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出産

11 出産


 息子が生まれたのは基地の中の病院だ。 当時は妊娠用語も出産用語も本当にわからなくて、(海外で子供を産む本)を隅々まで読んだ。


世界中どこでも赤ちゃんの生まれ方はだいたい同じだと思う(自然分娩か帝王切開)生まれてくる場所も同じだと思う。マフィンからかお腹を切ってだ。ところが出産の用語がわからない。 


ただでさえ不安なお産。 全員がアメリカ人でしかも軍人なので、きっとランボーな人もいると怯える日々だった。


 日本人妊婦そして基地で子供を生んだ女性が集まった時にいろいろな話を聞いてみた。

一番驚いたのは日本では痛みを我慢すると(我慢強い)と褒められるのに、アメリカでは怒られるというのだ。

「言わなくちゃわからないじゃない、あなたの口はなんのためについているの!」って言われたのよ。 


全員ひえ~~とおののく。


「産んだらすぐに退院よ、1日よ」


全員ひえ~~。


 これは本当だった。なんと次の日に退院だ。疲労マックスでふらふらで家に帰った記憶がある。当時の日本は2週間入院で母乳マッサージを習い祝い膳まで出ると聞いて、すごく羨ましかった。

妊娠中も数々のひえ~~があった。

超音波は通常1回しかとってくれないのだ。 

日本では毎回写真をくれると聞いていた。映像にしてビデオでくれるというではないか!?


ずるい。


それにしても1回って!夫が医療関係者ということで友達サービスでもう1回。たったの2回だけだ。

なぜ毎回写真を撮って、それをくれないのか聞いてみた。 

「なぜなの?」と聞くと肩をすくめて

「さあ?高いから?」

え~~~~~? 


「健康なら必要ないじゃないか?すぐに生まれてくるのに。それに高いから」

やっぱりそれなんだ。

こまけえことはいいんだよ、なアメリカ。 


 妊婦の体重制限はほとんどなかったので、これをいいことに食べに食べ太りに太っていった。

家のそばにあったこともあり毎日ピザとアイスを食べ続けた結果なんと25キロ増で生まれる寸前はもっと増えていた。日本では絶対に怒られる体重増。 

 それはきっちり自分に返ってきた。 赤ちゃんが大きくなり生むときに大変だった。


「ぎゃ~~なにかが、引っかかってるぅ~!!」と叫ぶと


「なにか、じゃない。Babyだよ、はいプッシュプッシュ」こちらでは「いきむ」ことを「プッシュ」と言う。

押し出す感じか?

プッシュを繰り返し生まれた赤ちゃんは約4000グラムと大きかった。


この出産の時は医者が少なく、先生は行ったり来たり。「あ、あっちが先かな」と隣に行ってしまった


「ああ~行かないで!!」

「イッツオッケー」なんて行っちゃった。オッケーじゃねえ。


カムバーック!!


 隣から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきて「負けたあ」

しかし生まれそうで生まれない。だって引っかかってるから。

夫はそばにいて手を握ってくれていたが、正直「触んじゃねえ」という気持ちだ。というかそれどころじゃない。痛い痛い生まれない。


そして医者は


「うん、スプーン使おう」


スプーンって!!スプーンて何??

これは鉗子のことだった。鉗子分娩をすることになった。スプーンと呼ばれるのはサラダを取り分けるサラダスプーンに似ているからだと聞いたことあるが真偽はわからない。


「なんでも良いから早く~!!」足をバタバタして、大騒ぎをしても怒られなかった。

先生罵声は浴び慣れてると見た。


「オッケ~プッシュプッシュ」と言いながらスプーン、いや鉗子を手に近づいてくる。

「その前にここ切るよ」と日本と同じく会陰カットをするのだが、麻酔なしでパツパツなあそこを切る。 

ぎゃ~~~こ~わ~い~!!


しかーし、バチンと切られた時はそれほど痛くなかった。 それどころじゃなかった。


本当に痛かったのは鉗子を無理やりつっこんで、力任せに赤ちゃんを引きずり出したときだった。

べり!っと絶対に何かが破れた音がして、その時の激痛は人生で味わったことのないようなものだった。


出産を終えて医者が股間を覗き込んで「おお~これはいっぱい縫わないといけないな」 おまえ様が力いっぱい引っ張ったんだよな?


そうやって生まれた息子。顔に赤い鉗子のマークがついていた。

夫はすぐに話しかけ赤ちゃんのビデオを撮り、私の顔も撮り(酸素マスクをつけて感動というよりも疲れきって呆然とした顔だった)医者が後処理として私のあそこを縫上げているところも撮り(やめろよ)ものすごく大喜びだった。


お父さんとお母さんになった瞬間だった。





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