ぶっきらぼうな神様
初めての作品となります。
宜しければ是非目を通していってください。
コンビニの駐車場。
冬の空の下にて。
小さな携帯の中に広がる巨大な匿名掲示板。
その中で私の立てたスレッド。
飢えた男でもなんでもいい。
一刻も早く私を助けろ!
タイトル:15♀だけど家出したwwwwwww
本文:外寒すぎwwwwwww誰か助けろwwwwwwwww
これで良し。
あとは待つだけだ。
早速一つ、二つとレスが付いていく。
別に汚されたって構わない。
住む場所が欲しい。
友達なんて私にはいない。
私を助けられるのはきっと、私の知らない誰かなんだ。
付いたレスに私もちょいちょい返事をしていく。
こちらの居場所は教えた。
レスしてる奴でもROM専でもどっちでもいい、早く来い。
寒さでかじかんだ手を必死に温めながら、誰かを待つ。
いざとなるとやっぱり不安なのだろうか?誰も来やしない。
やっぱりダメだったのか、と再び携帯とにらめっこをしていると轟音が近付いて来た。
私はバネのように素早く頭を上げる。
ビンゴ。
私の目の前にはバイクが一台停まっていた。
勿論ライダーも。
男はヘルメットを脱ぐと私にゆっくりと近付いてくる。
やった!こいつイケメンだ!
夜中にも関わらずグラサンをかけている理由は至って不明だけど、整った顔立ちなのは分かる!
男は私の前で立ち止まり、座り込んだ私の顔を上から見下ろしていた。
私「あっ、あの…」
男は何も言わず携帯を出すと、すぐに誰かと会話を始めた。
男「おいオッサン、本当にこいつでいいんかよ?マジでガキじゃねえか。」
「…ああそう、分かった。」
男「お前、スレで神待ちしてたんだって?」
「知り合いから迎えに行ってやれって言われたんだよ、聞いてただろうけど。」
私「そうです、ありがとうございます。」
なるべくこういうのは無愛想な感じでいかなきゃいけない。
別に何されたって構わないけど、どちらかと言えばされたくはない。
でもこんなイケメン相手ならいいかも、と思ったけどこいつなんかすっごくめんどくさそう。
男「まぁいいや、ケツに乗れよ。」
「俺の自宅に連れてくわ。」
こんなイケメンと二人乗りですか。
バイクでですか。
いいんですかいいんですか。
私はバイクのエンジンをかけ、「乗れ」と男が合図したのを確認してゆっくりと跨る。
…ヘルメットがない。
これってダメなんじゃないでしょうか。
ということでヘルメットを貸してもらえないのか聞いてみると、
男「俺のお気に入りのヘルメットを貸すわけねーだろうが。」
「俺は元々連れて帰る気なんかなかったんだよ。」
よくわかりませんがすごく怒っていらっしゃる。
渋々ノーヘルスタイルで男にしがみつき、夜の街を駆け抜けていく。男の後ろで。
しかしこのスピード。
ちょっと出しすぎなんじゃないだろうか。
口を開けばすごい勢いで風が入り込んできてまともに声が出せない。
男「ついたわ。」
それはそれは本当に住む場所だけを与えるために造られたようなボロアパートであった。
階段を上がり、男の部屋らしき扉の前に立つ私と男。
鍵を開け、中に入るもそれはそれは予想通りのボロさであった。
男「俺別に住む場所さえありゃいいって考えだから、悪いけど我慢しろ。」
一応この男にもそういう自覚はあったのか。
中を見渡すと本当に必要最低限のものしか置かれていない。
それ故に散らかっていない。
パソコンが一台。
電子レンジが一台。
冷蔵庫が一台。
ファンヒーターが一台。
扇風機が一台。
本当にこれだけ。
私「い、いえ、充分です。ありがとうございます。」
男「まぁ俺もう寝るからお前も寝ろ。」
「布団は一人分しかねーから、お前使えよ。」
なんかぶっきらぼうだけど、案外優しいな。
というかこの男の名前知らないな。
私も名前教えてないな。
朝が来たら聞こう。
私は妙なニオイのする布団を被って、ゆっくりと眠りについた。