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序幕〜鬼神と魔王〜其ノ参

「てやぁぁっ!信長公、御首級頂戴いたす」

 光秀の宣戦布告から、凡そ半刻(約一時間)・・・始め居た二十数名の小姓は最早、森蘭丸を入れ十名足らずになり、その全員が満身創痍の状態であった。

 そんな中、信長は弓を手に取り本能寺に侵入してくる明智兵を次々に射り、矢が無くなれば、敵兵の槍を奪い、奮戦し、未だ傷を受けてはいないも、四方八方からの攻撃に疲れが見えてきた。

 その折、一人の足軽が信長の一瞬の隙を突き、刀で斬りかかってきた。

 首を狙い、振り下ろされてきたその斬を信長は、槍で受けるも、既に幾多の攻撃を防いだ槍は金属疲労を起こしており、足軽の攻撃に耐えきれずに、小気味のいい音と共に折れた。

「っく!」

 槍が折れた瞬間、信長は半身をずらして斬撃をかわそうとするも、うまくいかずに肩を袈裟懸けに切られる事となった。

「ぬぅ・・・んっ!!」

 信長は、更にまた攻撃を繰り出そうと刀を構える足軽に、折れた槍を投擲げつけ槍の穂先は見事に足軽の鎧を貫き、深々と胸に突き刺さった。

 信長は、素早くその倒した足軽から刀を奪うも、またその隙をつき別の兵が槍にて信長の膝を刺す。

「ぐぁっ!・・・ぬぅぅ、雑兵め」

 自らの足に突き刺さる槍を辿り、それを携える兵士を強く睨み、一瞬兵士が恐怖でたじろいだ瞬間、信長は槍を刺したまま斬りかかり、その兵の首を飛ばした。

 そして、また直ぐに刀を構えるも、既に周囲は完全に明智の兵に囲まれ万事休すの状態であった。

「我が命運、ここまでか・・・」

 そう呟き、信長は近くで同様にこれ以上の身動きのとれなくなっている、蘭丸や他の小姓を集まらせる。

「・・・蘭丸、儂はここで果てる運命の様だ」

「そ、その様な事を申してはなりませぬ!最後まで、起死回生を伺いましょう!」

「いや、儂は裏切り者達の手にかかり、その首を晒されるぐらいなら・・・自ら片をつける」

 その、言葉に蘭丸は幾分かの間の後、目に大量の泪をためながら頷く。

「・・・しかと・・・然と・・・っ!」

 蘭丸の他の小姓も同様に目に泪を溜め、頷くのを見て信長は静かに微笑し、真後ろの障子の内に入った。

 

 信長は、寝所に入るとまず、自分を囲むように油を辺りに散らし、そこに火を付けた。

 火は、瞬く間に辺りを燃やし、次々と本能寺全体に回ろうと暴れ狂う。

 そんな、炎の中心で信長は胡座をかき、数分の瞑想の後、唄う。

 

「・・・人間五十年、下天の中をくらぶれば、夢幻のごとくなり

 一度生を受け、滅せぬ者のあるべきか・・・」

 

 それは、敦盛の一説。そして、信長の辞世の句。

 

 信長は、側に置いた短刀を手に取り、その切っ先を腹に当てた。

 そして、力を込め刺そうとした―――――

 

 

 刹那、その声は響いた。

 

 

「織田上総介信長・・・貴方はまだ生きることが出来ます」

「何者だ!」

 信長は、それまで己が腹に当てていた短刀を構えて、声の聞こえてきた真後ろを振り向く。

 

 ・・・・そこには、一人の少女が居た。

 地に付きそうな程長い漆黒の髪に、萌える翡翠(ひすい)色の(まなこ)。そして、右手には雅やかな装飾の施された鉄扇を携える少女のしている格好は、大名の娘のように気品があり、可憐な物だった。

 さすがの、信長も驚きを隠しきれずに口を大きく開ける。

 そんな、信長の反応も気にせず少女は云う。

 

「貴方は、私たちの仲間であり、私たちの希望・・・人と護鬼の間に生まれし者よ・・・」

 


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