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さよなら

誤字脱字が多い上に、書き方が・・・です。 申し訳ございませんm(_ _)m

「もう、朝か」

時計は6時48分を指している。そろそろ飛鳥が起こしに来るだろう。


俺は自分の部屋のノートパソコンを徹夜でいじっていた。もしかして暦が何らかの精神病かと思ったから

「駄目だ、そんな病状の精神病なんてない」

俺はPCのディスプレイから目を外らした。


今のところ、可能性がある精神病は何もない。俺の調べ方が悪いだけかも知れないけど・・・


ただ分かった事はある。


対象喪失。大切なものを失うという事をこう呼ぶらしい。精神病かどうかは分からんが。


俺が調べて分かった事は、対象喪失した時に人間は比較的同じ経過を辿るらしい。


まずは否認、怒り、取引、抑うつ、受容。この様に5つの段階で対象喪失を人間は乗り越えていくらしい。


暦は・・・コレを、対象喪失を乗り越えていないんだ。抑うつの段階なんだ。暦は恐らくお兄さんが死んだことは認めてるはず、とういう事は否認を乗り越えている。


次に怒り、これも乗り越えている。


取引。私が悪いからお兄ちゃんが死んだんだ。私はどうなってもいいから、お兄ちゃんを返して・・・的な感じで暦は悩んでいるだろう。だとすれば乗り越えていない。それに重なって抑うつか。


ここか。暦の精神状況はまさにコレだ。もしかしたらこれが原因で他人を、盈月をお兄さんだと思うようになったのかもかもしれない。現実逃避をして。いや、違うか?これが原因で何らかの精神病を発症して盈月をお兄さんだと思うようになったのか?・・・分かんねぇ。それに精神病とは限らないか。                                                   

もしかしたら、この二つさえ乗り越えられれば暦は・・・


だけど、もし・・・もし駄目だったら?


暦の精神が耐え切れなくなり壊れたら?


最愛の人が死んだんだ。そう簡単に乗り越えられるのか?


・・・駄目だ、もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。今日は学校を休んで、寝てよう。それに、まだ暦に会うわけにはいかない。


俺は自分の部屋を後にし、台所に向かった。


徹夜でくらくらする頭を抑えながら、台所まで行くと飛鳥が朝飯を作っていた。


せめて、飛鳥と一緒に飯は食おう。俺の精神も相当参ってるし、そうしたほうが気分転換にでもなるだろ。


俺は鼻歌を歌いながら味噌汁をかき混ぜてる飛鳥に声をかけた。


「おはよ」


飛鳥は一瞬ビクッとなり振り返った。


「なっなんだぁ、お兄ちゃんかぁ。ビックリしたよ。こんな朝早く誰!?と思って」


はいはい、どうせ俺はいつも遅くまで寝てますよ。


「珍しいね、お兄ちゃんがこんな早起きするなんて」


「あーそうだ、飛鳥。今日は学校休むわ。どうも体がダルい」

俺は椅子に座りテーブルに突っ伏した。


「え!?大丈夫?熱は?」

飛鳥がお玉を置き、俺に近づいてきた。


そして・・・顔を近づけてきた。


「お前!何するんだよ!?」


「何って熱計るだけだよ?」

飛鳥は可愛らしくキョトンと首を傾げた。


「あぁ、熱計るだけか。そうか、大丈夫だ。熱はないから」


「ホント?」


「本当だ。つうか、味噌汁。かき混ぜなくていいのか?」


「あぁ!忘れてた!」

ドタドタと飛鳥が朝飯作りに戻っていく。


そんな飛鳥の後ろ姿を見ながら、俺は朝飯が出来るのを待った。



「それじゃ、お兄ちゃん。行ってきます」


「おう、気をつけてな」


「うん、お兄ちゃんもなんかあったら連絡よこしてね」

飛鳥はそう言い残し、家を出た。


「はぁ」

溜息をはき俺は自分の部屋に向かった。


自分の部屋に入りベットで横になる。


俺はどうすればいいんだろうか?


海や今原の言う様に暦と距離を置くべきなのか?


それとも、暦に現実を諭したほうがいいのか?


分からない。もう何が最善で何が最悪なのか分からない。分からないだらけだ。


「はぁ」

二度目の溜息をはく。


寝よう。


俺は目を瞑った。


意識が眠りに落ちていく。


暦、今頃何してるのかな。


そこで意識が完全に眠りについた。



今日は翔、休みか。


私は1時限目の授業の準備を終え、自分の席に着きながら翔の席を見た。


あいつが1時限目にいない事はしょっちゅうだが、今日は担任から休みだと朝のHRに伝えられた。


やっぱり昨日の事が関係してるよな。


でもあいつなら、何か打開策とか見つけてくれるかもしれねぇな。あいつなら、もしかしたら暦を救う事が出来るかもしれない。本当は私も翔の手伝いをしたいが、成功しない事だってありえる。その事を考えると、手伝えない・・・


本当に私は・・・臆病者だ。


「あ、あの!海ちゃん」


誰かに声をかけられたので後ろを振り返る。


「おう、どうした?」

珍しい事に月乃が声をかけてきた。と同時に嫌な予感が頭を過る。


「お兄ちゃ、じゃなくて桐生君の電話番号分かる?」


・・・嫌な予感が当たってしまった。


月乃の顔を、目を見てみる。


あの時と同じだ・・・あの時と同じ目だ。


間に合わなかったのか・・・?


「あの、海ちゃん?」


「おらー、早く席に着けー」

月乃の言葉と同時に教師が入ってきた。


「あ。また後でね、海ちゃん」

月乃はそう言い、自分の席に着いた。


「クソ・・・」

私は誰にも聞こえないように呟いた。


まずは、落ち着くんだ私。月乃はお兄ちゃんと言いかけて、翔君と言った。ならまだ間に合うかもしれねぇじゃねぇか。あいつが、翔が月乃と距離を取ればまだ取り返しがつく。そうだ、まだ間に合う。


私は自分にそう言い聞かせ、行動を起こした。



「悪いな、洋平。呼び出して」

今は昼休み。月乃の問いかけをすべて、言い訳でごまかし続けた私は屋上に洋平を呼び出していた。


「別にいいよ。それで何?」


「あぁ、実は翔の事なんだけどな」


「桐生?もしかして暦ちゃんと関係ある?」


な、なんだ知ってるんだ?1年の時にはこいつ、翔とよくサボってて学校に来ていなかった筈なのに。


洋平は私の疑問に気がついたのか、喋りだした。


「まぁ、僕が知ってる方が話しやすいでしょ?その事は気にしないでくれ」


確かに。1から説明する手間は省ける。気にしない方向でいくしかねぇか。


「なら単刀直入に言う。暦が壊れかけてきてる。今朝、翔の電話番号を聞かれた時に、お兄ちゃんと言いかけたんだ」


さすがの馬鹿で有名な洋平も顔をひきつらせた。


「そ、それはあんま良い事じゃないねぇ」


「だろ。だからお前も私に協力してくれ」


洋平は首を傾げる。


「協力?」


「あぁ。翔が学校に来たらずっと翔と一緒に行動してくれ」

私は頭を下げる。


「わ!海が頭下げるなんて珍しい・・・まぁそれは分かったけど、何で一緒に行動する必要があるんだ?」


「それはお前が不良だからだ」


「へ?」


「月乃は不良が苦手だ。といっても普通、女子は不良が苦手だ。翔の隣にずっとお前がいれば近づかねぇだろ?」


「まぁ、確かに。この役目が嵐とかなら意味が無いね」


「だから登下校も一緒にしてくれ。そうすれば月乃は翔に近づけなくなる」


「うーん、なるほど。でも流石に登校時はきついな。家が反対だし」

洋平は頬をかく。


「でもそうでもしないと、月乃が!」

私は大声を出してしまった。


「わっ分かった!だから大声出すな!」


「わ、悪い」


「まぁ、やってみるよ。それに桐生に暦ちゃんが来たら絶対にでるなとも言っておく。夜とかに来るかもしれないしね」


「あぁ。本当に悪いな。こんな事頼んで・・・」


「別にいいさ。それじゃ僕は行くよ」

洋平は屋上を後にしようとしたが、私は呼び止めた。


「洋平、ないとは思うが暦に電話番号聞かれたら絶対に教えるなよ。家電も駄目だ。他の翔の電話番号知ってる奴には私が伝えておく。もちろん先生にも」

そう伝えると洋平は手をひらひらさせ屋上を後にした。



「お兄ちゃん・・・」

私は中庭のベンチで一人、お昼ご飯を食べていた。


誰も一緒に食べてくれないから。でも今は一人の方がいい。だってずっとお兄ちゃんの事が考えられるんだもん。


死んだはずのお兄ちゃんが今は「いる」んだもん。


アレ?お兄ちゃんて死んだんだっけ?いやいや、生きてる。だって昨日だって私を叱ってくれて、抱きしめてくれて、人生を無駄にしちゃ駄目だって屋上で言ってくれたもん。


うん、お兄ちゃんは生きてる。生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる生きてる。


でも何で誰も、お兄ちゃんの電話番号教えてくれないんだろう?海ちゃんも嵐くんも、皆なんで教えてくれないのかな?とういうか私、なんでお兄ちゃんの電話番号分からないんだろう?


なんだか「翔が誰かに電話番号聞かれたら絶対に教えるなって言ってるから教えられない」って皆して言うんだよね。不思議だなぁ。お兄ちゃんは「翔」って名前じゃないのになぁ。


アレ?翔ってなんだか聞き覚えがある名前。誰だっけ?あはは、何でこんな名前知ってるんだろう。


どすっ!


瞬間、横腹に激痛が走った。


「こんなとこで食べてんじゃないわよ。邪魔くさい。あんたもさっさと死ねばいいのに」

私は地面に倒れながら私を蹴った人を見た。


吉井さん・・・


吉井さんと吉井さんの友達は笑いながら去っていった。


「ふふふ」

なんでだろう?この前まではすごく痛くて泣きたかったのに、お弁当も地面に落ちたのに、今は笑っちゃうよ。


だって吉井さん・・・


「お兄ちゃんが帰ってきたんだよ?これでもう、私の事いじめないよね?」



6時限目が終わり、私は月乃の席に行った。もちろん月乃と一緒に帰るためだ。月乃の状況をもっと詳しく知る為に・・・


「よう、月乃。一緒に帰らないか?」

私はなるべく明るい声で声をかけた。


月乃が私の方を向く。


「っつ!」

月乃の目はあの時とまんま同じだった。今朝よりずっと、あの時と同じ目をしている。


「え?一緒に?」

月乃は光の無い目で私の顔をじっと見る。


それに怯みそうになったが、なんとか声を出した。


「あ、あぁ。一緒に帰ろうぜ」


「ごめんね、海ちゃん。私、お兄ちゃんと帰るんだ。アレ?お兄ちゃんってどこのクラスだっけ?海ちゃん知らない?」


「・・・」

今度は声が出せなかった。


月乃は席をたつ。


「ごめんね海ちゃん。あ、そういえば心あたりある人いるなー。確か1年生の、桐生飛鳥ちゃんだったけ?とりあえず下駄箱みて靴あったら待っていよう」


・・・今、なんて言った?心当たりがある人?飛鳥ちゃん?


月乃が言った言葉を理解するのに数秒必要だった。


「くそっ!」

私は教室を出た。


向かった先は1年生の教室、2階だ。階段を何段もとばして降りる。すぐに2階に着いた。


「はぁはぁ。そういえば月乃を見かけなかったな。トイレでも寄ったのか?普通なら追い越す筈なのに」


まぁいい。私は早速飛鳥ちゃんの教室へと行った。


丁度、飛鳥ちゃんと同じクラスで面識があった女生徒が飛鳥ちゃんの教室から出てきた。


「おっす、飛鳥ちゃんいる?」


「あ!藤堂先輩!お久しぶりです!えーと飛鳥ちゃんなら、さっき藤堂先輩の教室に行くって言ってましたよ?あれ?階段で会いませんでしたか?」


「え?」


「うーん、違う階段で行ったのかな?」


まさか・・・


私はすぐにさっき降りていた階段へ走った。


「あ!藤堂せんぱーい!」


さっきの後輩が名前を呼んでいたが構ってる暇はない。


もしかしたら、飛鳥ちゃんは偶然月乃と出くわしたかもしれない。それで翔の事を・・・


くそっ!一体何処に行ったんだよ!



「え、貴女何言ってるの?お兄ちゃんの名前は桐生翔なんかじゃないよ?」

私は今、下級生の桐生飛鳥という子と一緒に4階屋上にいる。


「あの、私には先輩が言ってることがよく分からないのですが・・・」


「だから私のお兄ちゃんのクラス教えて?それに電話番号も。貴女、一緒の軽音部でしょ?・・・アレ?お兄ちゃんって軽音部なんかに入ってたっけ?アレ?」


「えと、それじゃ先輩のお兄さんの名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「え?お兄ちゃんの名前?それは暦・・・ん?桐生?アレアレ?どっちだっけ?大好きなお兄ちゃんの名前なのに分からない・・・」


なんで!?なんでお兄ちゃんの名前が分からないの!?


「あ、あの、先輩?もしかして私の兄事言っています?」


「・・・どういう顔なの?」


「あ、はい。今携帯に写真がるので見せますね。えーとこれが私の兄です」


桐生飛鳥ちゃんが見せてくれた携帯の写真はお兄ちゃんだった。


え?なんでこの娘が「私の兄」なんて言うの?!


この人は私のお兄ちゃんなのに!!!


私は桐生飛鳥の携帯を奪い、地面に叩きつけた。


「なんで!?なんで!?なんで貴女が私のお兄ちゃんの写真を持っているの!?それに貴女の兄なんてありえない!この人は私のお兄ちゃんなのぉ!!!」


「え?先輩?」


「よくも私のお兄ちゃんを!大好きなお兄ちゃんを!」

私は手を振り上げ桐生飛鳥を、この憎たらしい娘を叩こうとした。


だけど、出来なかった。


腕が誰かに掴まれてる?


後ろを振り返る。


「海ちゃん邪魔しないで」


「何が、邪魔しないでだよ・・・」


「この娘が私のお兄ちゃんを奪ったんだよ?私はただ・・・」


「お前の兄貴はもう死んでるだろ!」


海ちゃんがいきなり大きな声を出した。


「何を言ってるの?海ちゃん。お兄ちゃんは生きてるよ。昨日だって私を励ましてくれたもん」


「それは、それは桐生翔だろ!お前の!私達のクラスメイトだ!お前の兄貴なんかじゃねんだよぉ!」


「え?クラスメイト?アレアレ?お兄ちゃんだから私より学年が上筈なのに。え?私って何年生だったけっけ?」


「月乃・・・もうやめてくれ。一緒に病院に行こう。お前は・・・」

私の手を掴んでた手が緩くなり、海ちゃんが離してくれた。


病院?なんで病院なの?私悪いとこなんてないよ?


え?分からないわからないよ・・・


何で?何で私の事をそんな目で見るの?分からない。ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ・・・


駄目。もう耐え切れない・・・お兄ちゃん、助けて。


私は走って屋上を後にした。



私は走っていく月乃を呼び止める事が出来なかった。


全てが手遅れだったんだ。あの修学旅行の時にちゃんと翔を止めていれば、こんな事には・・・ならなかった。ならなかったのに!


「海先輩。あの、話を聞いてもいいですか?さっきの先輩の事」

飛鳥ちゃんはオドオドした様子で声をかけてきた。


私は「あぁ」と言い、今回の事をすべて話した。



私は走りながら考えていた。


海ちゃんはお兄ちゃんは死んだって言った。けど、昨日お兄ちゃんは私を抱きしめてくれた。だからお兄ちゃんは生きてる。


だけど・・・


本当に昨日抱きしめてくれたのはお兄ちゃんなのか?


私はそれすらも分からない。


「あ」

私はある事に気づいた。


そうだよ、お母さんに確認すればいいんじゃない。今すぐに電話をしよう。


私は携帯をポケットから出し、お母さんに電話をかけた。


「あ、もしもしお母さん?あの、いきなりだけどお兄ちゃんって生きてるよね?」


『月乃?あなた何言ってるの?三月みづきは何年も前に死んだじゃない』


え?死んだ?


『ちょっとどうしたの?月乃、大丈夫?月乃?月乃?』

私は通話をきった。


お兄ちゃんは死んだ。


昨日抱きしめてくれたのはお兄ちゃんじゃない。


じゃあ・・・誰?


そうだ、「桐生翔」と桐生飛鳥は言っていた。その人に会えば分かるかも。


今から、会いに行こう・・・



「駄目だ。これだけ探しても月乃の症状に合致する病気が見当たらない」

俺は朝から数時間寝て、起きた時からずっとネットで精神病の事について調べていた。


何時間も探してるのに見つからない。


やはり精神病なんかじゃないのか?


と、いきなりインターホンが鳴った。


「誰だ?飛鳥・・・じゃインターホンなんか押さないか」

俺はどうせ、セールスマンか何かだと思い玄関まで行き、玄関を開けた。


そこに立っていたのは・・・


小柄で黒髪ロングの儚げなオーラを纏っている少女だった。


俺はその少女の名を言う。


「月乃・・・」


暦・・・いや、月乃は息を切らしながらも、俺に抱きついてきた。そして泣きながら言う。


「やっぱり、お兄ちゃんだ。お兄ちゃんは・・・死んでなんかいないんだ」


「月乃・・・」

俺は何も言えない。


それでも壊れかけた月乃は続ける。壊れかけた目で俺を見つめる。いや・・・もう、壊れてしまったのかもしれない。俺が昨日、抱きしめたのがきっかけで・・・


「お兄ちゃんは、私のお兄ちゃんだよね?死んでなんかないよね?昨日私を抱きしめてくれたよね?」


俺は、なんて言えばいんだろう。


そうだよ、死んでなんかいないよ・・・って言ってあげるべきなのか。


違う、俺は桐生翔だ。お前のお兄さんなんかじゃない。お前のお兄さんは死んでるんだよ・・・って言ってあげるべきなのか。


分からない。どうすればいんだよ・・・どうすればいいんだ。


誰か、教えてくれよ・・・


「お兄ちゃん・・・大好き。もう離れない。これで、吉井さんも私の事をいじめない。皆幸せだね・・・」


そうだな、月乃。俺がお兄さん役になれば幸せかもな。俺もお前も幸せだよな。そうすれば俺はお前と一生一緒だもんな。確かに、幸せな人生だ。


「月乃・・・」

俺は抱きついている月乃を離す。


「ん。何?お兄ちゃん」


「俺は・・・俺は・・・」

何故か俺の目から何かが溢れる。


俺は目からこぼれ落ちるソレをぬぐい、言った。


「俺は・・・お前の、お兄さんなんかじゃねぇんだ」


「え・・・何言ってるの?」


俺はてっきり暦は対象喪失の「否認」は、乗り越えたと思っていた。


だけど・・・


お前は乗り越えていなかったんだな。よくよく考えれば「否認」が乗り越えられてれば、他人を自分のお兄さんなんて思わないじゃないか。自覚はしてなくてもお前は・・・心のどこかで、お兄ちゃんは死んでないって思っていたんだな。


それにいじめの事もあり、自然と現実を逃避してたのかもしれない。


だから・・・


「俺の名前は、桐生翔。お前のお兄さんなんかじゃねぇ。お前とはこの前の修学旅行で初めて会ったんだ。覚えてるだろ?」


「え?え?お、お兄ちゃん?私はずっと前からお兄ちゃんと」


「だからっ!・・・俺は、桐生翔だ。お前のお兄さんの名前は桐生翔なんて名前じゃないだろ・・・」


「・・・」

暦の目から、涙がこぼれ落ちる。


月乃・・・


お前には現実を受け止めて欲しい。それで乗り越えてほしんだ。お前のお兄さんの死を。そしたら俺は・・・


あぁ。なんだ、やっぱ俺は暦のお兄さん役にはなれない。今気づいたよ。だってお兄さん役になったら、俺の気持ちを伝えられないじゃないか。


だから乗り越えてくれ・・・月乃。


「き、桐生君?」

暦が俺の名を呼んだ。


俺の思いは・・・届いた。


「あぁ、なんだ?月乃」

また目から何かが流れる。


「わ、私、私!」


今度は俺から抱きしめる。


・・・・・・・・・


・・・・・・


・・・


だけど叶わなかった。


「来ないでっ!」

月乃の悲痛な叫びが響く。


「月乃?」


「それじゃ、私のお兄ちゃんは何処なの?桐生君がお兄ちゃんじゃないなら、私のお兄ちゃんは・・・暦三月は何処?」


そうか。暦三月。それがお兄さんの名前。


「ねぇ、桐生君。私のお兄ちゃんは一体何処にいるの?」

月乃の目にも涙が溢れる。


「それは・・・」

俺は何も言えなかった。


「私・・・お兄ちゃんがいないとダメだよ!生きていけないよぉ!独りでなんて生きていけないよ!お兄ちゃぁん、何処にいるのぉ・・・桐生君、教えてよ・・・お兄ちゃんは何処にいるのぉ!」


今日何度目か分からない疑問が頭の中を支配する。


俺はどうすればいいんだ?・・・どうすればいいんだよ!?一体、どうすれば月乃を救えるんだ!?誰か教えてくれよ!神様なんて信じちゃいねぇけど、いるなら俺に教えてくれよ!月乃を救う方法を!誰か教えてくれよっ!


「ひっく。あはは、ごめんね桐生君。そんな事分かる訳ないよね。何を言ってるんだろう私・・・なんだか今日1日私、おかしかったなぁ・・・飛鳥ちゃんにあんな事しちゃったし、桐生君をお兄ちゃんなんて呼んじゃったし・・・馬鹿だよね、私。そんな事したって本当のお兄ちゃんは・・・お兄ちゃんはもう、もう戻ってこないのにっ!」


俺は苦痛に歪んだ顔をしている月乃に何も言ってやれない。


ただ、黙っているだけだった。


「本当は分かってたはずなのに。お兄ちゃんは死んだって分かってたはずなのに・・・なんでこんな事になっちゃったのかなぁ・・・盈月先生も私のせいで死んじゃって。今度は桐生君にも迷惑かけて。本当、私って最悪だ・・・でも、こんな私でも桐生君は抱きしめてくれたよね。お兄ちゃんと同じように」


「あぁ・・・お前のお兄さんの様にかどうかは知らんが、抱きしめたな」


「すごく、お兄ちゃんに似ていたよ。桐生君。すごく温かくて、優しくて・・・本当に似すぎだよ」


あ。あの時、あの屋上で月乃がいじめられてる原因を聞いた時、月乃が何かを呟いた。その時は聞き取れなかったが、月乃は・・・


『・・・本当に似すぎだよ・・・』


こう言ったんだ。


「桐生君、飛鳥ちゃんとか海ちゃんに謝っといてくれる?私、今日本当に最悪な事しちゃったから・・・」


そんなの、自分で言えばいいじゃないか。何で俺に言うんだよ?


俺は、こう言いたくても言えなかった。言いたくなかった・・・


俺がこの言葉を言ったら、月乃にもう会えなくなるって認める事になるじゃないか。


だから月乃・・・さよならなんて言ってくれるなよ?


「あと桐生君。私、桐生君に出会えてよかった。こんな事なっちゃったけど、よかった。だけど、これ以上迷惑かけられないから・・・」

俺は月乃の顔を見ていられなくなり、顔を自分の足元にうつむかせた。


なんだよ・・・それじゃ本当に最期の別れみたいな挨拶じゃないか。


「桐生君のそばにいたら、いつかまた間違えるから。だから・・・・・・・・・・さっ、んく、さよなら・・・」


「月乃っ!」

顔を上げた瞬間、月乃は俺の家の玄関にはいなかった。


俺は靴を履き、外に出た。


「っつ!」

何だ?何でいきなり体が重くなったんだ?


くそっ。月乃を追いかけなくちゃいけないのに。何でこんな時に倒れてるんだよ俺・・・


駄目だ・・・意識がもう。


「つ・・きの」


視界が真っ暗になった。














































お久しぶりって程でもないけど、お久しぶりです(^-^)


いやぁ、今回は徹夜で執筆した甲斐があってか最後の更新から1日で更新できました。


まぁ、そのせいで話の内容やらなんやらは「パッパラパー」ですが・・・


この話は15部で終わらせる予定だったのですが、16部まで引き伸ばす事にしました。


予想以上に長くなってしまいましたね。


今回は主人公の出番が少なく、下ネタも書いてない真面目は話になってしまいましたが次回の次回からはバンバン下ネタを書きますのでご心配なく!←誰も心配なんてしとらん


ではでは、今回も短い後書きですがここらへんで。


このような素人の小説を読んで頂いて、皆様には感謝しております(^-^)

                               キリリョー

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