表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

序幕〜鬼神と魔王〜其ノ陸

「ええぃ、信長の死体はまだ見つからないのか」


……光秀が、本能寺を襲撃してから、一夜があけた。

歴史ある伽藍は、その全てが焼失し、未だ其処かしこにて、火が燻っている。

その中、光秀の軍勢は、信長の遺体を捜索していた。

「信長の死体を曝さねば、我等の反乱は意味をなさない。…秀満、本殿跡にも奴めの亡骸はなかったか?」

光秀は、幾人かの兵と共に、近づいてきた、甥の明智佐馬介秀満にそう、尋ねる。

「……その事なのですが、羽柴秀吉様より御報告があると」

「何…?」


光秀がそう呟いた瞬間、背後にある草蔭が、ガサッと揺れる。

「久しいなぁ、光秀ぇ。いや…禪鬼族四高天が一角、‘白明はくみょう光慧丸こうけいまる

「……人の世に居る時は、その名で呼び合わない戒めの筈だが、四高天一角、にして禪鬼忍軍当主‘影猿かげざる’の豊國丸ほうこくまる殿」

光秀の言葉に、草蔭の向こうで豊國丸は静かに笑う。

「いやいや、そういやワシはそんな名前だったっけなぁ。長ぇ事人間‘秀吉’になっていたから、自分の名前忘れかけてたわ」

「…その、軽い性格は相変わらずだな。そういえば、報告とは?」

豊國丸は光慧丸の問いに、顔に浮かべていた、軽薄な笑みを消し、転じて真剣な顔になる。

「ワシも、先程伝令を受けたのだが、ここ本能寺にて、昨晩陰陽の揺らぎが生じたらしい。……信長やその小姓達の中に、陰陽師は居たか?」

「いや……信長を含めその様な者は居なかったはずだ。……!まさか…」

「そうだ。おそらく、卑族共が動いている。それも、転身術を使える様な、そこそこ力を持つものが、な」

「奴等の行き先は、分かったのか?」

「それを、ワシが調べに来たのだが……ワシは十中八九、‘彼の島’だと思う」

その名を聞き、光慧丸の顔は、焦りと恐怖で歪む。

「な……!そ、そこまで分かっているなら、既に彼の島に軍勢を向かわせているのだろうな」

そう問われ、豊國丸が首を横に振ったのを見て、光慧丸は激昂する。

「何故だっ!!貴殿も分かっているだろう、彼の島に眠るのが、何なのかを。あれが目覚めれば、卑族は大きな力を持つ事になるのだぞ」

「まぁ、落ち着け。確かに、奴等が彼の島に行ったのなら、直ぐに追ってを差し向けるべきであろう。しかしだ、彼の島は周囲が強い気で囲まれている故、雑兵等を送った所で、禍々しき気に中てられ、死ぬだけだ。それが、我等禪鬼の兵だとしてもな。……例え信長が、卑族と共に彼の島へと行った所で、無事でいられるとは思えぬ」

「しかし…っ」

なおも、反論をしようとする光慧丸に豊國丸は溜め息をつき、云う。

「兎に角だ、まずは奴等の行き先を調べる。その後、奴等が彼の島へと行くようであれば、ワシがお前と秀満…秀玄丸を彼の島へと転身させる」

「……分かった」

渋々ながらも、光慧丸は頷き、 それと同時に草蔭が揺れ、豊國丸が姿を現す。

…約五尺(2m)の巨躯を持ち、身体中に生え盛る体毛は、まさに猿という風貌である。

「それじゃぁ、早速奴等の行き先を調べようか……と、その前に……」

豊國丸は、ゆっくりと体を忙しく動き回り未だ信長の遺体を捜す、兵士達を見て、云う。

「どうせ、『光秀は秀吉に殺されるんだ』。あいつら、邪魔になるし……消すか」




殺那、光慧丸、豊國丸、光玄丸、そしてその回りの幾人かの兵士の目が闇色に光る。

そして、変わりゆく感覚に、彼等は―――




鬼へと戻った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ