表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/34

ERの仕事

18 ERの仕事


 苦しいアイダホ生活だったが、マウンテンホームの一番良い所は事件が全く無かったことだ。


 確か当時殺人事件は一件もなし。新聞にはいつも(鮭が川に帰ってきた!)とか(マクドナルドに強盗!50ドル取られる)が大見出しになっていた。

「ここは平和で、それがいいよね」と夫に言うと

「人が少ないだけじゃないの?」

確かにそれもあるかも。犯罪率が少ないのではなく、人がいないのかも。


 夫はこの時はERで救命士として働いていた。こんなのんびりした場所柄なので仕事は暇だった。ニューヨークから異動してきた同僚は


「ニューヨークと同じ職種か??」とびっくりしていた。


そこでは撃たれた人などでERはいつも満員だったそうだ。マウンテンホームは皆で待機室でコーヒー飲んで談笑していることもあった。



 事件は少なくても事故は起こる。救急車で出動ということもあった。

ある日緊急呼び出しが。慌てて飛び出して行くと、なんと


「エミューが逃げた、捕まえてくれ」

ええええ~~? エミュー?


牧場のようなところでダチョウに似てるエミューを飼っていたそうで、それが逃げた、と。

砂漠な荒野のハイウエイの一本道を


走るエミュー、追うおとうたん。


走るエミュー、追うおとうたん。


まさかERの救命士がエミューを追っかけて走るハメになるとは。


「いろいろなことがあるね、面白かった」と言っていた。こういう仕事のほうが合っているんじゃないかと思ったりもする。


ひどい!と思われるかもしれないが、ERはやはり人の生死に関わる仕事なので助けられなかった患者さんのことを思って泣く姿を見たこともある。


特にY基地では飛行機での緊急の患者さんを運ぶ仕事だったので、新生児も多くて親御さんのことを思ったらたまらないと言っていた。見かけは強面の軍人さんですがとても優しい人なのだ。


 のどかで平和とはいえ、アイダホのこの地区は本当に住みにくいところだった。

冬はマイナス15度になり、夏は50度近く上がる。砂漠の枯れ草が自然発火して火事になったこともあった。

そして雨が殆ど降らない。私が居た2年半で雨が降ったのを見たのは2回位でしかも1日中ではなく10分位だった。

ちょろちょろっと。


 私は花が大好きなので、基地で無料で配られた花をもらってきた。毎日毎晩たっぷりの水が必要なのだが、少し水やりが遅いとカリカリに枯れる。あっという間にドライフラワーに。


ジョリーンはベジガーデン作ると張り切っていましたが、野うさぎが多くて、できかけた野菜は食べられてしまい、ファッキンうさぎ!と怒っていた。ちなみにアイダホの野うさぎはでかくて可愛くない野獣だ。


 そんなふうに雨が降らないところなので、砂嵐がやってくる。 お天気の良い日に(というか、お天気が良いのは毎日)2階の窓を開けていた時


「は~気持いい~」と言いながら外を見ると、遠くの方からごごごごと音がして黄色の壁が押し寄せてくる。

まさに砂の津波。ごろごろと枯れ木の玉も転がしつつやってくる砂嵐。


「やばい!」


すぐに窓を閉めると、次の瞬間人間くらいの大きさの枯れ草の玉がドカンドカンと家に当たっていく。車もガリーガリーとこすられていく。小さい枯れ木玉は車の下に溜まっていき、取り出すのが大変だ。


嵐の去った後の家の中は細かい砂だらけでそれがすごくいやだった。 電化製品はかなりダメージを受けていた。当時ブラウン管のテレビの中にも砂が溜まっていた。


大変な生活だったけど、その経験があるので今なんでも耐えられるのかもしれない。

それでも当時は精神的に苦しく、どんどん鬱のような状態になっていった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ