぇ、りおな、ちゃんと生きれたね。」「かーくんが幸せにしてくれてるから今も生きていられるんだよ。」